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4年近く同棲していたのに生活リズムの不一致で新婚早々妻と別居した話(3)

妻には寝ている人を起こしてはいけないという概念はない。
朝も昼も夜も、普通に話しかけられる。

もちろん問題なのは夜だ。
昼寝は天気の良い日に風の吹き抜ける部屋で寝ているのが最高に気持ちよくて幸せを感じるという趣味程度のもので、そこで話しかけられたところで穏やかな気持ちで幸せな時間は継続される。

だが夜に起こされるとなると、話はまったく変わってくる。
結婚する前の一緒に住んでいた時期など、お互いにシフト制の仕事だったため、僕が休みで彼女が仕事という日は珍しくなかった。

そして彼女が飲み会などで夕食を食べて帰ってくるときは、僕は18時ごろにさっさと食事を済ませて22時ごろには寝ていた。
仕事の都合で生活リズムを調整できるとは言っても、普段の睡眠時間が足りていないので休日の昼寝は必要だし、夜も彼女のいない日くらいは本来の生活リズムに沿った時間に就寝したいのである。

事前に先に寝ているというLINEを送ったうえで寝るのだが、終電で日付が変わった直後くらいに飲み会から帰ってきた彼女はいつもの調子で話しかけてくる。
僕が寝ているとかはまったく関係なく、彼女が帰宅して僕がいるから話しかけるのだ。

前述の通り僕の価値観は、
基本的に寝ている人を起こしてはならず、
起こしてよいのは今起こさなくてはならない用事があるときで、
その起こす理由を伝えながら起こす必要がある。
というものである。

一応最後まで彼女の話を聞いてみても、なぜ起こされたのか理解できず、彼女は話し終えるとさっさと寝てしまい、僕は目が覚めてしまい2時や3時になっても寝付けないまま、なぜ起こされたのかと悶々としていたものである。

酔っぱらっていたからというわけでもない。
飲み会ではなくただ仕事の残業で帰りが遅くなった日にも、同様に起こされた。
そのたびに、僕は睡眠の重要性を説き、寝ているときに起こされると困るというのを伝えた。

僕も普通の家庭で生まれ育ったとは言えないので、常識がどうこうと言える立場ではない。
常識ではなく、二人のルールをこれから作っていく必要があるのだ。

それでも僕が言っていることが特別おかしいことではないというのを伝えるために本で読んだ知識を交えて説明したりネットの記事を参考として紹介したりもした。
そうでなくても、寝ている人を起こしてはいけないというエビデンスなんてなかったとしても、相手の嫌がることをしてはいけないのだ。

起こされるたびに、あの手この手で説明した。

わかったもう二度と起こさない!なんて不機嫌に言われたりするが、そもそも僕は必要なときは自分で起きるし起こされなくて困ることなどないので、起こさないと言ってくれるのであればじゃあそれでよろしくと返さざるを得ない。

このやり取りも何度かしており、Wi-Fiが繋がらないとか何かが壊れたとか今何かしてもらう必要があるってときには起こしてもいいよ、と訂正したことはあるが、それでまた今じゃなくてもよい「聞いて聞いて今日ね」で起こされるので、あえてこの場合は起こしてもよいという状況なども伝えなくなった。

しかし結局、また起こされるのだ。

一度だけ意趣返しに、夜中に用もなく彼女を起こしてみたことがある。
やり返すというのは問題の解決策としては愚の骨頂なのだが、そのときは冷静な判断ができなかった。
自分は起こされて眠れなくなってるのに自分だけすやすや眠りやがって、と恨めしくなりやってしまった。

結果、怒ることもなく普通に起きて、洗濯を始めて、また寝た。
完全なる敗北。
起こされることを何とも思っていないのだ。

そりゃあ理解し合えないはずだ、と腑に落ちてしまった。

何をすればわかってもらえるのか。
赤ちゃんの夜泣きのような時間が解決するものではない。
何らかの行動をして解決しなければ、一生起こされ続けることになる。
もういい大人なのだ。

もしも自分の子どもが「聞いて聞いて今日ね」で起こしてきたらどうだろうか。
普通に起きて、話を聞きながら寝かし付ける気がする。
仕事より優先度の高い大事なコミュニケーションだ。
これだって子どもが大きくなると自然となくなるだろうから、解決しないと一生起こされ続けるなんてことはない。

しかしもし、中学生になっても高校生になっても起こされ続けたらどうだろう。
やはりこれも、普通に起きて聞くように思う。
いつまでそうしてお話をしてもらえるかわからないからだ。

彼女はそうして育ったのかもしれない。
大事な大事な一人娘だもんな。
ご両親からも、だから大事にしてくれと頼まれている。

なら、仕方ない。

のだろうか。

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