梅津和時・プチ大仕事2020「a legend of D.U.B. & DANGER」
2020年3月7日(土)
新宿ピットインで、梅津和時・プチ大仕事2020「a legend of D.U.B. & DANGER」。
コロナによっていろんなものに対する(主に)おっさんたちの無理解と思いやりの欠如が炙り出されている今日この頃だが、ライブを観ることが生き甲斐のような自分にとっては、やはり数多くのライブの中止・延期(計画性なきその要請と、それに対して無責任に飛び交う意見)、そしてライブハウスに対する人々の誤解…というより敵意にも似た風当たりの強さに唖然とするばかりのここ数日だ。今朝はサンジャポのレギュラーコメンテーターが「(客の前で)ライブしないで(配信で)投げ銭にすればいいじゃん」と言ったとかで、それなりの影響力を持つひとの意見と考えるとやはり絶望的な気持ちにならないではいられない。ひとつの場所に演者がいて客がいて、それによって生まれるものがあるということを理解できないひとが確実にいるわけだ。
さておき。昨夜は新宿ピットインで、毎年何夜かは観に行っている「梅津和時・プチ大仕事」。4日目の昨夜は「a legend of D.U.B.& DANGER」と題された公演で、出演は梅津和時(サックス、クラリネット)と早川岳晴(ベース)に加え、菊池隆がインフルにかかって出演できなくなったため急遽、田中栄二が代打でドラムを。さらにゲストで加藤一平(ギター)とワタナベイビー(ヴォーカル)。このメンバーで1部はD.U.B.を、2部はDANGERを再現。それはもう圧巻だったし、自分にとっては久しぶり(12日ぶり)のライブということもあって純粋に「ああ、やっぱりライブはいいなぁ」と実感した。
会場のピットインはドアを開けるなど最大限に換気に気を配り、除菌スプレーも設置。観客は(咳やくしゃみによる飛沫を避けるべく)「マスク着用を」とのアナウンスもあって全員がそのように。やはり直前のキャンセルが少なくなかったようで満杯というわけではなかったがしかし、こういう状況のときにやるからこその特別なライブだったように思う。
世の深刻な事態に加え、ご自身が歯の治療で休養に入る前のライブということもあって「ひとしおの覚悟」で臨んだという梅津さんの吹奏は、いつにも増して気迫に満ち、凄みがあった。いろんな思いが音に込められ、それは魂の吹奏と思えるものだった。
バンドメンバーも同様で、早川岳晴はもちろんのこと、急遽の代打となった田中栄二は驚愕するほどパワフルに叩き、加藤一平は変態的なギターを自由に鳴らして最後の爆発力も凄かった。そしてワタナベイビーは清志郎が歌ったDANGERの高低差高く難易度の高いうたを敬意と独自の解釈で見事に表現しきっていた。梅津さんと早川さんの歌唱による「ハレルヤ」は祈りのように響き、こんな状況だからこそ揺さぶられた。こういう言い方もアレだが、こういうときだからこそ演奏と歌に魂が、祈りがこめられる…というのはある。2度と観れないようなライブを観た感あり。
ライブの後半、梅津さんは言った。「(新宿ピットインは)ライブハウスじゃなくてジャズクラブですから。山手線の一両分より人は少ない(笑)」。また「(ライブハウスは)その日の演奏によって何が生まれるかわからない面白さがあり、それが文化を作ってきた。コロナも怖いけど、僕は文化が絶やされることのほうが怖い」といったニュアンスのことも。そして「僕はこういうカタイ言い方しかできないけど、清志郎ならもっと上手く言ってただろうな」とも。
ひとしおの思いを込めて演奏するひとたちがステージにいて、ひとしおの思いを抱きながらそこに足を運ぶひとがいる。だからそれは特別なライブとなり、何かが生まれる。そういう場所があるから僕たちは生きていける。今夜もまた僕は小さな場所にライブを観に行く。
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