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『ユンヒへ』感想。

2022年1月15日(土)

シネマート新宿で、『ユンヒへ』。

とてもよかった。

↓公式サイトのイントロダクションより抜粋。

2019年、第24回釜山国際映画祭のクロージングを飾り、2020年には韓国のアカデミー賞ともいえる青龍映画賞で最優秀監督賞と脚本賞をW受賞した映画『ユンヒへ』の監督・脚本を手掛けたのは、長編2作目となる新鋭のイム・デヒョン。岩井俊二監督の『Love Letter』にインスパイアされた本作ではロケ地を北海道・小樽に選び、2人の女性達が心の奥にしまってきた恋の記憶を描き出す。

静かに降り積もる雪、のような作品。「雪はいつ止むのかしら」。何度か発せられるその言葉の意味が、静かに、ゆっくり、胸に落ちてくる。

監督はこの作品を、クィア映画でありフェミニズム映画であると公言。「誰でも見られるレズビアンのラブストーリーを作りたいという欲求がずっと前からありました」と語っている。それを記号化/商品化するのではなく、静かに、繊細に、過度にドラマチックにすることなく、寄り添うように描いていて、そこが素晴らしい。

上の記事のなかで、イム・デヒョン監督はこう話している。

「いつになったら韓国でも、欧米で作られるような良質なクィア映画が見られるのか。中年の女性の同性愛がテーマで、セクシーさが強調された女性ではなく、『ただそこに生きているだけの女性』がいつ登場するのか。以前からこういった映画を待ち望んでくれている人たちが多くいたんだと思います」
『ユンヒへ』では、彼女たちを対象化、記号化することをせず、この社会で生きている一人の人間として描きたかったのです」

ユンヒとジュン。かつて同級生だったふたりの中年女性の関係と距離感が作品の軸になっている。が、母(ユンヒ)と娘(セボム)、娘と父、ジュンと伯母(マサコ)、娘とボーイフレンド、その関係と距離感もこまやかに描かれる。どのふたりの間にも多くの言葉があるわけではない。交わされる言葉の数は多くはないが、控えめな言葉ひとつひとつに密度があり、相手に対する思いやりがある。少ない言葉が、ふたりの関係、距離感を表わしている、あるいはそれをゆっくり縮める。余白の豊かさ。沈黙の重みと説得力。それを思った。

できれば、雪の降る日にもう一度観に行きたい。





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