思い出野郎Aチーム@新木場スタジオコースト
2021年11月27日(土)
新木場スタジオコーストで、思い出野郎Aチーム「ソウルピクニック2021」。
1年9ヶ月ぶりのライブ。メンバーも観客も、みんながこの日を待ち望んでいた、ということのよくわかるライブだった。
幸福感に満ちていた。ステージ上のひとたちもフロアのひとたちも誰もが嬉しくて笑顔で揺れながらその時間を楽しみ、ちょっと泣いちゃう瞬間もあったりして。ひとつになってる感覚をこんなにも味わえたライブは久しぶりだった気もする。
朝霧ジャムとフジロック。フェスで観て自分はこのバンドが大好きになったのだけど、ワンマンを観るのはこの夜が初めて。そういう意味ではまだ薄口のファンなのに、なぜだかずっとこのバンドに救われてきたような感覚があった。
心が踊ったりロマンティックだったりのソウルナンバーなどをDJがかけて場をあたためてからの、思い出野郎Aチームのオンステージ。ツアーバスから出てくるようにメンバーとサポートメンバーたちがステージに登場し、始まりの曲は「同じ夜を鳴らす」だった。レコードで聴いてるときから好きな曲だったが、ナマで聴くとその歌詞のようにまさしく「僕らを包み込んで」くれてるように感じられた。コロナとか憎しみとかいろんなことで打ちのめされてた日々を通り抜けていまここに僕たちはいるんだという、そんな思いと共にこの歌を聴いていたら涙がブワーっと溢れ出てきてしまった。それぞれがそれぞれに耐えてきて、いまここでようやく「同じ夜」が鳴っている。そういう、何か報われるような感覚があった。終演後にツイッターでいろんなひとの感想を見てみると、やはりこの1曲目で泣いてしまったというひとがけっこういて、きっとみんな似た感覚を味わっていたのだろうなと思った。
サポートメンバーは、Fukaishi Norio(Ba.)、沼澤成毅(Key.)、ファンファン(Tp.)、YAYA子(Cho.)、asuka ando(Cho.)。ただでさえ人数多いのにこんなに加わり、ステージ上は絵的にも壮観だったし、音の厚みも相当のものだった。とりわけ分厚いホーン隊の音がソウル味やファンク味を増大させ、自分はちょっとだけJAGATARAのライブにおけるJAGATARAホーンズの鳴りを思い出したりもしていた。ダンスとコーラスの女性ふたりがそこにいたことも大きいし、ダブとソウル/ファンクが繋がる感覚も通じるものがあった。因みにヴォーカル&トランペットのマコイチ氏が、このライブのフライヤーのロゴとデザインが「自分たちが影響を受けているパーティー、TOKYO SOY SOURCEのそれに似てしまった」「なので、いとうせいこうさんに連絡したら、SOY SOURCEを主催してたs-kenさんに連絡してくれて許可してもらえた」と話していて、なるほどライブ前にDJが場をあたため、ライブの前半と後半の間にもまたDJタイムがあるというそんな構成も確かにTOKYO SOY SOURCE(そこでのJAGATARAの存在はとてつもなく大きかった)のあり方を引き継いでいるようで、80年代の芝浦インクスティックの幸福感と2021年のスタジオコーストの幸福感が繋がったような感覚を自分はおぼえたりもしたのだった。
サポートメンバーたちに加え、このライブには手話通訳の女性たちが加わってもいた。その手話通訳のチームのみなさんが、ずっとニコニコしながら音楽に乗ってダンスするように歌詞を手話で伝えていたのがステキだった。また、終盤の「アホな友達」では「アホな」と「友達」の手話表現を観客みんなが覚え、声を出せないかわりにみんなでそれを一緒にやって、そのとき会場は完全に一体になった。忘れ難い光景だ。
手話通訳の導入のほかにも、このライブは車椅子スペースの確保や障がい者のための割引チケットの用意があり、いまの状況を少しずつでもよくしていくんだというバンドメンバーたちの思いがそういうところにも形として表れていた。マコイチ氏は「僕らのようなアンダーグラウンドのバンドが率先してこういうことをしていかなきゃ広がらない。これがもっと当たり前になってくれたら」とも話していて、その姿勢と実践は、はびこる差別やヘイトに対する彼の気持ちにも繋がっているのだと思った。「僕らが変わればいつか この街も塗り替わるだろう」(「朝やけのニュータウン」)。「ヘイトには歌でアンサー 普通に愛し合おうぜ」(「結局パーティーは続く」)。そういうことだ。
そこにいるみんなが幸福を感じてニコニコしながら、手を挙げて、カラダを揺らして、心のなかでシンガロングしていた。音楽最高。ダンスミュージック最高。「繋がったミュージック」を確かに感じられた、本当にいいパーティーだった。
配信アーカイブは12/5まで↓
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