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背中のほっとするスイッチ

一昨年は入社以来、一番忙しかった。
休みの日も仕事のことが頭から離れず
心身ともに疲れ切っていた。神経の糸
はつねに張り続けたままでテレビを見
ても笑えなかった。

そしてその神経の糸はある日プツリと
切れる。会社に行ってパソコンに向か
った途端に手足が震え、椅子から転げ
落ち、動けなくなったしまった。診断
結果は、パニック症状を伴ううつ状態。

その後、3ヶ月の入院を経て、7ヶ月の
リハビリを経験し、職場に復帰した。
久々会うみんなは優しかった。久しぶ
り!と声を掛けてくれる横の課の課長。
ゆっくりね、と気遣ってくれる同僚。

その中でも一番嬉しかったのはkさん
の行動だ。僕の席に近づいて来たと思
ったら、何も言わず、僕の背中の中央
の上の方をそっと二度撫でた。全身に
安心感が行き渡って緊張が和らいだ。

背中の中央の上の方には、ほっとする
スイッチがあるのだろう。今度は僕が
誰かのほっとするスイッチを押して和
ませてあげようと企んでいる。押し方
は簡単。そっと二度撫でるだけ。

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