4年近く同棲していたのに生活リズムの不一致で新婚早々妻と別居した話(10)
結婚式が終わり、プライベートが安定したためか、薬なしで眠れるようになった。
気分も晴れやか。
担当の医師からも、最初のころと全然印象が違うと言われた。
医師お墨付きの完治である。
マリッジブルーだったのかもしれない。
そして速攻で子宝に恵まれた。
一発だった。
義父は散歩ついでに安産祈願の神社で参拝してくれていたらしく、そのためだろうと言われている。
ここで、義両親からだけでなく、妻からも誤解を受けていることが発覚した。
妻がしばらく実家で生活することにしたのである。
言い分としては、つわりで夜中にオエオエして起こすことになるとか、子どもが産まれたらしばらく夜泣きで起こすことになるとか。
僕を起こして怒られることが相当なトラウマになってしまっているようだった。
いやいやいや、子ども欲しくて宿してもらってるのにつわりで起こされて怒るとかどこの畜生だよ。そんなのただのモラハラ夫じゃないか。
つわりも夜泣きも正常だし時間が解決することだからそれに対して僕が解決しなければと何らかの行動をするわけがない。
「寝てるから起こしたくなる」みたいな意味不明なことを言われて故意に起こされるから、なんとかしないと一生起こされる続けると思って解決するために説明していたわけであって、毎回起こされた理由を確認してから怒っていた。
元々僕は事なかれ主義だから付き合い始めのころはしばらく起こされても怒らず受け入れていたし、まして一過性のものとわかっているなら時間が解決するまで何もしない。どうしても自分が動かないと解決しないときしか基本的には動かないのだ。
それにちゃんと理由があって起こされたときに怒ったことも一度もないはずだ。
しかしそれを言うとまた、そうではないときにも起こされてしまう。
妻は「このときはこうでこういう場合はこう」という条件分岐が理解できない。
それは何度も何度も実証してきた。
だからこういうときは起こしてもいいけど、というのをあえて説明してはいけないのだ。
だからか。
妻はただ、「起こしたら怒られる」とだけ理解したのか。
理由もなく故意に起こしたときは怒られるけどそうじゃないときは怒られない、というのを妻は理解していないのだ。
妻のほうが先に起きて部屋を明るくしたとか物音を立てたとかテレビを見ていたとかで僕が怒ったことは一度もない。
故意に起こそうとして起こし、それが今起こさないといけないという理由があってのものではなかったときだけ、僕は怒っている。
そうじゃないとそもそも怒る理由なんてない。
だからつわりも夜泣きも、僕が怒るはずはない。
でも、それを伝えることはできない。
妻には理解できず、また理由もなく起こされるようになるから。
なんだこれ。
思考がループしてる。
どうしてこうなった。
故意に起こそうとしたわけじゃないなら怒らないし、理由があって起こされたときにも怒らないよ。
僕は元々起こされて怒るようなタイプではない。
なんて言い方するとまた理由もなく起こされるだろうな。
頻繁に理由もなく起こされるから起こるんだ。
って、これは何度も言ってるな。
なんでこれで伝わってないんだ。
どうして理解できないんだ。
どうすればいい。
なんて言えばわかってもらえる。
誤解なんだ。
僕は怒らない。
いや怒らないと言ったらまた起こされる。
くそう。
困ったときは頼れる友人たちに相談するに限る。
自分だけじゃ解決できないことが多すぎるんよ。
また頼らせてもらう。
すると面白いことがわかった。
妊娠中に妻が実家に帰ることはわりと一般的なんだとか。
いざというときに仕事で家にいなかったりどうせ家にいたとしても何もできない夫より、実家の両親のほうが頼りになるらしい。
そりゃあそうだろうけども。
でも、そうか。一般的なのか。
聞いてみると妻が産まれるときにも義父は仕事が忙しくて義母は妊娠期間を実家で過ごしていたとか。
そうか。そういうもんか。
ちょっと落ち着いた。
でも夜泣きが終わるまでってことは、僕は自分の子の夜泣きを経験することができないのか。
しかも勉強机にもなるベビーベッドを提案してくるあたり、小学校とか結構大きくなるまで実家で育てることも考えているようだ。
あれ。
僕のポジションは何だっけ。
父親って何だっけ。
まあ家族の形なんて家の数だけあるか。
うん。
…うん。
……んん?