【143.水曜映画れびゅ~】"Next Goal Wins”~スポーツは楽しめっ!~
"Next Goal Wins”は、2月23日から日本公開されている映画。
『ジョジョ・ラビット』(2019)で知られるタイカ・ワイティティ最新作です。
あらすじ
起こせっ!大番狂わせ!
0 ー 31
2001年、ワールドカップ予選にて、米領サモア代表チームはオーストラリア代表と対戦し、0ー31という屈辱的な大敗を喫した。
・・・
トーマス・ロンゲンは、元サッカー選手であり、U-20サッカーアメリカ合衆国代表をU-20ワールドカップに2度導いた名将であった。しかし、素行不良によりアメリカサッカー協会から解雇されてしまう。
サッカー協会は温情として、新たな就職先を案内する。そこは、米領サモア代表のコーチであった。
歴史的大敗から10年後の米領サモアは、公式戦全敗でFIFAランキング最下位に沈んでいた。そんな彼らが欲しかったのは勝利ではなく、たった1つのゴールだった。
しかし、状況はロンゲンが思っていた以上に深刻だった。
素人同然のプレー、平気で遅刻してくる中心選手、そして楽観的すぎる国民性…
"どうしようもない"サッカーチームと、社会から見捨てられた不良監督が、とんでもない大番狂わせを作り出そうとする!
ドキュメンタリーから劇映画へ
実話を基にした本作。原案となったのは、同名のドキュメンタリー映画"Next Goal Wins"(邦題『ネクスト・ゴール!世界最弱のサッカー代表チーム0対31からの挑戦』)です。
監督を務めたのは、『ジョジョ・ラビット』(2019)でのアカデミー脚色賞受賞が記憶に新しい、タイカ・ワイティティ。
例の如く、本作にもワイティティ自身が映画に出演しています。
そして主演を務めたのが、マイケル・ファスベンダーです!
ファスベンダーといえば、昨年にNetflixより配信されたデヴィッド・フィンチャー監督作『ザ・キラー』で、完璧主義の冷酷な殺し屋を演じたばかりです。
『ザ・キラー』では、感情を表に全く出さない、無口な役を演じていましたが、今回の役は180度違う、短気なアル中のオヤジの役です。しかしそんなギャップを全く感じさせず、思わず「本当に同じ俳優?!」って声に出てしまいたくなる程でした。
そんなファスベンダーのコミカルな演技と、タイカ・ワイティティの飄々としたストーリー展開が相まって、今年一番のコメディドラマとなっています。
スポーツは楽しめっ!
素人同然の米領サモア代表チームと、短気なサッカーコーチの成長を描いた本作。
最初のうちは何をやってもダメダメのように思えましたが、一念発起してチームと向き合い始めたロンゲンは、徐々にチームを"勝てる"チームへと導きます。
そして、迎えた代表戦。
今までで一番いい試合ができていると実感するチームですが、どうにもプレーが嚙み合わず、1点ビハインドで前半戦を終えてしまいます。
そんな時に、ロンゲンは言います。
勝たなくたっていい
ゴールできなくたっていい
ただ…
「楽しめ!」
・・・
私は昔、学校の体育の授業が大っ嫌いでした。サッカーとか、バスケとか、野球を授業でやることになったら、クラスメートたちがものすごい形相で勝ちに執念を燃やしていたからです。そして、あまり球技が得意ではなかった私がミスでもしようものなら、舌打ちされたり、悪態をつかれたりしました。だから、私は球技をするのが今でも嫌いです。
本作のロンゲンも、映画の最初での印象では、私のクラスメートと同じタイプの臭いがしました。「なんでこんなことができないんだっ!」とか「ふざけてプレーしているのかっ!」とか言ってましたし…。
だから結構ロンゲンにヘイトを溜めていたんですが、終盤で「楽しめ!」というシーンで、そのヘイトが一気に吹き飛びました。その「楽しめ!」こそが、私の学生時代に言って欲しかったことだったからです。
「そんな指導者に出会えていたなら、私もスポーツが好きになれていたかもしれないな」と邂逅させてくれた一作でした。
『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』
最後に、本作が気に入った人なら必ず好きな作品も、合わせてご紹介します。
スウェーデンで大ヒットを記録した『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』。
ずっと専業主婦をやってきていたブリット=マリーが、夫の浮気が発覚したことをきっかけに家出。求人センターで紹介され、住み込みでのサッカーコーチをするという物語です。
ストーリーも雰囲気も、『ネクスト・ゴール・ウィンズ』とかなり似ている作品。日本ではあまり知られてないですが、こちらもすごくいい作品ですので、ぜひご覧になってください!
前回記事と、次回記事
前回投稿した記事はこちらから!
これまでの【水曜映画れびゅ~】の記事はこちらから!
次回の更新では、アカデミー脚色賞を受賞した"American Fiction"を紹介させていただきます。
お楽しみに!