【107.水曜映画れびゅ~】"Aftersun"~真夏の日差しの下での、暖かな記憶~
"Aftersun”は、5月26日から公開されている映画。
英国アカデミー賞にて新人賞を受賞し、また今年の米アカデミー賞にもノミネートされた作品です。
あらすじ
父との思い出
20年前の思い出。
11歳だったソフィは、父親のカラムとトルコのリゾート地に、夏休みバカンスにやってきていた。
普段は父と別々に暮らしているソフィは、大好きなパパと一緒の時間を存分に楽しむ。
カラムは娘との時間を記録しようと、ビデオカメラを買ってきていた。父娘は、夏の日差しを浴びながら、お互いにカメラを向け、ひと夏の思い出を刻んでいく。
暖かな記憶
トルコのリゾート地でバカンスを楽しむ父娘の物語。
真夏の日差しが燦々と降り注ぐ中で、愛らしい少女と優しい父親の交流が静かに描かれます。
とにかく仲がいい父娘。
娘に日焼け止めを塗ってあげたり、
ふざけて父親のビデオカメラで撮影したり、
海辺で一緒に寝そべって空を眺めたり…と。
トルコの晴れやかな青空の下、父娘の大切な想い出を眺めていくなかで、思わず頬が緩んでしまいます。
そんな光景をひたすら眺めているだけでも十分に楽しめる本作ですが、実はそんななかで陰りのある部分も節々に見受けられます。
それは、父カラムの精神状態。
娘といる時は楽しそうに素敵なお父さんをしているのですが、一人になると、ふとったまらなくなって、ぼーっとしたり、泣き出したりしています。
そもそも、こんなに仲が良いのに娘と一緒に暮らしていないのも違和感があり、過去に何かがあって、それを引きずっている様子が見受けられます…。
真夏の日差しの下での暖かな淡い記憶と、見え隠れする父の陰影。そのコントラストに、ぐっと作品に引き込まれました。
監督と主演俳優、期待の新星!
監督は、シャーロット・ウェルズ。本作が長編デビュー作となる35歳の女性監督でした。
本作が初メガホンとなりましたが、批評的に大成功を収め、英国アカデミー賞にて新人賞(英国新人作家/監督/プロデューサー部門)を受賞し、「天才」と称された逸材です。
そして主演を務めたのは、ポール・メスカル。舞台俳優としてキャリアを重ねつつ、TVドラマ『ノーマル・ピープル』(2020)で英国アカデミー賞主演男優賞(テレビ部門)を受賞した若き実力派。
↓『ノーマル・ピープル』のトレーラー
(※日本語字幕なし)
本作でも、明るさのなかで見え隠れする陰影を繊細な演技で表わし、26歳という若さでのアカデミー主演男優賞ノミネートも納得でした。
そしてポール・メスカルは、2000年公開のアカデミー作品賞受賞作『グラディエーター』の続編の主演が内定しているとの報道も、先日ありました。
さらには『LION ライオン 25年目のただいま』(2016)のガース・デイビス監督、シアーシャ・ローナン共演のSFスリラー”Foe”への出演も控えているとのことです。
これからの映画界において、注目すべき才能が集っている作品でもある本作『aftersun/アフターサン』。私個人としても、今年のベスト映画入り間違いなしの大好きな映画ですので、強くオススメさせていただきます!
前回記事と、次回記事
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次回の更新では、カンヌ国際映画祭にて脚本賞に輝いた是枝監督の話題の新作『怪物』を紹介させていただきます。
お楽しみに!