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Funkindustry / パジャマで海なんかいかない @O-nest〈colors〉(20230627)

 多彩な音色が行き交った、鮮やかでカラフルなステージ。

 2023年に入り、“パジャ海”ことパジャマで海なんかいかないへの興味が高まっているなか、Spotify O-nestによるイヴェント〈O-nest presents colors〉に出演すると聞きつけ、一路渋谷へ。最近は雑多なアーティストが数多く組み合わされたライヴやイヴェントを観るのに少し億劫になっていて、もちろん他ジャンルの未知なるアーティストを知る面白さも知っているのだけれど、当たり外れが少なくなかったり、演奏の尺が極端に短いサーキットフェスのようなものだと、目当てが勢揃いしているならともかく、嗜好が合わなかった時のリスクを考えて、思いとどまる傾向にあったりもする。

 ただ、今回はパジャ海とともにフランス・ストラスブール出身のソウル/ジャズ・ファンク・バンド、ファンクインダストリーが来日するとあって、平日の夜ながらも駆け付けた次第。出演はオープニング・アクトにオルタナティヴ・サーフロック・バンドのCOLA!?、ポップ・バンドのLaura day romance(ローラ・デイ・ロマンス)、そしてファンクインダストリー、パジャマで海なんかいかないの計4組。到着した時は、COLA!?が既に終わり、Laura day romanceの1曲目が終わりかけた頃だったか。

FUNKINDUSTRY

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 Laura day romanceは、5月にメンバーの脱退があり、3名体制へ移行したばかり。ただ、この日はサポート3名を含む6名での編成に。紅一点の井上花月が醸し出すモデル/演技派女優然とした佇まいと切なく思慮深さを感じるヴォーカル、異なる3本のギターを並べて奏でるメランコリックなUKオルタナティヴ風のサウンド、翳りを持ちながらも表情豊かなメロディラインなどを聴くに、どこか川瀬智子がヴォーカルを務めたthe brilliant greenあたりの雰囲気にも感じた。意識下にあるかは分からないが、ブリットポップの影響を受けた2000年前後のJ-POPバンドのエッセンスに、UKオルタナティヴやネオアコに留まらない普遍性を持ったポップネスを湛えた作風とでもいえばいいか。

 ネオアコ/フォーク的な軽やかさが走る「rendez-vous」やリズミカルでジョイフルなポップンロック「Lookback&kick」などは、この手のジャンルが好きな人たちからの人気も高そう。一方で、「wake up call | 待つ夜、巡る朝」のような叙情性に溢れた楽曲もあって、井上のハスキーで胸がはちきれそうなヴォーカルも聴きどころか。個人的には仄かに切なさを帯びたエヴァーグリーンなポップ・メロディで綴った「happyend」と、こちらもエヴァーグリーンなポップネスとビタースウィートなメロディで展開する(ブリグリっぽい)「Sad number」が印象に残った。

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 続いての登場は、目当てその1のファンクインダストリー。「コンバンハシブヤ!ジュンビイイデスカ!」「タノシンデマスカ!」とヴォーカル&ギターのネイサン・クラヴィエが煽ってスタート。6月に土岐麻子、ナツ・サマー、竹仲絵里、JiLL-Decoy association、衣美(EMILAND)の日本人女性ヴォーカリスト5名が参加したシティポップ作風のEP『Midnight City Lovers』をリリースしたこともあって、シティポップ好事家たちからも耳目を集めているようだ。

 トランペットとサックスのホーン隊(メンバー紹介がフランス語ゆえ聞き取れなかったのだが、おそらくセルフ・タイトル・アルバムをリリースした時はトロンボーンのセドリックがメンバーだったが、今回はトランペットなのでメンバーチェンジしているかサポートと思われる)を配していて、フロントマンのネイサン・クラヴィエは背がそれほど高くなく、ジャミロクワイのジェイソン・ケイも意識してるのかもと思わせる節もいくらかあったりと、サウンド的にもアシッドジャズに近い立ち位置のバンドという印象だ。

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 (おそらく)ジミー・ザ・ツイン「ミッドナイト・シャッフル」使いのナレーション・トラックを出囃子的に演奏した後、キャンディ・ダルファー「サックス・ア・ゴー・ゴー」も想起させる曲とファンキー・ディスコを混ぜたようなインスト曲で(無知なので曲名は分からず)、「トウキョウ、シブヤ、イッショニ!」とクラップを煽って、冒頭からファンクネス全開で盛り上げる。

 大分県出身で米・コロラド州で育ち、日米のルーツを持つ、東京を拠点とするヒップホップ・アーティストのWez Atlasが客演した「Anothe One」の後は、EP『Midnight City Lovers』の楽曲を軸に、持ち前のアグレッシヴなジャズ・ファンクを展開。原曲では土岐麻子をフィーチャーした「I Want You Closer」も、シティポップのリズムを下敷きにしながらも、エネルギッシュなファンクを発露していて、良い意味でシティポップの特色でもある柔さは顔を潜めていた。

 セルフ・タイトル・アルバムからの「Strong Enough」もメロディにはアーバンな色彩もあって、そのあたりはフランソワ=シャヴィエルの鍵盤が奏でる上モノやホーン隊が一役買っている感じ。EPのタイトル・チューン「Midnight City Lovers」ではヴォーカル&ギターのネイサンとベースのジャン=マチュー、それぞれ青と赤のジャケットを羽織ったクラヴィエ兄弟が大胆かつアクティヴに音を爪弾き、それに高らかなホーンの音色が絡むゆえ、シティポップ感はほぼ感じず、アシッドジャズ/ディスコ・ファンク・マナーで実に痛快。

 それをさらに実感したのが、アース・ウィンド&ファイア―のカヴァー「Can't Hide Love」で、緩やかなテンポに落としてはいるが、甘美なバラードというよりうねりのある熱帯夜のごとくのグルーヴで描き上げていく。テンポアップしてシームレスに「We Need Love」に繋げると、シティポップよろしく都会的なフュージョン・マナーのグルーヴが顔を覗かせるが、やはり原曲とは異なる、肉感や生命力に溢れたパッション漲るアプローチで攻め立てる。だが、その熱さが興奮を高めてくれる。バンドメンバーを紹介しながら、クラヴィエがさりげなく「キュンです」のフレーズを挟んでみたりと、茶目っ気もたっぷりだ。

 ラストは「We Need Love」からマクファデン&ホワイトヘッドによるフィリー・ソウル・クラシックス「恋はノンストップ」のフレーズをホーン隊が奏でるトラックから、再び「We Need Love」の前に演奏したアース・ウィンド&ファイア―のカヴァー「Can't Hide Love」をテンポを上げて披露する「Can't Hide Love」で挟んだ構成でエンディング。ゴージャスとまではいかないが、小回りが利くタイプのパフォーマンスでヴォルテージを高め、フロアに派手やかなディスコテックを創出させていた。

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 トリはパジャ海。個人的にはEYRIEのツアーで対バンした5月のCHELSEA HOTELでのステージ(記事 →「EYRIE / パジャマで海なんかいかない @CHELSEA HOTEL(20230521)」以来の観賞。その時はFiJAが休みで4名編成だったが、復帰しての5名編成でのステージに。陽光のような輝きと温かさが伝うインスト曲「Dream Journey」でフロアをパジャ海のムードへと仕立てていくと、早速FiJAとChloeの瑞々しいヴォーカルの重なりを見せる「Blue」で、大自然の壮大さと生々しさを同時に描いたような奥深さを宿らせる。

 Seiyaの変化に富んだ精彩なドラミングとHarunaの漆黒でファットなボトムが楽曲の陰影を刻む「Between the Lines」は、その抑揚や出し引きの技巧の妙を楽しめるパジャ海ならではのオルタナティヴな楽曲で、ジャズのインプロヴィゼーションの要素を汲み入れながらも、フックで晴れやかな"抜け”が感じられる爽快な展開が秀抜。

 Besshoのたおやかで美しく凛とした鍵盤が走るなかを、FiJAの情感溢れる速やかなヴォーカルが、時に清流のように、時に生々しく横溢していく楽曲では、息を呑むといった表現が相応しい、吸い込まれるようなアクトで喝采を呼んだ。

 終盤は「Trip」から「Electric」へと流れる"パジャ海グルーヴ”がうねり渡るキラー・チューンを続けるデラックスな展開でクライマックスへ。ジャズのことは全く明るくないので、テクニカルなことについて何がどうだということは言えないのだけれど、一つ一つの音にしっかりと魂が宿っているように感じる、言うなれば"生々流転”なサウンドを描き上げていくさまが、パジャ海の魅力の一つなんだろうと思う。この日はHarunaが奏でるボトムの躍動感がことさらに響いているように感じ、FiJAとChloeのヴォーカルの寄り添いに、前回では観られなかったこともあって、一層魅惑のグルーヴを体感していた。

 「Electric」では、Besshoが「凄いカッコイイ音楽をやらせてもらっています」と自負する発言も出たが、そう言いたくもなるステージが観る度に展開されている。アーシーな柄のパジャマ姿に、ちょっと変わったバンドのネーミングではあるけれど。
 一瞬シック「おしゃれフリーク」が仄かに想起される「アァー」のフレーズから「何が始まる、踊りたくなる」のコール&レスポンスが重なっていくたびに、ジョイフルなパッションと心地よいグルーヴがフロアに波打つから、オーディエンスの表情が微笑みに満ちていくのも必然だ。

 本編が終わるや否や拍手と(1名のスペイン人に促された)「オートラ! オートラ!」(Otra!)というスペイン語でのアンコールの声が響き渡り、「Another Way」へ。歓声に沸いた空間が一変し、青々とした木々や淀みない水面、広々と伸びやかな空など、美しい大自然が瞼に浮かぶかのような、美しく麗しいサウンドスケープを描き上げ、活力溢れるサウンドとヴォーカルでフィナーレを迎えた。

 ライヴハウスで5名編成のパジャ海を体感したのは初だったが(以前は屋外のフェスだった→「パジャマで海なんかいかない @天王洲キャナルフェス(20230423)」)、あらためてクインテットでの質感とバランスの妙を再認識。複数対バンに対する億劫な気持ちもどこかへ失せて、グルーヴの余韻にしばらく浸りながら、気づけばようやく手に入れたアルバム『Trip』のフィジカルCDを抱えて、渋谷の喧騒を搔き分けていたのだった。

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<SET LIST>
≪COLA!?≫
IE DE NOMOU YO!

<MEMBERS>
佐藤全部(b,vo / ex-東京カランコロン, ちくわテイスティング協会)
まことU.S.A(ds,vo / 上上Brothers,Thomas Marquart)
コンソメパンチ(g,vo / ex-SOKUSHI)

【Laura day romance】
<SET LIST>
01 rendez-vous
02 sweet vertigo
03 Lookback&kick
04 wake up call | 待つ夜、巡る朝
05 happyend
06 Sad number

<MEMBERS>
Laura day romance are:
井上花月(vo)
鈴木迅(g)
礒本雄太(ds)
support:
奥中康一郎(g / えんぷてい)
小林広樹(g)
内山ドラ祥太(b,key)

【Funkindustry】
<SET LIST>
00 INTRODUCTION(including phrase of "Midnight Shuffle" by Jimmy The Twin)
01 (INSTRUMENTAL FUNK TRACK)
02 Anothe One
03 I Want You Closer
04 Strong Enough
05 Midnight City Lovers
06 Can't Hide Love(Original by Earth Wind & Fire)
07 We Need Love(including phrase of "Ain't No Stoppin' Us Now" by McFadden & Whitehead, outro of "Can't Hide Love" by Earth Wind & Fire)

<MEMBERS>
Funkindustry are:
Nathan Clavier / ネイサン・クラヴィエ(vo,g)
Jean-Mathieu Clavier/ ジャン=マチュー・クラヴィエ(b)
David Forget / デヴィッド・フォゲット(ds)
Francois-Xavier Laurent / フランソワ=シャヴィエル・ローラン(key, back vo)
Remi Psaume / レミ・プソーム(as)
(tp)

【パジャマで海なんかいかない】
<SET LIST>
01 Dream Journey
02 Blue
03 Between the Lines
04 ( )
05 Trip
06 Electric(New Song)
≪ENCORE≫
07 Another Way

<MEMBERS>
パジャマで海なんかいかない are:
Bessho(別所和洋 / key)
FiJA(vo)
Chloe(Chloe Kibble / vo)
Haruna(まきやまはる菜 / b)
Seiya(小名坂誠哉 / ds)

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【パジャマで海なんかいかないに関する記事】
2023/04/23 パジャマで海なんかいかない @天王洲キャナルフェス(20230423)
2023/05/19 Mark de Clive-Lowe & Friends @BLUE NOTE PLACE(20230519)(Chloe出演)
2023/05/21 EYRIE / パジャマで海なんかいかない @CHELSEA HOTEL(20230521)
2023/06/27 Funkindustry / パジャマで海なんかいかない @O-nest〈colors〉(20230627)(本記事)

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***june typhoon tokyo***
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