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星の王子様 読書記録 第14節 点灯夫との出会い

星の王子様の著作権は2005年に切れました。ここは私のフランス語学習の場であるとともに、文学を研究する場です。他の事に今夢中になっていますから、ちょっと急ぎ足です・・・。

La cinquième planète était très curieuse. C'était la plus petite de toutes. Il y avait là juste assez de place pour loger un réverbère et un allumeur de réverbères. Le petit prince ne parvenait pas à s'expliquer à quoi pouvaient servir, quelque part dans le ciel, sur une planète sans maison ni population, un réverbère et un allumeur de réverbères. Cependant il se dit en lui-même :

 5番目の惑星は興味をそそられるものだった。今までで最も小さな星だった。一人の点灯夫と一本の街灯があるのに、ちょうど十分な場所だった。王子様は、宇宙空間の中のどこかで、ほかに家もなければ人間もいない場所の、点灯夫と街灯が、一体何の役に立っているのか、理解することができなかった。

🌈

🌈単語
✅allumeur

♢他動詞
①・・・に火をつける、点火する
curieuse
♢形容詞 curieuxの女性形
①好奇心にあふれた、知りたがる、見聞きしたがる
②詮索好きな、物見高い
③(多く名詞の前で)好奇心をそそる、興味深い;珍しい、奇妙な
✅réverbère

♢男性名詞
①街灯
✅loger

♢自動詞
①<~+場所>・・・に泊まる、住む
②<~+場所>[家具などが]・・・に置かれる、収まる
parvenait
♢parvenirの条件法第3人称
①<~à qc//~+場所>(努力して)[人が]・・・に達する、到達する


<Peut-être bien que cet homme est absurde. Cependant il est moins absurde que le roi, que le vaniteux, que le businessman et que le buveur. Au moins son travail a-t-il un sens. Quand il allume son réverbère, c'est comme s'il faisait naître une étoile de plus, ou une fleur. Quand il éteint son réverbère, ça endort la fleur ou l'étoile. C'est une occupation très jolie. C'est véritablement utile puisque c'est joli.>

🌈
 
多分、この人は馬鹿なんだな。だけど、王様や、自惚れ男や、実業家や、呑み助ほどではないな。少なくとも、彼の仕事には価値がある。彼が街灯に火を灯すと、まるで一つの星がこのうえさらに生み出されるかのよう、あるいは、一本の花がさらに生み出されるかのようだ。彼が街灯を消すと、その花や星は眠りにつく。とても美しい仕事だ。美しいから、本当に役に立つんだ。

🌈単語
✅absurde
♢形容詞
①不合理な、ばかげた、愚かしい;非常識な、常軌を逸した
②[哲学]不条理な

✅sens
1⃣
♢男性名詞
①感覚、知覚(機能)
②(複数で)官能 性欲
2⃣
①(語、文、記号などの)意味
②意義、価値、存在理由
✅moins
♢副詞
1⃣((peuの劣等比較級))
①((動詞を修飾して))より少なく、さほど・・・ない
②((形容詞、副詞の劣等比較級を作って))より・・・でない
♢熟語
✅au moins
à tous le moins
少なくとも せめて
✅naître
♢熟語
❄faire naître
(1)生み出す
(2)生じさせる、引き起こす;創始する
✅occupation
♢女性
①(人の時間を占める)用事、仕事;活動
②占領、占拠;占有;居住
✅plus
♢熟語
❄de plus
(1)((数量表現のあとで))・・・だけ多く、さらに・・・だけ
(2)((文頭、文末で))そのうえ、さらに

Lorsqu'il aborda la planète, il salua respectueusement l'allumer :
<Bonjour. Pourquoi viens-tu d'éteindre ton réverbère?
--C'est la consigne, répondit l'allumeur. Bonjour.
--Qu'est-ce que la consigne?
--C'est d'éteindre mon réverbère. Bonsoir.>
Et il le ralluma.
<Mais pourquoi viens-tu de le rallumer?
--C'est  la consigne, répondit l'allumer.
--Je ne comprends pas, dit le petit prince.
--Il n'y a rien à comprendre, dit l'allumeur. La consigne c'est la consigne. Bonjour.>

🌈
星に近づいた時、彼は点灯夫に敬意をこめてあいさつした。
<こんにちは。どうして今街灯を消したのですか?>
<指示だよ。点灯夫は答えた。こんにちは。>
<指示って何ですか?>
<街灯を消すということさ。こんばんは。>
そして彼は火を灯した。
でも、どうして今火を灯したんですか?>
――指示なんだ。点灯夫は答えた。
――理解できないな。王子様は答えた。
――理解することなんて何もない。点灯夫は答えた。指示は指示さ。こんばんは。

🌈単語
✅aborda
♢他動詞 aborderの単純過去形 第3人称
①・・・に(近づいて)話しかける、声をかける
②[問題、テーマ]に取り掛かる、手を付ける
③[場所、土地]に近づく、・・・を臨む;[新たな段階]にさしかかる
✅consigne

♢女性名詞
①(手荷物の)一時預かり;一時預かり所
②(容器などの)デポジット制度;保証金
③命令、指令
④外出禁止、禁足;立ち入り禁止
respectueusement
♢副詞
敬意をこめて、丁寧に、恭しく

Et il éteignit son réverbère.
Puis il s'épongea le front avec un mouchoir à carreaux rouges.
<Je fais là un métier terrible. C'était raisonnable autrefois.J'éteignais le matin et j'allumais le soir. J'avais le reste du jour pour me reposer, et le reste de la nuit pour dormir…
--Et, depuis cette époque, la consigne a changé?

🌈訳
そして彼は街灯を消した。
それから彼は赤いチェックのハンカチーフで額をぬぐった。
僕は、いやまったく、ものすごい仕事をしてるんだ。
かつては理にかなっていた。僕は朝には灯を消し、夕べにはともした。日中の残り時間は休息にあてたり、夜の残り時間は睡眠に当てていた。
そして、そのころから、指示は変わったの?

🌈単語
carreaux
♢男性名詞 carreauの複数形
①窓ガラス;(ガラスのハマった)窓枠、窓
②タイル;タイル張り
③格子縞、基盤稿、チェック
épongea
♢他動詞 épongerの単純過去 第3人称単数形
①[液体]を吸い取る、ふき取る
♢代動名詞
s'éponger
①(自分の)体をふく
②<s'~ qc>(自分の)・・・をふく
✅époque
♢女性名詞
①(歴史的区分としての)時代、時期
②(芸術史上の)時代
③時期、頃
front
♢男性名詞
①額、おでこ
métier
♢男性名詞
①職業、仕事;
②職務、役目
mouchoir
♢男性名詞
①ハンカチーフ、ハンカチ
②ハンカチーフプリント;ハンカチーフプリントの布
terrible
♢形容詞
①恐ろしい、ぞっとする
②耐え難い、すさまじい、ものすごい
③[人が]攻撃的な、騒々しい、不愉快な
④(程度、量を強めて)かなりの、相当な
⑤[話]並々ならぬ、情け容赦ない
♢副詞
素晴らしく、すごく
♢男性名詞
①困ったこと、残念なこと
②冷酷な男
③やんちゃ坊主、手に負えない子供
✅là
♢間投詞
①(なだめたり慰めたりして)さぁ、まあまあ
②(話)(直前の言葉を強調、反復して)そうさ、ほら、いやまったく

--La consigne n'a pas changé, dit l'allumeur. C'est bien là le drame! La planète d'année en année a tourné de plus en plus vite, et la consigne n'a pas changé!
--Alors? dit le petit prince.
--Alors maintenant qu'elle fait un tour par minute, je n'ai plus une seconde de repos. J'allume et j'éteins une fois par minute!
--Ça c'est drôle! Les jours chez toi durent une minute!
--Ce n'est pas drôle du tout, dit l'allumeur. Ça fait déjà un mois que nous parlons ensemble.
--Un mois?
--Oui. Trente minutes. Trente jours! Bonsoir.>

🌈
指示は変わっていない。点灯夫は答えた。まったくもって悲劇さ。惑星は1年ごとに段々と速く回転しているっていうのに、指示は変わらないんだ!
ーーそれで?王子様は言った
ーーそれで、今じゃ1分につき1回転さ。僕は1秒間しか休めないんだ。1分に一度火を灯しては消すんだ!
ーーそりゃおかしいな!君んちは1日が1分なの!
ーーおかしいことなんて全くないよ。点灯夫は言った。私たちが互いに話を始めてからもう1か月がたった。
ーー1か月?
ーーうん。30分。30日!こんばんは。

🌈単語
année
♢女性名詞
①(暦の上の)年、1年;(惑星の)1年
②(数量表現とともに)…年間
③(ある特定の基準により定めた)年;年度;期間
④(多く序数詞とともに)…年目;学年;歳
❄d'année en année
=d'une année à l'autre
年年、年ごとに
durer
♢自動詞
①<~+時間>・・・だけ続く、継続する、持続する
②長く続く、長引く
drame
♢男性名詞
①惨事、悲劇的事件

❄de plus en plus
ますます、次第に

Et il ralluma son réverbère.
Le petit prince le regarda et il aima cet allumeur qui était tellement fidèle à la consigne. Il se souvint des couches de soleil que lui-même allait autrefois chercher, en tirant sa chaise.
Il voulut aider son ami :
<Tu sais.. je connais un moyen de te reposer quand tu voudras…
--Je veux toujours>, dit l'allumeur.
Car on peut être, à la fois, fidèle et paresseux.

🌈訳
そして、彼は街灯に火を灯した。
王子様はそれを見て、とても指示に忠実なその点灯夫を好きになった。彼は彼は椅子を引っ張って、かつて彼自身が探していた日の入りを思い出した。
彼は彼の友達を助けたかった。
ねえ。僕は、君が休みたいときに休める方法を知っているよ。
――僕は何時だって休みたいよ。点灯夫は言った。
人っていうのは、真面目であり、それと同時に、怠け者でもあるらしいからね。

Le petit prince poursuivit :
<Ta planète est tellement petite que tu en fais le tour en trois enjambées. Tu n'as qu'à marcher assez lentement pour rester toujours au soleil. Quand tu voudras te reposer tu marcheras… et le jour durera aussi longtemps que tu voudras.
--Ça ne m'avance pas à grand-chose, dit l'allumeur. Ce que j'aime dans la vie, c'est dormir.
--Ce n'est pas de chance, dit le petit prince.

王子様はつづけた。
君の星は余りにも小さくて、3歩で一周できるね。君は太陽が出ているうちはいつも、かなりゆっくりと歩きさえすればいい。休みたい時は歩くんだ。そうすると、好きなだけその日は長く続くよ。
ーーそれは私には大したことじゃないよ。点灯夫は言った。私が人生で好きなこと、それは眠ることさ。
どうしようもないんだね。王子様は言った。

🌈単語
enjambées
♢enjamber
♢他動詞
①[障害物など]をまたぐ、飛び越す
②[橋などが川や谷]にかかる
③・・・を急いで通り過ぎる;無視する
lentement
♢副詞
ゆっくりと、のろのろと、徐々に

🌈構文
n'avoir + qu'à + inf. ・・・しさえすればよい

--Ce n'est pas de chance, dit l'allumeur. Bonjour.>
Et il éteignit son réverbère.
<Celui-là, se dit le petit prince, tandis qu'il poursuivait plus loin son voyage, celui-là serait méprisé par tous les autres, par le roi, pa le vaniteux, par le buveur. Cependant c'est le seul qui ne me paraisse pas ridicule. C'est, peut-être, parce qu'il s'occupe d'autre chose que de soi-même.>

ーーどうしようもないよ。点灯夫は答えた。こんにちは。
それから彼は街灯を消した。
<彼は、彼は長い旅を続けている間に、王子様は思った。彼は、他の人たちから軽蔑されるだろうな、王様、自惚れや、呑み助、おかしな人たちから。
でも、唯一彼は馬鹿ではない人のように見えたな。多分、彼は彼以外のことに忙しいからだろう。

🌈単語
tandis que
♢接続詞・句
①(同時性)…しているときに、する間に
②(対立)…する一方、に反して、であるのに
③(古風)…する限り

méprisé
♢他動詞 mépriserの過去分詞
①・・・を軽蔑する
②・・・を軽視する;に無頓着である。

Il eut un soupir de regret et se dit encore :
<Celui-là et le seul dont j'eusse pu faire mon ami. Mais sa planète est vraiment trop petite. Il n'y a pas de place pour deux…>
  Ce que le petit prince n'osait pas s'avouer, c'est qu'il regrettait cette planète bénie à cause, surtout, des mille quatre cent quarante couchers de soleil par vingt-quatre heures!

彼は後悔のため息をつき、そしてまた思った。
彼は唯一、僕の友達になることのできる人だった。でも、彼の星は本当にとても小さい。二人がいられる場所がない・・・。
王子様があえて認めたくなかったこと。それは、とりわけ、24時間に1440回、日の入りがあるおかげ、神に祝福されたあの惑星を名残惜しんでいたということだった。

🌈単語
✅avouer
♢他動詞
①[事実]を認める;[罪、弱点など]を告白する、白状する;[秘密など]を打ち明ける。
②[目的語なしに]自供する、反抗を自白する
✅bénie
♢他動詞
①[神が]・・・を加護する、に恵みを垂れる
②・・・に神の恵み「加護」を祈る、を祝福する
③・・・を祝別「祝福」する、奉献する;に聖水をかける

✅surtout
♢副詞
①とりわけ、ことに、特に
✅soupir
♢男性名詞
①ため息
②[文章]もの悲しい歌[音];甘いささやき、息吹

追記:今更ですが、ここは仕事批判が書かれています。仕事が大好きな人や、仕事に+思考を持っている人は読まないでください。

🌈文学 読解

 今回は点灯夫のお話。皆さんもこうした真面目な人は嫌いじゃないだろうと思う。一体いつ寝てるんだ。

 星の王子様に出てくる大人たちは、王子様も含め、そういった突っ込みどころが多い登場人物たちだよね。酒はどこから持ってくるんだとか、どうやって星から収益が入るんだとか。火を灯すって、そんな頻繁に灯して、灯油はなくならないのかとか。


 さて、真面目に話をすると、今回の大人はかなり勤勉な大人だった。悪く言えば、「指示待ち人間」というやつだ。

 彼は指示があるから点灯したり、消灯したりするんだという。だから、指示とはきっとこれだ。
  
  昼(朝)に消灯すること。夜に点灯すること。

 だが、今回サンテグジュペリが言いたかったのは、指示待ち人間が悪いということじゃない。「仕事」というものへの批判である。

 おそらく日本人の大多数の人間が大切に思っているこの「仕事」でさえ、サンテグジュペリにとっては批判の対象なのだ。

🌈仕事とは何か


仕事の簡単な歴史

 まず、「仕事」とは何かを考えてみよう。
原始時代、私たち人間はマンモスなどの巨大生物を狩ることや、木の実などを採ったりすることが仕事だった。そして弥生時代に入ったりすると、稲作が始まった。

 時代を経て、人によっては農業から解放され、サービス業や知的な専門職に従事するようになる。

 しかし、どんなに変容しても、「仕事」とは、自分の食い扶持を確保することなのだ。実は、犯罪に手を染めることによってお金を稼ぐのも、人から財産を奪うのも、仕事の一つなのである。

 貨幣経済になってからは、食い扶持と交換できる手段であるお金を求めるようになった。

仕事を大切にする人に、仕事とは何かを聞いてみたとすれば

 「そんなものは仕事じゃない!」という言葉がある。こういうことを言う人に、仕事とは何かを聞いてみたいと思う。

 そうすると、たいていこういうあいまいな言葉が返ってくる。

 「犯罪に手を染めるのは悪いことだ。人の役に立つことをするのが仕事だ。」
 
 ところが、これには大きな反論がある。森林伐採などは、仕事だけれども、環境を大いに破壊している。公害、薬害、医療過誤、パワハラ、アカハラ、モラハラ、そういったものはみな仕事の過程で生まれている。ゲーム依存やスマホ依存、アルコール依存や、薬物依存。肥満。虫歯。メタボ。オーバードーズ。教育はある意味洗脳に近い。仕事をしたからといって、必ずその行動が人の役に立っているとは言えない。

 まぁ、100歩譲って、仕事とは人の役に立つものであるとしよう。

 しかしここにはとてつもなく恐ろしい見落としがある。その仕事の成果は、悪い人間たちにとっても役に立ってしまうということである。したがって、半分この世界に悪い人間がいるとすれば、彼らの役にもたってしまうのである。

 人はしばしばこうした誤謬を侵す。世界のために。皆さんのために。網羅的に言うことで、悪人をごっそりと含んでしまうのだ。しかしなぜかその時は、悪人なんて一人もいないという意味が込められている。

 生まれてきた赤ちゃんが死ぬのを、将来前途有望な子が死んだと美化する。極悪人になっていたかもしれないのに。死は人を美化するのだ。

 とりあえず、仕事というのは、結局食い扶持を稼ぐための手段にしかすぎない。そんなに崇拝するものではない。仕事にいいも悪いもない。

 だけど私個人は、日本人の多くが[仕事教]の信者になっているかに見える。仕事は神であり、仕事を軽んじている人間は軽蔑に値する。それは神を侮辱したことと同じだからだ。そして、某宗教団体のように、忌避という行動をとられたりすることもある。いじめに発展するのだ。

 なぜ仕事が神となるのか。日本の昔の物語を読むと、なんかいいことしたら神様がなんかいいものくれた系の話が多い。見返り話である。仕事をすれば、お金がもらえる。飯が食える。みんなからそれなりに尊敬される。これほどありがたい神はいない。だから、仕事を絶対視するのである。これに批判を言う私のような人間は、まぎれもなく異端児である。

 だが、私からすれば、仕事をしている人間は、大便をしながら目の前を掃除している人たちに思えてならないことがある。

 とまぁ、ここまで仕事を非難するとやばいが、幸い私は全然注目株じゃないから、大丈夫。立場がないって楽だなぁw

 でも、更にとどめを刺してみると、今、あなたが大切だと言っている仕事は、将来なくなってしまうかもしれない。ここで、私は更に疑問を感じる。

 その仕事が大切なら、どうしてその仕事がなくなるようなことをするんですか?また、その仕事がなくなっても、どうしてあなたはその仕事をし続けないんですか?

 答えは一つ。それでは稼げないからである。

 ほら。やっぱり仕事が大切なんじゃなくて、仕事を通して得られる利益が大切なんじゃないか!結局自分が大事なんじゃないか!たとえAIにとってかわられたとしても、あなたがしっかり行動した分は、人の役に立っているのではないだろうか。

 そう、皆が忘れていることは、大切なのは仕事ではなく、結局は人間性だということ。人間性のない仕事人は、結局はロクな仕事をしていないのだ。中核となる仕事自体はできるかもしれないが、却って社会問題を発生させることの方が多い。

 仕事が大切っていう人は、ここをごまかしていると私は思う。それに、そんなに仕事が大切なら、今すぐとっても大変で、とっても苦労するけれども、非常に人々の役に立つ、苦しい仕事に切り替えてみてはどうか?というと、そそくさとにげていくだろう。それは私の仕事ではないといって。自分にはやらなければならない仕事があるといって。

 逆に、今では子供を産み育てるということが喫緊の課題となっており、むしろ子育ては仕事であると考えている。他のどんな専門職より、子供を育てることの方が先決だと言うばかりに。これがちょっと昔まではないがしろにされていたのだから面白いものだ。これが仕事と言われることになったとしたら、じゃあ、仕事が大切だと声高に叫んできた、あなたたちの方が今まで仕事を馬鹿にしてたんじゃないのか?と逆に切り返したくなる。

 ところで、AIが登場し、将来は多くの仕事がAIに奪われると言われている。俳優の仕事がAIに奪われると言って、大きなデモが起きたのは有名な話だ。

 これまで多くの仕事が死に、逆に多くの仕事が生まれてきた。

 仕事も結局は[虚」である。「虚」であるがゆえに変化する。
人は「虚」を追いかけるもの。人は「虚」を崇めるもの。だから、「虚」は神になる。拝金主義者。アイドル崇拝者。仕事崇拝。

 「虚」こそが神となるのだ。

 結局、人の心が神を作っている。そして、その神を守っている。それを守ることで、自分達を守っているのだ。

 私が仕事として強いイメージを持っているのは、炭鉱労働者だ。
しかし、炭鉱も、炭を掘りつくしてしまえば、仕事がなくなる。

 日本人は、企業戦士と言われた時代を頂点として、「仕事」というものに絶大な価値を置いてきた。しかし、私からすれば、「仕事」がそんなに大事なら、マンモスやナウマンゾウをちゃんと生かしておけばどうだったのかと思うことがある。

 (多分)あんたらが仕事したせいで彼らは死に絶えたのである。あんたらが仕事をしたせいで、「炭」は取りつくされたのである。そして、大切な仕事であった炭鉱業はすたれた。「仕事」が大切なはずなのに・・・。

 結局、仕事というのは、ドラえもんのポケットみたいに、何だって人の都合で入れ込めるものだし、取り出せるものなのである。また、時代によって変化するものなのだ。

 それがお前の仕事だ。それもお前の仕事だ。ああ、あれもお前の仕事。

 こうして結局面倒なこと、雑用がドンドン仕事の範囲として入れ込まれ、押し込まれて行くのを経験したことはないだろうか?同じ仕事が存続する間も、結局は名前のある仕事から名前のない仕事まで、ごまんと存在しているのである。

 実は仕事の範囲なんて、あってないようなものなのだ。私が驚愕するのは、こんなにめちゃくちゃであいまいなモンスターのような言葉を、今まで平然と使ってきた人たちの神経である。

 私がサンテグジュペリなら、この言葉を平然と使っている人を見ると、帽子の中身が見えない人に見えてしまうのだ。

 私なりに言えば、収益獲得に向けて必要な一切のこと。これが今のところの仕事の定義だ。不動産業なんて、貸主は借主に貸して後はある程度放置しておけばいい。これも仕事だと言われるのである。

 それに、結局今は、風俗営業者たちやオレオレ詐欺者たちのほうが真面目に働いている人間たちよりもずっと稼いでいるわけだし、まともな仕事も、まともだと思われているだけで、社会が無駄に回転しているようにしか思えなくなってきた。専門職なんて言うのも昔と比べればかなり増えたのに、なぜか世の中は疲弊していく一方である。結局みんな、本当に大切なことから目を背けて、仕事っていうのに逃げているんだなぁって思うことがある。人は弱い生き物。神様によって、自分を守っているのだ。そして、その仕事では稼げなくなった時、自分に何の見返りもない神などに、もはや用はなくなるのだ。非常に勝手なものである。

 そして、その行動をいつまでも続けていると、却って周りから馬鹿にされるようになる。だから、王子様は、点灯夫を、周りの人たちから馬鹿にされるだろうな…と予測するのだった。

 だけど、唯一友達になれそうな人だったとも言っている。さて、王子様の言う友達とはいったいなんだったのだろうか?星の王子様の一つの重要なテーマ。それは、「友達とは何か?」ということだ。これは狐の話でも出てくるだろう。


 このように、「仕事」というものに価値を置く人間たちに対して、一石を投じてみたのだが、私が、この小説を翻訳しているのも、立派な翻訳という仕事である。仕事を崇拝する人々にとって、この行動は馬鹿にはできないだろう。しかも無報酬でやっているのだ。元々の翻訳本には、明らかな誤訳があり、これで収益を獲得している人の翻訳を修正できているようにも思う。(また後で見返すけどw)

 私は「仕事」をしている。それは間違いないと自分でも思っている。その質、内容はともかくとして。一生懸命していることは確かだろう。でもひょっとすると、あんたのやっていることは、「趣味」だ。仕事じゃない。と言われてしまうのではないだろうか。趣味と仕事の違いは?とこれはまた別の話。

 で、どうしてここまで「仕事」をけちょんけちょんに言ってきたか。サンテグジュペリも、「仕事」というものにそこまで重きを置いていないことはこの小説を読めばよくわかる。

 美味しんぼの山岡史郎がどうしてあんなに仕事に対して適当だったかも、私個人は、慧眼だなと思っていたりする。

 寅さんがどうして労働者を馬鹿にするのか。彼なりの感覚がある。


 この点灯夫の話では、「仕事」は結局変化するもの。でも、「指示」は変化しないと言っている。例えば、電子メールが出て、数十年たっても、なかなか電子メールでやり取りをするという通達が下らない。そのために、郵便物でかなり無駄な出費が嵩む。

 だからといって、これでいいじゃん?と勝手に個人がメールで送るように切り替えることは許されない。そうすると、上司からこう怒られるだろう。
 
 「それはあなたが決める事じゃない!!!」

 そうすると私はきょとんとして上司を見て、こう切り返すかもしれない。

「ええ。私が決めることじゃないのはわかっています。もし私が仕事の内容や手順を決める事が出来るのなら、私がメールではなく封筒で送れと言えば、またすぐに戻るでしょう。もし私が、みんながメールで連絡を取り合うようにと決めれば、皆それに従うでしょう。でもそういうことはありませんから。仕事は、結局周りの流れによって変化する。言ってしまえば、決めているのは私ではなく、周りの流れなのです。仕事は自然と周りの流れによって消滅する。でも、それでも無理にし続けようと思えばし続けることはできます。でも、やっぱり誰かがやめ始める。はじめはいつだって、その最初の一人が必ず存在する。私は、その周りの流れにのっかった最初の一人だっただけです。」と。

 上からの指示があるまで待つように、という上司の思いがあるのはよくわかる。しかし、結局は上からの指示も、その周りの流れに従って決められるのである。もちろん、いきなり一人が勝手な動きをすると、誰かが不意打ちをくらう。だから、指示を待つのは大切なことだというのも重々承知しているつもりだ。
 しかし、指示は、場合によっては何時までも変わらないものなのだ。

 これを考えると、仕事をしていないのは、指示を出している上のほうなんじゃない?という感じもしてこないだろうか(笑)。

 とりあえず、仕事の実体と、指示に、多かれ少なかれ、「ずれ」が存在するのは確かである。どんな仕事でも、指示と実際の内容に「ずれ」はつきものであり、この「ずれ」がしばしば様々な問題を引き起こす。点灯夫は、これを「悲劇」と表現しているのだ。人生の「悲劇」とは、こうした「ずれ」から発生するものである。

 この点灯夫は、「指示」という「虚」に取り付かれ、実際に流れるこの世界に自分をいつまでも合わせることができない人間を描いていたのである。この点灯夫は、自分の頭で考えることができないのだ。あるいは、自分の頭ではおかしいと思っていても、指示の方を優先してしまうのである。これが先ほど架空の世界で私に怒ってきた上司だ。(ちなみに、メールは外とのやり取りなので問題になりうる可能性は高いが、事務所内で絶対に必要ないと思われるような仕事も多くある。)

 では、指示とは果たして「虚」なのだろうか?そう、虚であることは間違いがない。結局「指示」とは「人の言葉」である。人の言葉は常に嘘だ。だから、「虚」である。事実を決めるのは常に事実であり、「人の言葉」ではない。事実に合わせるのではなく、「人の言葉」にばかり合わせて生きていく人間は、この世界の大切なものを、たくさん見落として生きていくだろう。もはや、この「指示」は、「大嘘」というレベルにまで至っているのである。

 私たちは、言葉をしゃべった瞬間に、事実と違うことをいえば、それが「嘘」だと考えるのが普通だ。嘘かどうかの判断基準は、口を開いて言った時だ。しかし、それは違う。しゃべったことが、いつまでも人の頭に残り、事実の方がどんどん変わって行ってしまい、その言葉と違う現実が出てきてしまえば、結局嘘を信じていることと大差ないのである。皆はこの「嘘」のことを、古い情報だ、と言い換えている。

 多くの大人たちは、「仕事」を大切にしていると同時に、「仕事」から逃れることはできない。そして仕事を理由として、世界のありようからは目を背けている。世界がボイル化しているのに、彼らはその世界に自分の行動を合わせることができないのだ。彼らは、仕事という、巨大で、自分達をひきつけてやまない「嘘」をいつまでも崇拝し続けているのである。

 マックスウェーバーは宗教を「行動規範」であるといった。

 人に宗教あれば、その通りに行動してしまうのだ。

 多くの人間は、いつまでも、「仕事」が大切だから・・・といって、「仕事」に逃げており、実際の世の中の動きを見ることもなく、指示さえ聞いておけばいいや。めんどくせ~という感覚になっているのである。

 だから、「仕事」を優先して家庭を顧みないと言う人間や、仕事優先で、ネグレクトをする親もいるわけだ。

 これが大抵の仕事人の実体である。

 真面目な人間は、怠惰な人間が多いと言うのはご存じだろうか?真面目と怠惰は表裏一体なのだ。そして、自分で考えるのがめんどくさいから、上の言うことを盲目的に聞くのである。

 上から命令する方からすれば、そりゃ真面目な人間は可愛い。言うことをそのままきいてくれるからだ。こうした共依存の関係は、案外強固である。

 王子様もこの点灯夫を好きになったように、滅私奉公な人間は私利私欲に走る人間よりも好感が持てる類の性格なのは確かであるけれども。

 点灯夫のこの言葉は、真面目さの真実を突いている。

人っていうのは、真面目であり、それと同時に怠け者でもあるらしいからね。

 私がもし、もう少しこの文をわかりやすく訳すとすれば、

 真面目な人っていうのは、怠惰な人でもあるからね・・・といったところか。

 例えば、鋼の錬金術師に出てくる、「スロウス(怠惰)」がいい例である。

 とにかく、子育てを重視し、人間を育てたいなら、仕事仕事!ではなくて、もっと広く、深く物事を見る目を養い、仕事以前の人間性を育てる努力が必要だ。

 

 

 

  



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