4年近く同棲していたのに生活リズムの不一致で新婚早々妻と別居した話(8)
やれるだけのことはやった。
それでダメだったんだ。
なら、僕にできる残された手段は、ひとつだろう。
リセットだ。
機械のトラブルだって物理的な故障でなければ再起動で何とかなることは多い。
ストレスに対する受動的な反応として知られるのは4Fだ。
Freeze、Flight、Fight、Forfeit、すなわち凍結、逃走、闘争、放棄である。
トラウマ反応としてForfeitではなくFawn(迎合)と言われることもある。
能動的に問題解決を行うためのフレームワークとして使っても問題ないだろう。
4Fはあくまで受動的な反応なのでFreezeは固まって何もできない状態だが、それ以外は能動的に選択することもできる。
放棄はリスクマネジメントで言うところの受容、そのままを受け入れる。
問題解決のために積極的に動き現状を変えようとするのが闘争。
妻が寝てから自分が寝るようにしようなど相手に合わせるのが迎合。
のように当てはめることはできる。
残りは、逃走だ。
逃げるという選択肢は、常にあるのだ。
逃げるというのは決して悪いことではない。
時間が解決するような問題ではないのだ。
逃げちゃだめだなんて価値観を持っていたら、僕はとっくに生きていない。
逃げることは身を守るための最大の手段だ。
だが、敵を見誤っていはいけない。
守るべきものを明確に定めておかなければならない。
本当は敵なんていないのだが、ストレスが極限になると守るべきものまですべてが敵に見えてしまう。
守るべきものは家族だ。
何を置いても死守すべきである。
リセットするとしても守るべきものも手放して行方を眩ますのではいけない。
その逃げ方は今は許されない。
妻のほうは前述の通り今すぐどうにかできるわけではないのでノータッチでいく。
リセットするのは妻ではなく、仕事だ。
仕事を辞めるのも悪くはないだろう。無闇に否定するような選択肢ではない。
だが、いきなり辞めるのは今の段階では少し極端だ。
まだその前にやれることがある。
仕事の負担が大きい、この数か月眠れていない、常にイライラしてしまいプライベートにも影響が出ている。
とすべてを仕事のせいにして会社に相談し、ついでに薬をもらう際に病院で発行してもらった診断書も提出し、半ば強制的に業務負荷を軽くしてもらった。
もちろんごたごたはあったが割愛する。
とにかくこれでひとまず仕事の負荷と眠れない問題は解決。
妻より後に寝ることで起こされる問題も回避できている。
妻には仕事のことも薬のことも言っていないが、僕が明らかに寝る前に薬を飲んでいることから何かを察してくれたのか、寝ている人を起こしてはいけないというのをようやく理解してもらえたようだ。
パソコンのBluetoothのマウスが操作できなくなったとかWi-Fiが繋がらないとかの本当に用があるときだけ申し訳なさそうに起こすようになった。
もちろん、用があるときに起こされて、僕が怒る理由はない。