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【163.水曜映画れびゅ~】『WILL』~殺すなら、生きろ~

『WILL』は、今年の2月16日から全国で順次劇場公開されているドキュメンタリー映画。

俳優の東出昌大に1年間密着し、東出が送る狩猟生活の様子を収めた作品です。

作品情報

なぜ俳優である東出昌大が狩猟をしているのか。彼が狩猟をして生命を頂き、生きながらえる生命とは何なのか――。本作は、根底にある気持ちの混沌、矛盾、葛藤を抱える東出昌大という一人の人間と、MOROHAが発する渾身の言葉とすさまじい熱量が重なり合い、東出自身が問い続けている日々を生々しくスクリーンに映し出していく。

公式ホームページより一部抜粋

東出昌大の狩猟生活を追う

俳優 東出昌大は2020年の不倫スキャンダルにより、生活が一変した。加熱する報道と、それに伴う誹謗中傷、そして離婚…。そうして表舞台からもしばらく身を隠した。

居場所をなくしたように思えた東出だったが、唯一戻れる場所があった。そこは、山だった。それまでライフワークのように楽しんでいた狩猟を生活の中心とするようになったのだ。

本作は、東出が元所属事務所から退所通知を受けた2021年から約1年間、彼が送った狩猟生活を密着する。

信じたいことだけ信じた人たちへ

東出昌大が狩猟生活を行っているということは、ネットニュースなどの報道で知っている方も多いと思います。ただひとつ断っておきたいのは、一部であたかも「東出が食うものに困って山での自給自足生活を始めた」みたいなニュアンスで書かれている報道は間違いであるということです。

そもそも猟銃のライセンスなんて、そんな簡単に取得できません。東出は騒動のずっと前から狩猟に興味を持っており、ライセンスもすでに取得していました。

そして本作からもわかるように、狩猟生活なんて1人でなんとかなるレベルではありません。狩猟コミュニティの下で色々な人に助けてもらいながら、東出は狩猟生活をしています。それは、東出昌大という人間の人柄が山の人々に受け入れられているからこそ成り立っていることであり、「食うものに困って」やって来たみたいな感じでは決して通用するものではありません。

確かに、東出の不倫は炎上しても仕方ないことかもしれません。でもそれに便乗して事実とは異なる報道が世に出回り、それにまた便乗する人たちには、私は当時から違和感がありました。

例えば、私が当時付き合っていた彼女は東出のことが大嫌いだったらしく、そんな時にネットで「東出の演技は全て棒読みで、下手くそ」みたいな意見を見たらしいです。それで何かの話の時に「演技が下手なくせして、不倫するなんて、ホントに最低だよね」と私に言ってきました。

私はそれに「待った」をかけました。私は東出昌大という俳優を下手だとは一度も思ったことがなかったからです。

「何を根拠にそんなこと言ってるんだよ。『桐島、部活やめるってよ』とか『菊とギロチン』とか、いい作品にいっぱい出てる俳優だぞ。作品によって演じ方も変えれるような人だ。不倫したからって俳優としての実力にテキトーなこと言うなよ」

そう言ったら最後、もちろん彼女とはケンカになりました(笑)。

・・・

つまり何が言いたいかと言うと、東出に限ったことではないですが、世間の人々は芸能人が炎上すると、それをきっかけに火のないところにも煙を見つけて、とにかく叩きたいだけ叩いていることが多いということです。それが真実かどうかは関係なく、自分が信じたいことだけを信じているのです。

そんな人にこそ、本作を強くお勧めしたいです。東出昌大がなぜ山へ居場所を求めたのか、山の人々からどのように思われているのかを知ってほしいです。本作を観たうえで「やはり東出が嫌い」というなら別にそれでいいと思います。ただ知ろうともしないで叩くのは違うと思います。

殺すなら、生きろ

このドキュメンタリーから強く伝わってくるのが、東出昌大は精神的にかなり参っていたということです。ほとんど鬱状態で、本当にいつ自ら命を絶ってもおかしくない状況にいたということがわかります。

その一方で、東出は山でシカを撃ちます。しかしそれは娯楽として、ではありません。自然が育んだ命と正面から向き合って、シカを撃ち、捌き、そして食べているのです。

劇中で東出は、次のようなことを言います。

「(狩猟で動物の命を奪うことが)可哀そうだと思うなら、お前が死ねよって言われても仕方ないっすよね」

※劇中のセリフとは、
多少違っている部分があるかもしれないです。

私たちは食肉の工程を直視しません。スーパーで売られている肉が、もともと生き物だったという認識なんてほぼありません。しかし、東出はそれを目の当たりにしています。そして自らの手で、命を奪い、命を食しています。

命を奪うなら、その分お前は生きろ

生半可な気持ちで“死にたい”とか、
言ってはいけない

映画が進むにつれて、そんなメッセージが伝わってきました。

・・・

東出昌大が実際にどんな人間なのかは、正直わかりません。本作では自然体で、誰からも愛される人柄が映し出されています。しかしそれも所詮一部で、別の顔も彼にはあるのではないかと思ってしまいます。そしてやはり、あの不倫は夫として父親として許されることでありません。

ただ私が確信していることは、東出昌大は素晴らしい役者であるということです。実際に昨年は『とべない風船』、『Winny』、『福田村事件』と素晴らしい作品に出演され、素晴らしい演技を魅せてくれました。

私は“俳優 東出昌大”が好きです。だから、これからの活躍も楽しみにしています。


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次回の更新では、“森山未來がおっさん化け猫に!”『化け猫あんずちゃん』を紹介させていただきます。

お楽しみに!