ODD BRICK FESTIVAL
2022年9月23日(金・祝)
横浜・赤レンガ地区野外特設会場で、ODD BRICK FESTIVAL。
昨年行われるはずが中止となり、今回が初開催となった「ODD BRICK FESTIVAL」。自分はリトル・シムズとカマシ・ワシントンが両方観れるというところに惹かれて、すぐにチケットを買った。
まず、ODD BRICKがどういうフェスかというと…。「HIP HOP、R&B、JAZZ、CITY POPなどのユースカルチャーに特化した新たなフェス」と、そう謳われている。ちょっとこう、漠然としてますね。第1弾でリトル・シムズとカマシ・ワシントンがどーんと発表されたので、自分的には「これは! 」と期待したのだが、その後の第2弾、第3弾発表を見るにつけ「ん?」ってなってきて。シムズやカマシの音楽性とかけ離れたアーティストがどんどんラインナップされだした故(そのアーティストがいい悪いという話ではありません、念のため)。
実際行ってみたところ、客層は二分(または三分)されていたという印象。集客力ありの目玉となるアクトはSKY-HI率いるBMSG POSSEと、韓国のボーイズグループであるTREASUREと、リトル・シムズ及びカマシ・ワシントン。とりわけ12人組アイドルグループTREASUREの初来日はそっち方面で大きな話題となっていたようで、彼ら目当てと思しき若い女の子たち(制服姿の女子高生含む)が大勢いた。誰かのツイートにあったが、チケットは買わずに外で彼らのライブの音漏れを聴くために集まっていた女の子たちもたくさんいたらしい。ということで、乱暴に言ってしまうと、シムズやカマシ目当ての音楽好き(主に中高年)とK-POPまたはアイドル好きの若いの女の子たちが入り混じった客層だったということだ。
そのことについてはひとまずおいといて、自分が観たのは以下の通り。
BMSG POSSE(終わりの10分程度)→Balming Tiger→Awich→どんぐりず→HYOLYN(頭2曲)→Furui Riho。大沢伸一のDJを10分程度聴いたあと、ワールドポーターズで長めの食事休憩。戻って、STUTS(終盤少し)→リトル・シムズ→ALI→カマシ・ワトントン。
会場に着いたのは12時ちょい前。わりと早めに家を出たのは、オルタナティブK-POPグループを標榜する韓国はソウルのBalming Tigerを観たかったからだ。ラッパー、シンガー・ソングライター、DJ兼プロデューサー、映像監督といったふうにそれぞれ役割を持ち、一ジャンルに括られることを嫌う音楽集団。それぞれの分野で個人活動も行っているらしい。
グループは現在11人だそうだが、今回のステージでパフォーマンスしたのは6人。緑色の髪が目をひく中心的存在のラッパーや酒好きで昼なのに既に酔っぱらってるというイケメンふうシンガー、アイドル人気もありそうな長髪の男の子に元気溌剌の女性シンガーなど、とにかくキャラがバラバラでみんな相当個性的。こんなメンバーたちが自由勝手に、でもキメるところでは揃ってダンスして、歌とラップを混ぜつつパフォーマンスする様は見ていて面白く、かっこよくないのにかっこいいといった奇妙な痛快さがあった(男子部にひとり元気な女の子が混ざってるといった様も絵的に効いていたし)。低音がズーンと響く音もよく。部活ノリっぽい友達同士のふざけあいに見えなくもないようでいて、締めるとこは締め、まとまりすぎてないからこその荒い力を発揮する……そんな様を見ていて自分はちょっとstillichimiyaを思い出したりも。「やべ〜勢いですげー盛り上がる」のあの感じ、あの勢いを、Balming Tigerのライブからも感じたのだった。ワンマンも観てみたいわぁ。
続いてAwich。観るのは今年4回目。つい2~3週間前にも同じ場所で行なわれたLocal Green Festivalの同じステージで観たばかりで、セトリもMCもそれほど変わりがなかった故、新鮮さはなかったが、それはあくまでも自分にとってであって、初めて観た人や久しぶりに観た人を惹きつけるには十二分の力あるパフォーマンスだったと思う。ただ気になったのは、今年観たほかのフェスのときに比べるとそこに集まった観客の盛り上がりが低かったこと。どうやらこの時点からもう次の次にそのステージに出るTREASUREのファンが前のほうに陣取っていたようだ。
どんぐりずを観るのは、今年のフェスだけでもう6~7回目。だけど、まったく飽きない。何度観ても楽しくて気持ちいい。ダンスミュージックとして圧倒的に高性能であること。ふたりのキャラのよさと実力の高さ。抜いてるようにも見せながら実は1ステージ1ステージに相当気持ちを込めて立ち向かっていること。などなどが今回もまた伝わってきて、前のほうで入り込んで踊りながら観た。ほんと、大好き。機会があればいつかちゃんと話を聞きたいもんです。(因みに大沢伸一のステージの後半にもふたりはサプライズで出たらしいが、それは見損ねた。あー、残念)。
Furui Rihoは、MIRROR STAGEというクルマのなかをステージにしたところでのLive/DJセット。フルバンドでのワンマンライブを数ヵ月前に渋谷で観て以来だったが、DJセットでもやはりその歌唱力は際立っていた。明るい性格なのでフェスの昼間の時間帯にも合っているし、観ている者たちを明るい気持ちにもさせる。どんどんフェスに出てどんどん力をつけて、R&Bシンガーとしての実力を知らしめてほしいと思う。
外でゆっくりめの食事休憩をしてカラダを休め、戻っていよいよリトル・シムズ。バンドセットではなく、DJと彼女だけのミニマルな編成だったが、ライブパフォーマンスの力は自分の想像を遥かに上回っていた。着こなしも、しなやかな身のこなしも素敵で、声質、発語のよさと、何から何まで良い上に、抜群のセンスの良さが伴う。それと気品と言うか格調の高さというか、そういうものもあり。なので、見惚れてしまいっぱなし。低音もずっしり響いていたので、最新アルバムのソウル味あるいはアフロ味の豊かさがライブでも十分に感じられ、ああ、自分はやっぱりUSのラップ音楽よりもUKのラップ音楽のほうが親しみが持てるなと改めて思った次第だ。「ヴェノム」のときにはイントロで2度ほどやり直し、それはレゲエでよくやる盛り上げのためのアレだっただろうけど、3度目にはほんとに音が出なかったようで(DJのPCが雨でやられたっぽい)、しかしシムズはそんなハプニングにも即座に対応してアカペラで盛り上げにかかっていた。さすがやね。終盤は雨脚が強まって、観るほうもやる側もなかなか大変ではあったけど、雨に打たれながらもラップの強度が増していく、そんなシムズの凛とした表情は印象的で、雨によってかえってドラマチックなライブになったとも思えたのだった。(それほど多くは観てきてないとはいえ)自分がこれまでに観たラップ・アーティストのライブのなかでもベストいくつに入るくらいに素晴らしいライブだった。
次が、初めて観るALI。リトル・シムズのライブの余韻に浸っていたい気持ちもあって初めは少し離れた場所から眺めていたのだが、音のかっこよさと何より熱量の高さが伝わってきて、結局前のほうに動いて観た。この日、彼らのライブ中が最も雨脚が激しくなった時間だったが、それがどうしたと言わんばかりの熱量。終盤のファンク曲にとりわけ引き込まれた。
トリはカマシ・ワシントン。バンドは今までとずいぶん変わって、今回はツインドラム、4管(カマシのパパさんは主にフルートを)、ベース、鍵盤、ボーカルの9人編成。スター集団といった感じで、とりわけベン・ウィリアムズのベースの土台支え力がものすごく大きいなと感じた。それとトランペットのドンタエ・ウィンスロウがルックスからして一癖ありで、ソロにも引き込まれたし、ラップも力強かった。カマシは主役でありながらも、それほど前に出ず、とにかくミュージシャンたちを敬意持って引き立てる。メンバー紹介のときにはひとりにつき2度ずつ名前を呼んでいたあたりからもその姿勢が感じられた。が、当然出るべきときには前に出て、それはそれは豊かな音で包み込む。こんなリーダーの元だったら、ミュージシャンたちはさぞかし幸福な気持ちでプレイできることだろう。ラストの「Fist Of Fury」はとりわけドラマチックでスケール感もあって、野外だったことも手伝い宇宙に繋がっている感すらあった。
リトル・シムズとカマシ・ワシントン。両者とも本当に素晴らしかった。
もうそれだけで満足と、そう言ってもいいのだけれど。話は戻るが、全体を振り返るとなると、やはりひとつのフェスとしてはまとまりに欠けるというか、コンセプトのはっきり見えてこないものに感じられた。ジャンルがバラバラでもそれは別にいいし、それがかえって面白さに繋がるフェスだってある。けど、所謂K-ポップのアイドル的なアーティストのファンとカマシやシムズのファンとなればさすがに層がまったく違うわけで、どっちも好きという人は少ないだろうし、どっちかが初めてライブ観てそれを好きになるという現象も考えにくい。実際のところ、僕が外で食事を終えて会場に戻るときには、TREASUREを見終えて帰るたくさんの若い女の子たちとすれ違った。かなり多くのお客さんがTREASUREを見終えて帰ったわけだ。別にその子たちは何も悪くないんだが、途中でそこまで客層が変わるフェスというのは、あり方としてどうなんだろう。もう少しだけでも音楽性に共通する何かがあるアーティストをラインナップできなかったのだろうかというモヤっとした気持ちは正直残った。来年もあるならば、そのあたりがもう少し明確になることを期待したい。
↑フォトギャラリーにこの日のライブ写真があがってます。
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