【145.水曜映画れびゅ~】"Dumb Money”~ネット民の経済革命~
"Dumb Money”は、2月2日から日本公開されている映画。
『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017)で知られるクレイグ・ギレスピーが監督を務め、主演はポール・ダノです。
あらすじ
ウォール街v.s.個人投資家
2020年、アメリカ。コロナ禍のなか経営危機に陥っていたゲーム小売店ゲームストップの株が、異常なスピードで買われていっていた。
その仕掛け人は、YouTuberのローリング・キティ。証券情報を発信していたキティが、"ゲームストップ株"を買うように奨励していたのだ。その効果もあり、アメリカ中の個人小口投資家たちが、こぞって"ゲームストップ株"を買い始めた。
そこに目を付けたのが、ウォールストリートの大株主たち。ジワジワと価値の上がる"ゲームストップ株"に空売りを仕掛けようする。
大株主にしかできない"空売り"。一方で、"ゲームストップ株"を保有する個人投資家は、かつて空売りで多くの損害や破産に追い込まれた家計の子どもたちだった。彼らはSNSやネット掲示板で結託し、空売りを阻止するため"ゲームストップ株"を買い増ししていくのだった。
・・・
この物語は単なるマネーゲームではない。ウォール街v.s.個人投資家たちとの、全面戦争だ!
ゲームストップ株騒動をスピード映画化!
2021年、アメリカ経済を揺るがしたゲームストップ株騒動。
ショート・スクイーズの発生により、大口投資家たちが大損を喰らい、ウォール街に激震が走りました。
"個人投資家たちの逆襲"と言われた、この騒動をわずか2年後に映画化したのが本作。ちなみに原作は2021年に出版されたノンフィクション小説"The Antisocial Network"です。
ネット民の経済革命
今回の騒動で大きな注目を集めたのが、ネットと個人投資家たちの相性の良さです。
もともとゲームストップ株の買いを呼び掛けたのは、YouTuberでした。そこから株式や証券情報の意見交換の場というネット掲示板"WallStreetBets"でネット民が結託して、一大ムーブメントが起こりました。
「さすがアメリカ!」って思うかもしれませんが、その盛り上がり方は日本のネットの歴史でも多々あったことです。
日本を代表するネット掲示板2ちゃんねるでは、「田代祭」や「コイルショック」、「五条勝」といった悪ふざけの伝説がいくつもあります。
今回のゲームストップ株騒動も、原理原則は2ちゃんねると全く同じなんですよね。
TikiTokをはじめとするSNSでは、連日ゲームストップ株関連のミームが投稿され、仕掛け人ローリング・キティは崇拝され、ネット民が盛り上がりに盛り上がった結果、アメリカ経済を揺るがす大騒動へと発展したのでした。
これが最高に痛快で、しかもこれが実話という事がまたさらに面白いところなんですよね。
そして最近の出来事なので、アメリカ経済の今を大いに映し出しています。
特に強烈だったのが、経済格差の描写。ある個人投資家はコロナ禍に看護師をしており、エッシェンシャルワーカーとして命がけで働いています。しかし資産状況は、学生ローンの借金などで首が回らない状況です。その一方でウォール街の資産家たちは、コロナ禍は別荘で優雅にテニスを楽しむ。こんな格差が許されていいのでしょうか…?
全然話題になってないからこそ、
多くの人にオススメしてほしいっ!
そんな本作、アメリカ本国では616館で公開され、映画批評サイトRotten Tomatoesでは批評家・観客の評価ともに肯定的意見80%超と、かなり好意的に受け止められています。
しかし、賞レースなどには全く引っかからなかったこともあり、日本での公開はひっそりとしたものになってしまっています。
ともいう私も、先日大学の先輩に会うために京都に行ったときに、夕食まで時間つぶしのつもりで出町座に行き、そこでちょうどいい時間にかかっていた本作を鑑賞したという経緯があります。そんな巡り合わせがなかったら、おそらく見ていなかったでしょう。
でも、そんな生半可な気持ちで観たにもかかわらず、この映画は強烈に面白かったっ!誇張ナシで、現時点で今年ベストの傑作ですっ!
おそらくこれから各地域のミニシアターで劇場公開、そしてMGMが配給しているので近いうちにAmazonプライムでの配信が始まると思います。だから、この記事を読んだ人たちには絶対に見て欲しいです。そして口コミで多くの日本の人たちに見てもらいましょう!
我々で、映画ミームを作ろうではありませんか!
前回記事と、次回記事
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次回の更新では、ついに公開された待望の続編"Dune: Part Two"を紹介させていただきます。
お楽しみに!