【73.水曜映画れびゅ~】"Fruitvale Station"~ビリー・アイリッシュが、1番好きと言い続ける映画~
"Fruitvale Station" は、2013年公開の映画です。
作品情報
ビリー・アイリッシュが一番好きな映画
皆さんは、ビリー・アイリッシュという歌手を知っていますでしょうか?
2015年に13歳という若さで"Ocean Eyes"を発表。そこから注目を集めはじめ、2019年発表の"bad guy"で世界的に大ブレイク。またその奇抜のビジュアルも相まって、瞬く間に時代のアイコンとなりました。
2020年のグラミー賞では、史上最年少で主要4部門を制覇。その後も毎年のようにグラミー賞にノミネート/受賞を果たしています。最近では、『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』の主題歌を務め、アカデミー歌曲賞も獲得しましたね。
授賞式でのパフォーマンスも圧巻でした。
そんな彼女に関して、とても興味深いインタビュー動画があります。それはVanity Fairが2017年から毎年10月18日に行っているインタビュー。そこで尋ねられるのはいつも同じ質問なのですが、毎年彼女の取り巻く環境が変わっていくことによって、毎回違った回答が聴けるという面白さがあります。
そしてその質問のなかで「1番好きな映画は何ですか?」という質問があります。他の質問への回答は毎年変化するのですが、面白いことに、その質問に対する回答に関しては毎回同じでした。
彼女の答えは決まって、
そこで今回は、そんなビリー・アイリッシュが推し続ける『フルートベール駅で』についてと、なぜビリーがこの映画を毎回1番好きな映画として挙げるのかという理由を考えていきたいと思います。
射殺された黒人青年の最後の一日…
この映画の題材は、2009年1月1日に起きたオスカー・グラント三世射殺事件。カリフォルニアのオークランドにあるフルートベール駅で起きた警察による銃殺事件です。
鉄道内での小競り合いをきっかけに、鉄道警察に事情聴取を受ける黒人の若者たち。そのなかで少しの挙動を見せたオスカー・グラント氏に対して、警察は頸部を押さえつけるなど過剰な拘束を行い、最終的にはテーザー銃と取り違えて拳銃を発砲。グラント氏は帰らぬ人となってしまいました。その様子はその場にいた他の乗客によって撮影され、ビデオとしても残っています。
※その動画はこちらから視聴できます。観られる方は、衝撃的な映像であることをご承知ください。
本作では、その事件があったオスカー・グラント氏の最後の1日を描かれます。そこに描かれたのは、事件のことのみならず、貧困から抜け出せないアメリカの人種による格差も描かれています。黒人や多くのマイノリティは安定した仕事に就けず、故に売人といった犯罪に手を染めざる得ないという、現代アメリカの根深い問題が伝わってきました。
ちなみに本作で主演を務め、オスカー・グラント氏を演じたのは、『ブラックパンサー』(2018)や『黒い司法 0%からの奇跡』(2019)で知られるマイケル・B・ジョーダン。彼の出世作としても知られています。
単純に好きなだけではない気がする…
そんな本作を、最も好きな映画として挙げるビリー・アイリッシュ。なぜ好きなのかということに関しては、2019年にこう語っていました。
簡単に語ってはいますが、映画にかなり感動した様子のビリー。おそらく、かなり泣いたのだろうとも思われます。
そんな彼女は、白人でありながらも黒人差別に対してはかなり積極的に声を上げている方でもあります。実際に2020年の警察によるジョージ・フロイド氏殺害の事件から端を発したBLM運動の際には、自身のinstagramにて黒人差別問題についての声明文を発表しました。
声明文では、"Black Lives Matter"に便乗した"All Lives Matter"を痛烈に批判。黒人というだけで命の危険にさらされている人々がいるなかでの、「黒人を優遇するな」という全くの筋違いな意見を一蹴しました。
彼女に黒人の友人が多いことも関係しているとも思いますが、黒人差別問題に非常に高い意識を持っていることがうかがえるビリー。そんな彼女が『フルートベール駅で』を観て抱いた感情というのは、自身にとってとても大きなものだったのではないでしょうか。だからこそ、この映画を多くの人に観て、考えてもらいたい。そういった想いから、毎年変わらずこの映画の名前を「1番好きな映画」として挙げているのかもしれません。
事実そのおかげで、私も『フルートベール駅で』という素晴らしい映画を観ることができました。そして、皆さんにもぜひ一度鑑賞していただきたく思います。
昨年は『フルートベール駅で』以外の映画の名前も
ということで今回は、ビリー・アイリッシュが常に1番好きな映画として挙げる『フルートベール駅で』について紹介しました。
一方で実は2021年のインタビューにてビリーは、「1番好きな映画は何ですか?」という質問に対して、この『フルートベール駅で』以外の映画についても初めて語りました。
5年目にして初めて口にした映画は、サーチライト・ピクチャーズ製作による2014年公開の作品『アイ・オリジンズ』。SFチックな作品で、こちらも気になりますね。
そして今年も例外なく、2022年10月18日には再び彼女へのインタビュー行われると思われます。少し先の話ではありますが、今年は黒髪になった彼女が、今度は何を語るのか、新たな好きな映画には出会っているのか、など今からすでに楽しみですね!
前回記事と、次回記事
前回投稿した記事はこちらから!
これまでの【水曜映画れびゅ~】の記事はこちらから!
来週は、マット・デイモンの名を一躍世に知らしめた傑作"Good Will Hunting"(1997)を紹介させていただきます。
お楽しみに!