【106.水曜映画れびゅ~】"Armageddon Time"~世の中は不公平だ~
"Armageddon Time"は、今月から日本で劇場公開されている映画。
アン・ハサウェイやアンソニー・ホプキンスが出演している作品です。
あらすじ
12歳の少年の目から見た、不公正な世界
PTA会長を務める教育熱心な母エスターと、厳格な父アーヴィングの白人家庭の間で育ったポールは、公立学校に通う12歳の少年だ。
人を笑わすことが好きなお調子者のポールは、その性格が災いし、担任の教師に目を付けられてしまう。しかし彼は、クラスの問題児である黒人少年のジョニーと仲良くなり、次々と問題行為を起こしてしまう。
その目に余る事態が両親の耳に入り、ポールは私立学校へと転校することとなってしまう。そこは白人の学生が集うエリート志向の学校であり、そこでできた友人は公然と黒人のジョニーのことを虐げる。
友達を馬鹿にされて傷ついたポールは、唯一の理解者である祖父アーロンに悩みを打ち明ける。
「黙って見過ごすな」
強い口調で語られた祖父のその言葉を、ポールはぐっと心に刻み込んだ。
不公平に目を背けてるのは、正義か?
製作・監督・脚本を務めたジェームズ・グレイの自伝物語の本作。
主人公のポールは比較的裕福な家庭で育った男の子です。祖父母の支援もあり、兄を私立学校へ通わせれるほどの余裕があります。
一方でポールの親友のジョニーは、両親がおらず、祖母と二人で貧しい暮らしをしていました。
この二人は共通してお調子者であり、クラスで問題ばかり起こします。しかしいつも厳しく怒られるのはジョニーの方でした。それは彼が留年生であることも関係あるかもしれませんが、何よりも彼が「黒人であるために不良である」というレッテルが貼られていることが大きいと思われます。
舞台となったのは、1980年。当時は現在よりも黒人差別が激しい時代であったことが、物語の節々で散見されます。
ある日、地下鉄で一緒に帰っていたポールとジョニーは将来の夢を語ります。ポールは芸術家に、ジョニーは宇宙飛行士になりたいと言い合います。しかし同じ車両に乗っていた黒人男性に「黒人が宇宙飛行士になれるわけない」と言われてしまいます。
またエリート志向の学校へと転校したポールに会いに行ったジョニーですが、ポールのクラスメイトはジョニーのことを陰で”ニガー”と侮辱するシーンも出てきます。
生まれが違うだけで、肌の色が違うだけで、なぜそこまで下に見られなければいけないのか…?
素直に打ち解けられる親友のジョニーを取り巻く不公平な環境に対して、ポールは目を背けるのか、立ち向かうのかという葛藤が、本作の大きな主題になっていると思われます。
豪華キャストの共演
本作で主人公のポールを演じたのは、バンクス・レペタ。今作が映画初主演となる彼ですが、とにかく初々しくて可愛らしいです!
そしてそんな彼を取り巻くのが、豪華俳優陣。
お母さん役は、アン・ハサウェイ。いくつになってもこの方は綺麗ですね。教育熱心でありつつ、子供を愛する包容力のある演技が光りました。
お父さん役は、エミー賞俳優のジェレミー・ストロング。実は私、ジェレミー・ストロング大好きなんですよね!無骨さとエレガントさを併せ持つ立ち振る舞いが凄くカッコ良くてファンです。そんな彼が今回は、厳しい父親役を熱演しています。
そして忘れてはいけないのが、おじいちゃん役のアンソニー・ホプキンス。もうこの人の演技は文句なしですね。日本でいう樹木希林のような、作り物感のない自然な演技とその暖かみで、作品を包み込んでくれていました。
ストーリーもさることながら、このような俳優陣の共演も楽しい本作『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』。
オススメですので、時間がある時にぜひご覧ください。
前回記事と、次回記事
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次回の更新では、今年のアカデミー賞にてポール・メスカルが主演男優賞にノミネートされ話題の新作"Aftersun"を紹介させていただきます。
お楽しみに!