『走れロム』
2021年7月24日(土)
ヒューマントラストシネマ渋谷で、『走れロム』。
ベトナムはホーチミンの路地裏に暮らす「闇くじ」の予想屋で、仲介役としての走り屋でもある14歳の孤児ロム。どれだけ殴られても立ち上がり、懸命に生きる彼の姿を描きながら、ベトナムのタブーを暴いてみせた作品。
チャン・タイ・フイ監督の長編デビュー作で、主演のロムは監督の実弟なのだそうだ。
圧倒的なまでの躍動感と疾走感。ストーリー展開がどうというよりも、ロムが全力で街を、路地を、疾走する、その姿に引き付けられ、胸が躍る。石井岳龍(聰亙)監督の初期作『シャッフル』を観たときのコーフンを自分は思い出してもいた。
ロムは走って走って、殴り殴られ、叫んで、また走る。タフな生命力が漲っている。泥臭く、パワフル。彼のバネと、不屈の表情がたまらなくいい。ライバルであるフックのバネと走りもまたすごい。そしてそのふたりの関係性。殺してしまうのではないかというほどの殴り合いをしながらも、しかし、相手がいることで自分の生を感じている側面もあるわけだ。
路地に暮らす住民たちのギャンブルに熱狂する生々しい姿も含め、とにかく熱量が凄まじく高く、善悪の基準を超えて迫ってくるものがある。
この作品、当局に目をつけられて複数のシーンを削除せざるをなかったそうだが、それがどういうものだったのか知りたいし観てみたい。
自分的にはかなり好み。チャン・タン・フイ監督のこれからに注目しておこう。