なぜ、部下(上司)とのキャリアプランニングの面談がうまくいかないのか?

Yahooをはじめ、1 on 1ミーティングの注目度が上がっています

タスクの進捗から他愛もない雑談、中長期的なキャリア相談と、話される内容は様々かつ、その時々に応じて多様です

私が勤めていた会社でも導入していましたが、うまく活用できていない、キャリアについて相談しても役立つフィードバックが得られない、など課題の声もよく耳にしました。

ここでは、中長期的なキャリア相談に絞って、なぜうまくいかないのか、どうしたらよいのか、について、実際私が所属していた部署(といっても3桁人規模)の組織改革、特にキャリア育成プログラムの立案・導入を行った際の知見をもとに紹介しようと思います

なぜキャリア相談が難しいのか

キャリア育成の難しいところは、様々ありますが、以下の点が大きいと思います

1)人それぞれキャリアの思い描き方は非常に異なる
2)コーチングする側にキャリアや育成の知識・経験が必要
3)日常業務が忙しく、ちゃんとやろうという風になかなかならない
4)キャリア育成は専門性が必要で、専門家によるサポートが必要だがそれがある環境は非常に稀で、個々人の経験に委ねられてしまっている

特に、やろうとおもってすぐにクリティカルに影響するのが、(1)のキャリア感のズレです。人それぞれどんな風なキャリアを描きたいのか、何を目指すのか、目指さないのか、お互いわかっているようで実は深層までわかっていることは非常に稀です

上昇志向の強い人もいれば、そうでないように見える人もいる。スキルにこだわる人もいれば、自分の人となりを気にする人もいる。

お互いの思考や気質を深く理解したうえで有益なアドバイスを贈ることができればよいのですが、ここがずれていると実際非常に難しいです

キャリア志向を分類する「VIPEモデル」

そこで、私は若手社員たちを相手にインタビューやワークショップを実施し、出てきたキャリア感を2つの軸、4つのタイプ、8つのサブタイプに整理するとスッキリ説明できることに気づきました。

これを各タイプの頭文字を取って、「VIPEモデル」と命名しました

スライド1

垂直軸は「何に対する価値・評価を意識するか。所属する組織への価値(value)か?とりまく人の評価(perception)か?」で、水平軸は「誰の目線を意識するか。外部・他者(external)か、自己・内面(internal)か?」です

VIPEタイプごとの特徴

例えば左上、Value x External のタイプの場合、会社における客観的なポジショニングや評価を気にします。わかりやすくいうと肩書や人事評価、表彰などです。いわゆる「上昇志向が強い」と言われるタイプです

右上のValue x Internalは組織にとっての価値という側面では同じですが、他社ではなく自己としてどのように認知・評価しているかです。わかりやすくいうと、組織に貢献できるスキルを持っている、組織に貢献している実感がある、という具合です。このタイプは肩書よりも、自分が役に立っていると思える実感の方を優先して考えますし、会社などの枠を超えて通用するスキルを重視します

左下のPerception x Externalは、組織からの目線ではなく、組織にいる「人」からどのようにみられているか、人に対する存在意義を重視します。業務における成績やアチーブメントよりも、人間性・性格・ひととなりに対する評価を気にします。人としての評価・評判が悪くなってまでも高い地位を求めることはないタイプです

最後の右下のPerception x Internalは、あくまでも自分が自分をどうみているか、自分に納得できているか、を重視します。所属する組織や周囲の人間の評価は気にせず、自分自身、または自分が大事にしている信念や人に対して、ちゃんとできているかを気にします。

いかに具体例を例示します。業界や組織風土によって、様々なタイプがいると思います。あくまで一例です

スライド2

VIPEモデルを使うと何がよいのか?


もしキャリアについて相談する相手が似たタイプであれば、お互いの考え方や、過去の経験から具体的に役立つアドバイスを贈ることはしやすいでしょう。似たような考え方でそれまでのキャリアを積んできた可能性が高いからです。

しかし、先ほどのマトリックスの対角線のタイプだった場合はどうでしょう?お互いの考え方が全く逆ですので、そもそも相手の考え方を理解したり共感することすら難しく、実体験に基づく有用なアドバイスを贈ることは、非常に難しいでしょう

しかし、このような志向タイプのミスマッチによる1on1は至る所で発生しています

一般的に、1on1は直属の上司部下や、あらかじめ決められたメンター、少数の人事担当者としか行われず、ミスマッチに気付かないまま、問題解決に至らないばかりか、上司や組織からの必要な支援が得られなかったり、不幸にも優秀な人材をリテインできず、人材流出につながったりするのです

VIPEモデルをどのように活用するとよいか?

そのような事態をできるだけ防ぐためには、まずはお互いがどのようなタイプなのか、理解し、有用なアドバイスができそうなのか、見極めましょう。

やり方は簡単です。お互い、自分が一番近いと思う型を選び、相手に共有するだけです。

異なるタイプであっても、経験豊富な人であれば、タイプに応じて必要なアドバイスを贈ることは人によってはできます

しかし、経験値がそこまでない、あるいはアドバイスが難しいようであれば、より理解が深い、似たタイプの人をメンターやコーチとしてアサインしてもらうと良いでしょう

その人のキャリア観にあった仕事やキャリアパスをしっかり組織として議論・検討し、継続的にサポートしつづけていくことができれば、キャリアミスマッチによる人財のパフォーマンス低下や流出は抑制できます

では、1on1でどのようなフレームワークでキャリア相談をすればよいのかについては、また機を改めて紹介しようと思います

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