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リクオ presents KANREKI HOBO CONNECTION~JIROKICHI編3days第二夜(リクオ、吾妻光良、the Tiger)

2024年9月6日(金)

高円寺JIROKICHIで、リクオの還暦記念ライブ「リクオ presents KANREKI HOBO CONNECTION~JIROKICHI編3days」その2日目。共演は長いキャリアを有する吾妻光良さんと、いま最も活きのいいバンドthe Tigerだ。

まずはリクオの紹介でthe Tigerの4人が登場。ど頭の「金町」であつしくんのドラムがドダダダダっと鳴った瞬間、前日のチャボさん・梅津さんとのステージにドラムとベースがなかったこともあって尚更血が騒いだ。続いてもう会えないけど会いたかった人への思いを歌ったロッカバラッドの新曲をやったあと、ストレートなロックンロールの「我慢できない」で盛り上げる。JIROKICHIでのthe Tigerはレコ発の初ワンマン以来だが、バンドの鳴らしたい音を曇りなく鳴らしてくれる理想的な音響のハコであるなと感じる。ラウドすぎずキレイすぎず。数千組のブルーズやブルーズロックのミュージシャンが音を鳴らしてきたハコだけのことはあるよなぁ、なんてふうに改めて感心しちゃったり。とりわけ、たいがくんのブルーズ味ありのギターソロがいつにも増してよく映える。

続いてthe Tiger&リクオで3曲。この夜は最近この両者で共作したという2曲が初披露されたのだが、初めに演奏されたそのうちの1曲「悩んで学んで歌ってGO!(仮題)」はセカンドラインのリズムでめっちゃ陽気な曲。りんちゃんの明るさと曲調が合っていて、たいがくんのギターソロからリクオの弾むピアノソロへの移行にも気分があがった。彼らと一緒に演奏したいとリクオがリクエストしたという次の曲は、「たぶんこの曲、5年10年したら、むっちゃみんなが知っている曲になるんじゃないかな」と話して始まった「働き者の歌」。間奏でリクオのピアノソロが入ったとき、僕は70年代の井上堯之バンドにおける大野克夫さんのピアノを想起した。「傷だらけの天使」とかあのへんのドラマの劇伴に通じるもの哀しさがあって、リクオピアノ入り「働き者の歌」はやばい、沁み入る、なんかの機会にこの形で最録してほしいとすら思った。名曲度合いがさらに増した印象。続くリクオ曲「アイノウタ」はりんちゃんのコーラスが効いていた。

the Tigerの4人が一旦はけてからはリクオのピアノ弾き語りで「リアル」、憂歌団の「ジェリー・ロール・ベイカー・ブルース」と続き、そのあと吾妻光良さんが登場。還暦を迎えるリクオへの間違いないアドバイスとして「(お酒を飲んだら)水を飲むことです」「ラジオ体操をすることです」と吾妻さん。さすが。間違いない。そんな具合に話がいちいち面白く。完全に吾妻さんのペースでライブが進みだす。ふたりでの「Do The Chicken」で息を合わせたあと、the Tigerのリズム隊、ゆうすけくんとあつしくんがそこに加わってのバンド形態でキャブ・キャロウェイの「Your Voice」を。吾妻さんシグニチャーがはっきりと見てとれるゴリッとした音のギター、スウィングするリクオのピアノの気持ちよさもさることながら、ゆうすけ&あつしのリズムがまたいい。曲の強弱・抑揚をリズムでしっかり表現する。その上ふたりともとても楽しそうにプレイしつつ、吾妻さんとリクオの動きや顔をよく見て呼吸を合わせていた。「やっぱり若い血が入るといいねえ。たぎるものがありますね」と吾妻さん。

次のリクオ曲「満員電車」は前日の梅津・仲井戸共演ライブでも演奏され、そのときには梅津さんのサックスによってソウル味が濃く出ていたが、吾妻さんのギターが終盤でフィーチャーされるとなるとそれとは変わってブルーズロック味がグッと前に出る。吾妻さんのアウトロの爆発度合い、凄かったな。その吾妻さん、(この「満員電車」は)「銀座線の感じがしますね。丸の内線じゃない。丸の内線って個人的なアレですけどC調な感じがするの。銀座線のほうがちゃんとしてる」と。わかるようなわからんようなw。続いてリクオに呼びこまれてギターのたいがくん再登場。吾妻さん、「今日、たいがくんと呑みましたけどね、彼は素晴らしい!   彼はね、呑み屋さんでバイトしたことがあるから呑み屋さんの心がわかっている」。ってなこと言って、吾妻さんの歌うメルヴィン・スミス曲「Six Time Six」へ。間奏のたいがくんのブルーズ・ギターが最高。彼はブルーズロックギターでこそ持ち味を最大限に発揮するミュージシャンなのだなと改めて思ったり。吾妻さんのギターに対する受けと返しもばっちりで、それ、リハ後の酒場時間の交流効果がよく表れているじゃないかと感じられるものだった。

この5人でボ・ガンボス「魚ごっこ」、サム・クック曲に日本語詞をつけてリクオの歌う「Bring it on home to me」(たいがと吾妻さん、それぞれのギターの個性がはっきり出ていた!)、吾妻さんの歌うヒューイ・スミス作の「Sea Cruise」(“ロックな“アレンジ!)、ロックに輪をかけたリクオの「ミラクルマン」と、リクオ・吾妻・たいが・ゆうすけ・あつしの5人によるセッションは進むほどに熱を帯びていった。正直僕はこの第2夜の出演者が発表されたとき、吾妻さんとthe Tigerの取り合わせをイメージできずにいたのだけど、驚くくらいに相性がいい。というか、the Tigerのメンバーたちが吾妻さんの個性的なプレイをしっかり受け止めて合わせにいってる様に感心させられた。

そしてもうひとり。リクオがthe Tigerのりんを呼び込み、全員でまずはラッキー・ミリンダ楽団の「I'll Never Be Free」を。風邪気味で少し声が枯れているという吾妻さんと伸びやかなりんちゃんの声の合わさりは、しかしなんとも言えない味わいがあった。たいがのブルーズギターソロ、リクオの歌うようなピアノも素晴らしく、りんの歌も終盤で熱を増す。続いてボ・ガンボス・ナンバーをもう1曲。りんのヴォーカルで「トンネル抜けて」。そしてRCサクセション「いい事ばかりはありゃしない」。チャボさんと梅津さんを迎えての前日にも演奏されたこの曲を、まずはりんが節を崩して歌い、リクオが続き、吾妻さんがさらに自己流の節回しで歌い、たいががそこに続き、リクオ、そしてりんがもう一度気持ちを込めて歌って、吾妻さんのギターソロがそれを引き継ぐという、味わいありのリレー・プレイだった。

「音楽最高!」「3回目の二十歳を迎えますけど、ときめきは全然おさまってないです」「体力の続く限り呑んで歌って音楽を楽しもうぜ~」。ここで思いを言葉にして解き放ったリクオは、その思いを歌にした「永遠のロックンロール」をみんなと共に。“ロックンロールミュージック 今も魔法が解けない ロックンロールミュージック ときめきのさなか“。観客みんなも“ラ~ラララ~“と声を重ねて、その思い、その魔法を共有した。音楽という名の幸福感がそこに満ちた。

アンコール。上機嫌でお酒のおかわりがとまらなくなりだしてるリクオ(首には真っ赤なマフラー)。そしてthe Tiger。両者が最近共作したというもう1曲がここで演奏された。「朝を待てない(仮題)」。60年代終わりの若者たちの集会で歌わてれそうなフォークソング的なメロディから徐々に熱を帯びていき、後半でソウル/ゴスペル的な展開になって、りんの熱唱でガッと高みへ。彼女のソウルが解き放たれるバラードで、これはこれからバンドにとって相当重要な1曲になっていきそうな予感もする。音源化されるのが待ち遠しい。

ここで再び吾妻さんが呼び込まれ、全員で憂歌団「おそうじオバチャン」を。the Tigerのレパートリーではあるが、ゴキゲンなリクオのピアノソロ、吾妻さんのパンクなブルーズギター及びブルーズハープのソロが炸裂すれば曲も膨らみ、これぞセッションの旨味であり喜びぢゃとこっちも熱くなる。最後の最後はリクオの「光」。リクオとりん、そしてたいがくんと吾妻さんが声を重ねる様が美しくも感動的で、ひたすら楽しかった3時間近くの締めに相応しい名セッションだった。

振り返れば、the Tigerはこのところ事務所の大先輩・木村充揮を筆頭に様々なクセツヨの大ベテラン・ミュージシャンたちと現場を重ねまくり、その成果としてひとりひとりの演奏力と対応力がまた一段とアップしていたし、自信をつけてることも感じ取れた。the Tiger楽曲にはないリズムパターンの曲もこの日は多かったわけだけど、あつしくんとゆうすけくんのふたりが楽しそうな顔でそうしたリズムにも対応していたのはとりわけ印象的だった。4人とも相当日々努力して腕を磨いていってるんだな。一方、吾妻さんのパンク的とも言えるゴリっとしたギターはやはりとんでもなく強力で、ある意味異物的。でありながら存在がどこまでもチャーミングで、東京(新宿)生まれならではの粋もある。そしてそんな二組の異なる個性を最大限に発揮させながら、そこでの化学反応を誰よりも楽しんでいるのがリクオだ。まさしく「音楽最高」を体現し、ステージの上にいる人も下にいる人も楽しい気持ち・幸せな気持ちにさせる(もうすぐ)還暦のピアノマン。

セッションならではの面白さを前日以上に強く打ち出し、それでいて全体の構成も非常によく練られた、最高に楽しい第二夜だった。

打ち上げでもピアノ弾いて歌いだす吾妻さんリクオさん。
どんだけ~



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