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そろそろ40歳…、このままでいいのか

悩めるおっさん(1/3)

先日、誕生日を迎えて39歳になった。

「さんじゅう、きゅう…!」

そう考えると正気に戻った気がした。正気で生きてきたつもりだったけど、実は寝てたのか、俺。

「えぇ…、もう40の大台に乗るの…?」

なんてことを考えると、なんだかもやもやと霧が立ち込めてきて、ずずっと思いふけってしまい、心が沈んだ。なんかもう、終わりが近づいてるなぁ、と。40といえば、ほぼ人生の半分、折り返し地点だ。

令和に入り、時代が大きく転換している感じがする。事実、かつての大御所芸能人や有名人が亡くなったという訃報が頻繁に飛び込んでくる。最近で言うと、ラテン音楽の大家であるセルジオ・メンデスさんとか、子供の頃によくニュースで聞いたフジモリ大統領とか、ちょっと前では名優中尾彬さんも。みなさん80代でこの世を去った。

また統計的にも日本人男性の平均寿命が80歳くらいであることがわかっている。


死の影が忍び寄る。まだ足音までは聞こえずとも、その存在感は如実に増している。いや、死が恐いわけではない。けど、このままでいいのだろうかという不安が頭をもたげる。残された時間、どう生きるべきなのだろう。

そもそも、なんで不安なのだろう。僕はこれまで人が歩むレールには安易に乗らず、自分なりの考えのもと、自分が満足する道を歩んできたつもりだった。いらないと考えたものは思い切って捨て、自分にとっての最適化を常に図ってきた。もちろん、その判断には良し悪しがあるので不都合な部分は多分にあるけれど、自分で選んだ道、納得感を持って、それなりに満足な日々を送ってきた。

送ってきたつもりだった。

でもなぜだろう。

己の満足を突き詰めてきて、こんなに心がざわめくのは。

月が放つ光(2/3)

9月17日、ネットニュースには中秋の名月の話題が踊っていた。夜の19時ごろ、僕は家にこもって日々の細々としたルーティンをこなし終え、食事の買い出しついでに話題の月でも見てみようかと外に出た。原付にまたがり、いつもの近所の業務スーパーへ。空を見上げると、暗い夜空に煌々と輝くお月様が浮かんでいた。全体的に雲の量が少なく、堂々と町を照らしていた。そんな中でも微かに薄い雲が月にかかって、それぞれが織りなす微妙なグラデーションに心が洗われるようだった。

「天体的に見たら、俺ってほんと神秘的な世界に生きてるよなぁ」

なんて、しみじみ思いつつ、お店ではコスパ的に優れたお決まりの野菜や納豆、ヨーグルトなど健康に良さそうな食材と少々のスナック菓子を買い込み、流れるように帰路へ。部屋に戻れば、食品をそれぞれ冷蔵庫などの所定の位置に収めて、ここでいつもなら、再び部屋にこもって用事に取り掛かるところだった。

けど、ずっとお月様が気がかりだった。せっかくの中秋の名月。ここは趣向を変えて、外の世界へ、夜のまちへ散歩でもしてみるか、と。

「月なんていつでも見れるやん」

とも思った。けど、この瞬間の気がかりをあえて大切しようとも思った。腰の重い僕だったが、やおら玄関へと向かい、闇夜を照らす月に引かれて散策へと漕ぎ出した。

最初、効率厨の僕は英語の音声を聞きながら夜道をねり歩いていたが、途中で立ち寄った神社で腰を落ち着かせた時、ふとイヤフォンを外した。お社と周辺の木々の存在感、少しばかり蒸し暑さを和らげてくれるぬるい風、車に蹴られるアスファルトの音、遠くで光る高速道路のオレンジの照明、家屋から漏れる光、川を流れる水の音、チリチリと鳴く虫の声、そして、それらすべてを照らす月の光…。その瞬間が醸し出す境内の雰囲気に身を晒したくなり、全てを空間に委ね、しばらくぼーっとしていた。人に見られたら不審者だよなぁ、と多少周りに気を配りながらも。

21時ごろに帰宅。約一時間ほどの散歩。とても充実した時間だった。なぜか時の流れも遅く感じられ、たった一時間でこんなに面白いのかとしばらく余韻に浸っていた。

統制と混沌(3/3)

人はある宿命を背負っていると思う。それは、自分が築き上げたものをいつか自らの手で壊さねばならない、ということ。日々、あれこれ考えて、自分にとって最適な暮らしを築いてきたけど、何もかも統制された世界を人間は意外と求めていない。散歩中に出会った種々雑多な、それぞれがそれぞれの思いで発する、混沌とした、意味の分からないくらいに膨大な刺激。僕がもし夜散歩を諦め、普段通りの引きこもりな夜を過ごしていたとしたら、どんな刺激を受けられただろうか。恐ろしく淡白だったに違いない。

人は統制だけでなく、混沌も同時に求めている。おそらく、僕の心と身体は本質的にそれを知っている。39歳を迎えて抱いた僕の不安とは、そんな心と身体からの訴えだったのかもしれない。混沌の奥に静かにたたずむ神秘を求めて。

あのとき、言うことを聞いてよかった。

境内にて


サムネイル画像の引用元
Photo by Omar Ramadan from Pexels: https://www.pexels.com/photo/full-moon-on-dark-night-sky-4646564/

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