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僕の選んだ「2021年の年間ベストアルバム/楽曲/ライブ/映画/ドラマ」
「2020年は、(理由あって)自分にとって外でも家でもカルチャー摂取量の低い年となった」と、前年の年間ベストをまとめた記事で書いたが、2021年は音楽を聴いたり映画やドラマを観たりする時間がだいぶ戻った、または増えた年となった。
家で過ごす時間が長くなり、ストリーミングで新しい曲をあれこれつまみ聴きしてまわる時間が増えた。通しで何度も繰り返し聴いた新譜(アルバム)は例年ほど多くないのだが、いろんなミュージシャンの新しい曲を日常的にチェックして、「いいな」と思えばとりあえず非公開のプレイリストに放り込み、あとで聴き返すことをしていた。
一昨年亡くなった叔父が長年愛用していたいいスピーカーに変えたことによってオーディオ環境が向上したので、棚に並んだままだった旧譜のCDやレコードを気の向くままに取り出してはよく聴き返してもいた。また一昨年から二拠点生活を始め、栃木の家にも古くからのレコード、CD、さらにはカセットテープも整理して置くようにしたので、中学・高校時代にエアチェックして録りためたもの(その頃のラジオ番組とか実況録音とか)なんかも数十年ぶりに聴き返したりした。
あの頃の音楽はよかったなどと古い音楽ばかり聴き返す年寄りにはなりたくないし、新譜だけ追いかけて時代の傾向に捉われすぎるのもつまらない。常に新しい音楽と古い音楽の両方をバランスよく摂取していたいし、2021年は自分的になかなかいいバランスでそれができた年だったように思う。昔聴いて好きだった作品が、現在の新しい作品にどこかで繋がっているという感覚を持つこと、それを見つけることが、面白いし、意味あることだと思うから。
2021年私的年間ベストアルバム
まずはアルバムから。これまでは邦楽と洋楽を分けて、それぞれのベスト10作なり20作なりを選んでいたのだが、今回は混ぜて20作選ぶことにした。アルバムを通しで何度も繰り返し聴いたものが少なかったと先に書いたが、特に邦楽は、いくつか好きな曲はあるもののアルバム丸ごと繰り返し聴くまでには至らない…というものが多かった。そんななかで、betcover!!、土岐麻子、KIRINJI、それに16年ぶりのCharの新作はアルバムとしてよく聴いた。いまライブが日本一かっこいいbetcover!!は、再びインディーに戻って、遂にアルバムでも巨大なポテンシャルを発揮。土岐麻子の新作はどの曲も歌詞が(これまでの作品で一番)胸に沁みた。
洋邦合わせて特に回数多く聴いたのはSilk SonicとPrince。前からファンだったWolf Alice やSnail Mail は、著しい進化の度合いが嬉しかった。Leela Jamesの久々の新作は過去最高と言ってもいい素晴らしさ。Melanie Charles、Little Simzは、いろいろ凄くて吃驚しながら聴いた。また、1年前に眺めのいい家(3階)に引っ越したのだが、夕暮れ時にベランダに椅子を出してお茶またはワインなど飲みつつ聴くClairoやFaye WebsterやCleo Solがしみじみよかった。外気や陽光、見える景色と、歌声やゆったりしたメロディの相性がとてもいいのだ。ベランデで夕焼けを見ながらゆっくり音楽を聴く時間なんてこれまではなかなか持てなかったが、あれはいいものだ。
というわけで、20作。順不同です。
●Arlo Parks『Collapsed In Sunbeams』
●Silk Sonic 『An Evening With Silk Sonic』
●Clairo『Sling』
●Wolf Alice 『Blue Weekend』
●Faye Webster 『I KNOW I'M FUNNY HAHA』
●The Black Keys 『Delta Kream』
●Norah Jones 『…'Til We Meet Again』
●Melanie Charles『Y'all Don't (Really) Care About Black Women』
●Jon Batiste 『We Are』
●Prince 『Welcome 2 America』
●Tony Joe White『Smoke from the Chimney』
●Leela James 『See Me』
●Leon Bridges 『Gold-Diggers Sound』
●Cleo Sol 『Mother』
●Snail Mail 『Valentine』
●Little Simz 『Sometimes I Might Be Introvert』
●betcover!! 『時間』
●土岐麻子 『Twilight』
●KIRINJI 『crepuscular』
●Char 『Fret to Fret』
(*Charの『Fret to Fret』はサブスクになかったので、DVD/Blu-ray のティーザー動画を貼っておきました)
ほかに、Jungle『Loving In Stereo』、Rumer『Live from Lafayette』、Snoh Aalegra『Temporary Highs In The Violet Skies』、Parquet Courts『Sympathy for Life』、Remi Wolf『Juno』、Anthony Hamilton『Love Is the New Black』、Aimee Mann『Queens of the Summer Hotel』、Girl In Red『if I could make it go quiet』、Valerie June『The Moon And Stars: Prescriptions For Dreamers』、Kid Fresino『20,Stop it.』もよかった。
また、The Black Keys『Delta Kream』、Norah Jones 『…'Til We Meet Again』『I Dream Of Christmas』、Jungle『Loving In Stereo』など、国内盤CDのライナーノーツを書かせてもらえた作品がどれも素晴らしいものばかりだったのも嬉しかった。
2021年私的年間ベスト楽曲
続いて、楽曲単位で「これ、好き!」というものを選んでみた。これに関しては、邦楽110曲、洋楽140曲、計250曲のプレイリストを先にアップしたが、さすがにそこまで多いと「本当にいいのはどれなの?」となってしまいそうなので、そのなかから邦楽洋楽それぞれ15曲ずつ。順不同です。「2021年の1曲」を選ぶとしたら、やっぱSilk Sonic 「Leave the Door Open」だな。
〇国内編
●Night Tempo「Wonderland (feat. BONNIE PINK)」
●どんぐりず「ベイベ」
●Char「Stylist」
●原田知世「ヴァイオレット」
●The Birthday「月光」
●杏沙子「負けたんだ」
●DENIMS「ゆ~らめりか」
●土岐麻子「clost to you」
●betcover!! 「幽霊」
●ASOUND 「Moni Moni」
●cero 「Nemesis」
●中島愛「髪飾りの天使」
●ACO「THINK OF YOU」
●Good Bye April 「Spring Kiss」
●kiki vivi lily「New Day」
これらを含む110曲のプレイリスト「my best of 2021 list/邦楽編」はこちら。
〇国外編
●Victoria Monét 「Coastin'」
●Remi Wolf 「Liz」
●Leela James 「Complicated」
●PJ Morton 「Please Don't Walk Away」
●Parquet Courts 「Walking at a Downtown Pace」
●Clairo 「Amoeba」
●APRIL 「Someone That I Made」
● Silk Sonic 「Leave the Door Open」
●Brandi Carlile 「You and Me On The Rock」
●Arlo Parks 「Hope」
●Maxwell 「OFF」
●Alicia Keys 「Best of Me」
●Melanie Charles, Marlena Shaw 「 Woman Of The Ghetto」
●Ambré 「The Catch Up」
●girl in red 「Serotonin」
これらを含む140曲のプレイリスト「my best of 2021 list/洋楽編」はこちら。
2021年私的年間ライブベスト10
2019年までは年に(複数のアーティストが出演するイベントやフェスを1本と数えるとして)平均140本のライブを観に行っていたものだが、コロナ禍となった2020年は激減して30本。2021年はそれをも下回って27本だった。以前のようなライブ通い生活はまだまだ戻らない。2022年はどうなるのやら。
とはいえ、フジロック、スーパーソニックと、2つの大きな野外フェスが開催され、それに行けたのは、自分にとって大きなことだった。わけてもフジロック。行くまでの数日間と帰ってきてからの数日間を含め、ひとつのフェスであれほど不安と後ろめたさ、解放感と充実感の間を感情が行ったり来たりしたのは初めてのこと。この先も「2021年のフジロック」体験を忘れることはないだろう。
ということで、「よかったライブ」ベスト10。こちらは順位をつけてみた。
10位: 「リクオ・プレゼンツ 〜 JIROKICHI CONNECTION 〜 第1夜 リクオ、上田正樹、Yoshie.N」@高円寺・JIROKICHI
9位: Steve Aoki@千葉・ZOZOマリンスタジアム(SUPERSONIC 2日目)
8位: Rei@六本木・EXシアター
7位: ウソツキ@渋谷WWWX
6位: 「梅津和時プチ大仕事2021 歌を尽くす」@新宿ピットイン。出演: 梅津和時、七尾旅人、瀬尾高志。
5位: The Birthday@苗場スキー場(フジロック2日目 ホワイトステージ)
4位: betcover!! @渋谷www
3位: 思い出野郎Aチーム@新木場スタジオコースト
2位: METAFIVE(砂原良徳×LEO今井)@苗場スキー場(フジロック1日目 ホワイトステージ)
1位: GEZAN@苗場スキー場(フジロック3日目 レッドマーキー)
ほかに、日比谷野音のChar、フジロック3日目の電気グルーヴ、フジロック2日目のAJICO、リキッドルームの亜無亜危異、川崎クラブチッタのフリクションなどもよかった。
2021年私的年間映画ベスト10
2021年に劇場で観た作品は48本。『アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン』『ビリー・アイリッシュ 世界は少しぼやけている』『映画: フィッシュマンズ』『寛解の連続』『ザ・パブリック・イメージ・イズ・ロットン』『細野晴臣サヨナラアメリカ』『グレタ ひとりぼっちの挑戦』『リスペクト』『ジョン・コルトレーン チェイシング・トレーン』『BELUSHI ベルーシ』など、ミュージシャン、アクティヴィスト、コメディアンのドキュメンタリーやドラマをわりと多く観に行ったが、そのなかでとびぬけて素晴らしかったのが、『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』と『アメリカン・ユートピア』。いろいろ観たことで、何を描いて何を描かなければ良いドキュメンタリーになるのかがなんとなくわかった気がした。MCU作品は『ブラック・ウィドウ』も『シャン・チー テン・リングスの伝説』も面白かったが、『エターナルズ』に最も胸が躍った。MCUは連続のドラマシリーズも追いかけたが、やはり劇場で観るのが楽しい。
Netflixやアマプラでもいろいろ観たが、劇場で観たものだけでベスト10作を選んでみた。
10位:『空白』
9位: 『ミナリ』
8位: 『最後の決闘裁判』
7位: 『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
6位: 『シン・エヴァンゲリオン劇場編』
5位: 『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』
4位: 『エターナルズ』
3位: 『ただ悪より救いたまえ』
2位: 『アメリカン・ユートピア』
1位: 『ドライブ・マイ・カー』
家で観たもののなかでは、なんといっても『ザ・ビートルズ:Get Back』(ディズニープラス)が凄かったし驚いた。約8時間のドキュメンタリーで、長すぎるというひともいるが、あれだけの時間をかけてこそクライマックスのルーフトップ・コンサートが盛り上がるわけで、映画として見事な構成だと思った。
2021年年間TVドラマ&ドキュメンタリー
MCUのシリーズは一通り追いかけたし、どれもそれぞれの面白さがあったが(失敗作と言うひとが少なくない『ロキ』にしても楽しめるところはちゃんとあった)、やはり『ホークアイ』が最高。下手気に風呂敷を広げすぎなかったところがいいし、キャラクター同士で起こる化学反応がいい。これまでのシリーズとの繋げ方や話の畳み方も見事だし、バディものとしての面白さがよく出ていて、なんといってもケイト役のヘイリー・スタインフェルドがチャーミングなことこの上ない。唯一残念だったのは、5話の終わりに出てきて吃驚させたあのひとの描き方がカリカチュアされてたことくらいか。韓国作品では大ヒットした『イカゲーム』も見たが、好きかと訊かれると「うーん、ちょっと生理的にきつくて…」となってしまうので外した。それよりも『地獄が呼んでいる』に衝撃を受けた。『ムーブ・トゥ・ヘブン: 私は遺品整理士です』と『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』には泣かされた。『全裸監督 シーズン2』はヒットしたシーズン1を上回る面白さ。当時の女優の許可をとらずに映像化したことなどが問題視され、「絶対見ない」といった意見が多くあったことも理解しているが(そのため軽々しく薦めることはできないが)、村西の暴走による崩壊の様は実にスリリングで、人間ドラマとして見る者を引きつけて離さないものだったのは確か。『カムカムエヴリバディ』は現在放送中だが、傑作であることは間違いなし。朝ドラでこんなにハマったのは『スカーレット』以来だ。
というわけで、この10作品。順不同です。
●『ホークアイ』(ディズニープラス)
●『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(ディズニープラス)
●『クリックベイト』(Netflix)
●『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)
●『全裸監督 シーズン2』(Netflix)
●『俺の家の話』(TBSテレビ系)
●『地獄が呼んでいる』(Netflix)
●『ムーブ・トゥ・ヘブン: 私は遺品整理士です』(Netflix)
●『生きるとか死ぬとか父親とか』(テレビ東京)
●『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』(Netflix)