Jeff Bernat @duo MUSIC EXCHANGE(20240308)
スウィート&メロウな薫香を振り撒いた、温もりに満ちたステージ。
デビュー・アルバムとなった2011年の自主リリース作『ザ・ジェントルマン・アプローチ』で脚光を浴びて以来、2013年に『モダン・ルネッサンス』、2016年に『イン・ザ・ミーンタイム』、2017年に『アフターワーズ』とアルバム4作を発表。特に東・東南アジア圏を中心に人気を博している、フィリピン・サンバレス州スービック出身で米・ロサンゼルスを拠点に活動しているフィリピン系アメリカンのシンガー・ソングライター/プロデューサー、ジェフ・バーナットが、アジアツアーの一環として来日公演〈ASIA 2024 IN TOKYO〉を開催。渋谷にあるduo MUSIC EXCHANGEに、ジェフ・バーナットの音楽を愛するファンたちが集った。
2009年頃の活動初期は、スティーヴィー・ワンダーやジョー、ブライアン・マックナイトらのカヴァーをYouTubeで配信し、R&Bやネオソウルの好事家たちの耳を喜ばせたジェフ・バーナット。『ザ・ジェントルマン・アプローチ』リリース時は日本ではそれほど話題に上がらなかったが、米iTunesチャートでは上位にランクインし、コンテンポラリーなR&Bシーンをチェックしている層は、『ザ・ジェントルマン・アプローチ』を手に入れることに躍起になっていた記憶がある(CDはAmazonなどでも4~6000円代の値がついていたはず)。ネオソウルやヴィンテージ感溢れるジャジィR&Bを基軸とした作風は、当時のエリック・ベネイ、メイヤー・ホーソーン、ラファエル・サディーク、ミュージック・ソウルチャイルドあたりのリスナーにもフィットしていた。個人的に当時を思い返してみると、ネオソウル/R&Bシーンでの話題として知ったというのもあったが、カリフォルニアのラッパーのケロ・ワンやコリアン・アメリカン・シンガー・ソングライターのサム・オックなどジャジィ・ヒップホップ界隈に注目していた流れで、ジェフ・バーナットにも辿り着いたような気がする。
2017年の『アフターワーズ』以降はシングルや4曲入りEP『シー・ラヴズ・ミー・ノット』を経て、2022年には『ザ・ジェントルマン・アプローチ』の10周年記念アンプラグド版を発表。近年、自身もファンも思い入れのある同作の良さを再認識する流れのなかで、待望の来日となった。
名は体を表すではないが、“ジェントルマン・アプローチ”よろしくステージイン当初から紳士的でテンダーな印象を醸し出すジェフ・バーナット。母国のフィリピン、タイ、韓国、オーストラリアなどから足を運んだ観客たちへ語りかけながら、日本のファンには「世界のなかでも日本は本当にラヴリーな場所なんだ」と愛着と感謝を何度も告げていた。
ステージは『ザ・ジェントルマン・アプローチ』収録曲を中心に、新旧の楽曲を織り交ぜた構成。キーボードとドラムというミニマムなバンド・セットではあったが、スウィートでメロウなメロディとハートウォームなヴォーカルを引き立てるのに過不足ないサウンドで、グルーヴを湛えていく。
中盤では、「ミス・セダクティヴ」「マイ・ディアー」の2曲をキーボードとの弾き語りデュオ・スタイルで聴かせたり、ミュージック・ソウルチャイルドのミュージック名義時代の「ジャスト・フレンズ(サニー)」やビージーズの「ハウ・ディープ・イズ・ユア・ラヴ」といった、ジェフ・バーナット好きなファンたちも触れていると思われる、彼らしいカヴァーを披露。また、「タレントあるシンガーがいるんだ」とカリフォルニアを拠点とする男性シンガー(ポール?)に1曲ステージを任せると、ジェフ・バーナットと同じくニット帽姿の白人男性がボビー・コールドウェルの「ホワット・ユー・ウォウント・ドゥ・フォー・ラヴ」をソフトでウォーミーなタッチで歌い上げるなど、ステージに変化をもたせながら、オーディエンスを楽しませていく。
さらには、フロアからカップルを登壇させ、ジェフ・バーナットが友人を紹介するという体から、男性がステージ上で公開プロポーズ。彼女の指に指輪をはめようと瞬間、指輪を落としてしまうハプニングもあったが、愛に満ちた微笑ましい光景に、ハッピーなヴァイブスが溢れていた。
「エンジェル・2・ミー」「ホワット・2・ドゥ」といった客演曲を経て、後半は「ジャスト・ヴァイブ」や「グルーヴィン」といったイントロを聴けばファンが沸くような『ザ・ジェントルマン・アプローチ』楽曲や、『シー・ラヴズ・ミー・ノット』や最近作『ラヴ、ジェフリイ』といったEPからの楽曲を紡いでいく。肩に手をそっと置いて語りかけるような歌い口から、愛嬌ある表情でグルーヴの波に乗ってリズミカルに振る舞うなど、優しい肌当たりでフロアの熱度を上げるさまは、ジェフ・バーナットならではの浸透性に長けたステージングといったところか。美麗でメロウな歌声もあって、女性ファンが多いのも頷ける。
「スティル」を歌い終えると、おもむろにフロアの中央を指差し、自身へのサポートや楽曲を愛するファンたちへの感謝を告げながら「最後はみんなの傍で歌うよ」とステージを下り、フロアの中央へ。おのずとジェフ・バーナットの周りをファンが囲むなかで、自身をシーンへ台頭させた契機になった楽曲の一つ「コール・ユー・マイン」のイントロが始まると、一際大きな歓声が鳴り響く。ジェフ・バーナットの心地よい歌声とファンのシンガロングが交じり合い、やわらかで心地よいグルーヴが広がるなか、微笑ましく晴れやかなムードに包まれて、ファン待望のステージは幕を閉じた。
『ザ・ジェントルマン・アプローチ』のリリースから13年が経ち、ようやく生のステージを観ることが出来たが、当初の印象と変わらないファンに寄り添う形のテンダーなパフォーマンスに終始していて、心底日本への愛着を伝える姿勢も感じられた。親日家の彼ゆえ、また近しい時期での来日を心待ちにしたいところだ。
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<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 Chamomile (*L)
02 Casual
03 Wrong About Forever (*S)
04 Cool Girls (*G)
05 If You Wonder (*G)
06 Moonlight Chemistry (*G)
07 Once Upon A Time (*A)
08 Ms. Seductive (with keyboard only) (*G)
09 My Dear (with keyboard only) (*G)
10 Just Friends (Sunny) (original by Musiq / Musiq Soulchild)
11 How Deep Is Your Love (original by Bee Gees)
12 What You Won't Do For Love (original by Bobby Caldwell)(Paul sings)
13 Angel 2 Me (original by McKay feat. Jeff Bernat)
14 keyboard intro ~ What 2 Do (original by DEAN feat. Crush, Jeff Bernat)
15 Cruel (*S)
16 Just Vibe (*G)
17 Groovin' (*G)
18 Changes (*S)
19 Better With You (*L)
20 Still (*S)
21 Call You Mine (*G)
(*G):song from album "The Gentleman Approach"
(*S):song from EP "She Loves Me Not"
(*A):song from album "Afterwords"
(*L):song from EP "Love, Jeffrey"
<MEMBERS>
Jeff Bernat(vo)
(key)
(ds)
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もし、仮に、気まぐれにも、サポートをしていただける奇特な方がいらっしゃったあかつきには、積み上げたものぶっ壊して、身に着けたもの取っ払って……全力でお礼させていただきます。