【12.水曜映画れびゅ~】"The Florida Project"~ディズニー・ワールドの闇~
"The Florida Project"は、2017年公開のアメリカ映画です。
あらすじ
Route192
物語の舞台となったモーテル「マジック・キャッスル」。その存在自体はフィクションですが、そのモーテルが位置するRoute192は実在し、その現状はまさに映画で映し出されたものそのものです。
Route192は、フロリダのディズニーワールドにつづくハイウェイ。ディズニーワールド開業当初は都市開発が行われ、多くのホテルや商業施設が立ち並びました。しかしディズニーが園内でのホテル事業を拡大したことで、Route192沿いの施設の経営状況は一変しました。客足はディズニーワールド園内に流れ、多くの施設が廃業。Route192は廃れていきました。
そんな中でもRoute192でモーテルを経営していたオーナーはいましたが、2008年のサブプライムローン問題に観光業はさらに衰退。そこで彼らが始めたのが、”一時的”なホームレスへの貸し部屋事業でした。しかし”一時的”というのは名ばかりで、モーテルには多くのホームレスが住みつくようになり、その長期滞在が社会問題となっています。
子供の貧困
そんなRoute192の状況を、6歳の子供の目線で描いたのが本作。そこからは、”子供の貧困”というもう1つのテーマが汲み取れます。
実際の問題としても、近年可視化されつつある”子供の貧困”。邦画でもカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した是枝裕和監督の『万引き家族』(2018)でも、子供の"貧困"と"虐待"が重点的に描かれました。
そして本作『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』で特徴的なのは、主人公の少女ムーニーが「自らを貧困だと自覚していない」こと。ムーニーは周りの大人たちに迷惑をかけまくりながらも、楽しそうに毎日を過ごします。彼女の生活は傍から見れば貧困かもしれません。しかしムーニーにとっては、そういった生活が当たり前。3キロ先にあるディズニーワールドなんて一切の興味を示さず、むしろディズニーに行く観光客にチップをたかりにいきます。
貧困と知らずとも幸せそうに生きるムーニー。しかし、貧困であるがゆえにそれが永遠には続かない。
色鮮やかな背景を映し出しながら、描かれるのは悲しい現実でした。
独特なキャスティング
本作の出演はモーテルの管理人役としてウィレム・デフォーが出演している以外、ほとんど無名の俳優で製作されています。
主人公のムーニー役を演じたのは、ブルックリン・プリンス。Fワードを連発するクソガキを見事に演じ、当時6歳ながら一時はオスカーノミネーションの噂がたつほどの注目を集めました。ちなみに、現在は短編映画で監督を務めるなど活躍の幅を広げているとか。
またムーニーの母親を演じたブリア・ヴィネイトは、なんと本作が俳優ビュー作!あんなに自然な演技で初めてだったなんて…信じられません。
そしてウィレム・デフォーは、安定の好演。本作の演技にて、17年ぶり3度目のアカデミー助演男優賞にノミネートされました。
【2024年6月4日 追記】
本作『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』で監督を務めたショーン・ベイカーが、第77回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞しました!
嬉しすぎるっ!
前回記事と、次回記事
前回投稿した記事はこちらから!
これまでの【水曜映画れびゅ~】の記事はこちらから!
次回の記事では、エイミー・アダムスとメリル・ストリープのW主演映画"Julie & Julia"(2009)について語っています。