CHABO BAND@EXシアター六本木

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2019年10月5日(土)

六本木EXシアターで、CHABO BAND。

2017年の日比谷野音以来ということで、ずいぶん久しぶりのCHABO BAND。kyOnさんやカースケらの多忙さが要因としては大きいのかもしれないが、こうして4人集まることがいまでは貴重に思える、そんなバンドだ。が、観ていて「ああ、やっぱり最高のバンドだなぁ」と何度も思わされたので、もっと集まってライブやってもらいたい、じゃないと勿体ない。そう改めて強く思った。麗蘭もソロももちろん大好きだが、チャボの表現形態のなかで自分はやはりCHABO BANDが格別に好きだ。あの4人のグルーブがもっともビンビンくるし、バンドのひとつの理想形のように思えるからだ。

公演名のところには「CHABO Route69>>BAND」とあって、つまりチャボの69歳のバースデイにかけたネーミング(ケーキが運ばれてくるサプライズもあった)。そんな特別感ありのライブを僕はなんと最前列(kyOnさん寄り)で観ることができた。いままで数えきれないほどいろんなライブを観てきたが、記憶が確かなら最前列の席でライブを観るなんて初めてのこと。チャボのファンクラブに入っているからとれた席なんだろうけど、間近すぎてむしろちょっと緊張した。だって、チャボは何度も自分のすぐそばまで来てかっこよく弾いてキメてくれるんだもの。女の子だったら失神しちゃうやつですよ、あれ。

まずインスト曲などであたためたあと、95年作『CHABO』から3曲と、久々に99年作『My R&B』から「男もつらいよ (but don't give up!)」。だが驚いたのはそこからだ。ここからCHABO BANDは立て続けに古井戸の曲をやったのだ。「春たけなわ」「気まぐれラプソディ」「うわの空」「おいてけぼり」。まずこの4曲。それらはどれも古井戸の曲でありながら、2019年のCHABO BANDの曲になっていた。どれも原曲とはまったく違ったアレンジが施され、リメイクと呼べるものになっていた。kyOnさんのアコーディオンがフィーチャーされ、やや湿度のあった曲もカラっと明るいものになったりしていた。書かれたのが昔(チャボが20代の頃)というだけで、それらはまるでブランニューな曲になっていた。「オレは思い出に生きるんだ」みたいなことをチャボは言ってたが、それはチャボ特有の照れ隠しのようなものであって、実際は自身の歴史の一部を過去にしない(置いてかない)ためのリメイクであり、それはとても果敢かつ意欲的なことであったと思う。「思い出に生きる」と言いながら実際は「ただの思い出にはしない」というハッキリとした意志が感じとれることだったということだ。

そのあと自身の名義曲を数曲挿み、ドクター・ジョンに捧げる「Thank You & Bye-bye Mr.Dr.John」(フジロックでも披露された曲だが、今回はなんたってDr.kyOnがそこにいるのだから、鍵盤音の弾み方がまさにDr.Johnのそれ。「魚ごっこ」が始まりそうなくらいに)も演奏。続いて「じゃあRCの曲もやるよー」と言って「お墓」「エネルギー oh エネルギー」の2曲を。チャボも言ってたが、「エネルギー oh エネルギー」の(特にど頭の)カースケのドラムはまさに新井田耕造が叩いていたあれのまんまで興奮させられた。チャボは「新井田耕造!」とカースケを紹介し、さらに早川さんを指しながら「リンコワッショ!」、kyOnさんを指しながら「gee2wo!」と名を呼んだのだった(個人的にはチャボがgee2woという名を出しただけでも、おおっ! となってしまった)。そしてもちろん忌野清志郎の名をそこで呼ぶことも忘れてない(忘れるわけがない)。

そこから「毎日がブランニューデイ」に続けたあとはまたソロ盤収録曲などをいくつか演奏したが、本編最後になんとまた古井戸の曲をやった。「いつか笑える日」だ!    2015年の古井戸の「再会」ライブで加奈崎さんの歌うこの曲を聴いたときは歌そのものに激しく胸をうたれてボロ泣きしたものだったが、CHABO BANDの音でチャボが歌った今回のその曲のなかではとりわけチャボのギターソロが胸に沁み入って涙が出た。「またひとつ ふみこたえ  またひとつのりきって いつか笑える日まで 今いる日々を」。そう歌われるこの曲を本編最後の曲にチャボが今回選んだ理由を考えないではいられなくなった。

さらにアンコールでは「早く帰りたい」も歌われた。結局、RCの曲は「雨あがり~」含めて3曲だったが、古井戸の曲は6曲も歌われたのだ。今度また2015年以来久々に加奈崎さんと札幌で一緒にやるというのもあってだろうか、わからないがとにかくこの日の核となっていたのは間違いなく古井戸の曲群だった。裏テーマと言ってもいい。とにかくチャボはいまそういうモードにあるということだ。

チャボのなかでの古井戸(と古井戸の楽曲)の位置づけ。その大きさを強く感じることができて僕はものすごく嬉しかった。完全に終わったことなんて何ひとつないのだ。

2017年の日比谷野音と地続きのようなところもどこかに含みながら、これは間違いなく2019年のCHABO BANDの音であり、2019年のチャボのバンド表現だった。こういうライブをチャボはずっとやりたかったに違いない。恐らく自分を含む観客みんなにとって、そしてチャボ自身にとって、これこそが理想のライブだったんじゃないかと、そう思いながら外を歩いた。

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