【1.水曜映画れびゅ~】"The Big Short"~心にグサッと刺さったあるセリフ~
The Big Shortは、2015年に公開されたアメリカの映画。
『バイス』(2018)を手掛けたことでも知られるアダム・マッケイが監督・脚本を務め、2016年のアカデミー賞で脚色賞を受賞した作品でもあります。
作品情報
※今回の記事は映画の紹介というより映画感想がメインですので、観たことのない方は、ここからの記事を読まれる前にご覧になられることをオススメします。
心にグサッと刺さったあるセリフ
本作において、私の心に非常に刺さったセリフがあります。それはブラット・ピット演じるベン・リカードの、以下のセリフです。
このセリフの背景を簡単に説明します。
ベンは、元凄腕のトレーダー。作中ではほぼ引退状態として登場しますが、サブプライムローンの欠陥に気付いた若手トレーダーのチャーリーとジェイミーにある話を持ち掛けられます。その話とは、サブプライムの欠陥を利用して異様なまでに盛り上がる住宅バブルがはじける前に儲けをごっそりと戴こうというもの。
ベンはうまい話だと納得してチャーリーとジェイミーを手伝い始め、トントン拍子に事が運んでいきます。すると、大金持ちになれることを確信したチャーリーとジェイミーはベンの目の前で陽気にはしゃぎだします。
その様子を見たベンは突然に不機嫌となり、2人に対して上のセリフを言い放ちました。
襲い来る脅威に対する無力感
ベンは苦しい葛藤の中にいました。
彼は金融崩壊が迫まっていることを確信していましたが、現状で彼ができることは目の前の青年に金を稼がせてやるだけ…。そんな自身の”無力感へのもどかしさ”を、このセリフから感じます。
その感覚というのは、今年のコロナ禍を過ごした私自身と重なり合う部分があります。もちろん私はベンのような輝かしい経歴もないですし、彼ほど先を見通せていないと思います。ただこの度のコロナが流行り始めてから今に至るまでの節々で見えてくる日本ないし世界の社会的混乱や不安に対し、自分自身が「何もできない」「何もしようがない」という無力感に対して常にもどかしさを抱いてきました。
勝手ながら、ベンと通じるものを感じていました。
人間が数値化される
そして、その次に続くこのセリフ。
「人間が数値化」という言葉が、私の心にグサッ刺さりました。
特にコロナ禍ではベンが例として挙げている失業率や死亡者に加え、感染者数、重症者数といった数値化された人間が常に目につくようになりました。
それらは、私たちの目にはただの数字としてしか映りません。しかし実際には、その数字一つひとつに一人ひとりの人間がいます。
そんな理屈は言われなくても理解はしているでしょう。ただそれは、言われたくない、理解したくないことでもあると思います。
そんな数字が感染者・重症者・死亡者数という名前を冠して、今年1年毎日のように報道されてきました。正直いえば、時に一喜一憂することはあっても、お亡くなりになられた方に一人ひとりに思いを馳せるほど私は立派ではありませんでした。
でも、ふとした時にこのセリフのことを思い出します。
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次回の記事では、大ヒット作"The Dark Knight"(2008)について語っています。