『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
2021年10月2日(土)
池袋グランドシネマサンシャインで、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(IMAXレーザーGT)。
IMAXフィルムカメラで撮影されたシリーズ初作品とのことで、なるほどIMAXサイズで観てこその迫力ある動きと各国の景色の美しさが存分に味わえた。特に落下シーンなど上から下への動きの迫力が格別。これからの方はIMAXでの鑑賞をおすすめします。
*以下、少しばかりネタバレ的な記述あるので、これからご覧になられる方はご注意を。
ダニエル・クレイグの最後のボンド作品ということで、まさに集大成的。163分の大作(シンエヴァ劇場版よりさらに長い!)でありながらも飽きる瞬間がなく、最後まで引き込まれて観た。終幕をしっかり描くには、これだけの時間がどうしても必要だったということだろう。話も仕掛けも壮大で、時間と予算のかけ方がこれまでの比じゃなかったことも観ればわかる。MCUがあれだけ壮大で面白い作品を継続的に作っているこの時代、ここまでやらないと張り合えないってことですね。
めちゃめちゃ面白い、ってのは間違いない。が、文句なしの傑作かと訊かれるとそうとは言い切れず、ダニエル・クレイグの007のなかではやはり『スカイフォール』の最高傑作の座は揺るがない。
まず、アバンまでは素晴らしい。ここまでで既に1本の映画のよう。70年代のフランス映画っぽい美しさもある。完璧だ。そこから中盤あたりまでも相当いい。カーアクションも銃撃戦も見応えあって、特に北欧の原生林みたいなところでのそれは緊張感があって引き込まれた。けど、後半の、特にクライマックス前後になると少し漫画的というか、ドタバタしていてこのシリーズ特有の品が薄れていった印象(『スカイフォール』は最後まで品格があった)。終わりはさすがに胸に迫るものがあったけど、そこに至る前までが惜しかったように思う。ラミ・マレック演じるサフィンも「最凶の悪」というのは雰囲気ばかりで、勿体ぶったわりには……って感じがしたかな。そのあたりが減点どころ。
一方、特によかった点は、今の時代らしく女性たちの活躍とステキさが印象的に描かれていたこと。マドレーヌ役のレア・セドゥもノーミ役のラシャーナ・リンチもマネーペリー役のナオミ・ハリスも強さと美しさの両方ある自立した女性として描かれていたが、とりわけキューバの諜報部員パロマ役のアナ・デ・アルマスが可愛くてかっこよくて超最高! 彼女には新シリーズでもバリバリ活躍していただきたい。
で、そうした女性たちに対するボンドのふるまいもまたフェミニスト的で、深い愛がある故に苦悩し、自分の弱さにも向き合ったりもして、過去のシリーズのように美女に出会えばすぐに……っていう男ではもうなくなってるんですね。マドレーヌとボンド、ノーミとボンドもある意味対等で、制作者たちがフェミの意識を持って作ったことがわかるという。そうしたあたりが、実にこう、今の時代のボンド作品だったなと。
そうそう、ビリー・アイリッシュの主題歌も完璧なハマリ具合でした。