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マッチングアプリで会った子にぼったくりバーに連れて行かれた話(6)

席について、乾杯して、飯を食って、すぐにゲームをすることになった。

いわゆるテーブルゲームというのだろうか、ワニの歯を押すと噛まれる昔ながらの玩具とか、五目並べを縦にしたようなやつとかをRがバーの隅から持ってきた。

さっき席に着くまでの間に見つけたと言っていたが、だとしても許可なく席に持ってきて遊び始めるのはいかがなものだろうか。

たまに本当に飾ってある玩具を自由に使ってもいいオサレカフェなんかもあったりするが、オブジェとかインテリアとか実は売り物だから触らないでくださいのほうがまだ多いだろうし、そうじゃなくても持って来るなら一言声をかけるものだろう。

勝手知ってる我が家と言わんばかりの振る舞い。
最近ここに来たことがあってこれで遊んだことがある、のであれば納得できる。
というかそれで確定だろう。

そこにはもう突っ込まないとすでに決めているのだ。
もし店員に何か言われてもそのときにごめんなさいで済む話だろう。
僕も真面目くんではないので細かいことは気にしない。

さて、ゲームをしようという提案だが、僕にはこれを断る理由は特になかった。

相手が自信を失ってしまうくらい自分のほうが圧倒的に強い、という場合を除いて、ゲームというのはろくに話をしなくても一定のレベルまで簡単に仲良くなれる。

もちろんいつまでもゲームばかりしていたところでそれで相手を落とせるなんてことはまずないが、小休憩中やゲーム後はその前より明らかに心が開けている状態で会話ができるようになる。

また、ゲーム中に会話が途切れても不自然ではなかったりゲーム自体を会話のネタにできたりと、会話が苦手な人にはこの上ないお助けツールにもなる。

そして今回Rから提案されたゲームのチョイス。
いわゆる小さいころに遊んだ系である。

幼少期の思い出話は相手の心を開かせるネタとして強力に機能する。
相手からその話を聞ければある程度心を開いてもらえたと判断できるし、自分から微笑ましい思い出話をすれば相手の警戒心を緩めることもできる。

ゲームのメリットはそれだけではない。
合コンなんかでも鉄板で使われるように、負けたときの罰ゲームを付けたりするとさらに盛り上がる。

本来会話の中ではきっかけを掴みにくい質問やお願いに罰ゲームという大義名分を与えることで、布石を打ちながら徐々に核心に迫っていくトークを展開することなく流れを無視して一足跳びに相手の急所を突くことができる。
会話下手の恋愛初心者にはありがたい仕様だ。

ただし罰ゲームを提案することにはリスクが伴う。
合コンに参加するようなタイプであれば大概は周りの協力やノリで許されるが、マッチングアプリで会う人の中には罰ゲームがNGの場合もある。

罰ゲームを付けようと提案するだけなら自分のキャラ付けや嫌らしくない言い方を気を付けるだけで可能ではあるが、罰ゲームの内容は相手にとってNGでないものを見定める必要がある。
マッチングアプリではそうそうないが、たまに恋愛話NGの子もいる。

ちなみに限りなくNGを踏みにくい罰ゲームというのもある。
相手のNGを見極められなかった場合に、どんな相手にも有効に機能するものだ。
それはズバリ……。

なんて思っていたらRから罰ゲームも提案してきて、負けたほうがクライナーをイッキ飲みするということになった。
男側が提案すると酔い潰そうとしてるとか下心を疑われるところだけど、女性側はそういうの気にせず提案できるから気楽でいいね。

しかしテキーラとかならよく聞くがクライナーって何なのだろう。
あれを何杯飲んでも酔い潰れる気はしない。
だがまあショットグラスだし、僕が酒に詳しくないのもあるし、これも定番なのかもしれない。

ゲームにも罰ゲームにも快く了承して、ゲームを始めた。
もちろん僕が勝つ。

と思ったら負けまくった。
悔しいな、もう一戦。

テーブルゲームの勝った負けたなんて些事に過ぎない。
このゲームの目的はほかにある。
僕はそもそも相手を落とすという別のゲームをしているのだ。
これはテーブルゲームをすることで仲が深まったということにする儀式だ。

勝って終わろうが負けて終わろうが関係ない。

だからゲームでも僕は勝つ!!


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