”湯船につかることは絶対にいい”のか?
多くの日本人が共有している一般的な共通理解として、「湯船につかるのは体にいい」というものがあるのではないだろうか。シャワーで済ませちゃうっていう人でも、「ほんとは湯船につかったほうがいいとはわかってるんだけどね〜」って言っているのが目に浮かぶようである。
体があたたまる、血の巡りがよくなる、リラックス、やせやすくなる、スピ的な浄化・・・その温もりやら水圧やら色々が、さまざまな効果を持つことはあちこちで語られていると思う。特に健康や美容に関連することを調べたりしているときに、「一番いいのは湯船につかること!」っていう文章は本当によく目にする(しかもだいたい一番最初に言及されている)。
そういう情報を私はもれなく普通に受け止め、「お風呂はシャワーで済ませるんじゃなくて、湯船につかるほうがあらゆる面で絶対にいいんだ!」と信じていた。盲目的に。
少し前まで、離島暮らしをしていた。それまでは都会でしか生活したことがなく、お風呂環境で不自由した経験なんて一度もなかった。
島に行く前に調べてみたら、私が身を寄せる場所には湯船が設備としてそもそもないことが判明。もちろんどの島だって、あるところにはあるだろうよ。島によっては素晴らしい温泉地だってある。だけど、そういう充実したお風呂事情のある島以外の、あたたかい南の島(寒い島のことはわからない)では、毎日の生活ずっとシャワーオンリーで生きていくことがわりと普通らしいと知ったときの衝撃・・・!
そういうわけで ”盲目的な湯船信者” だった私は、これでは健康を保って暮らすことは難しいのではないかと真剣に悩んだのだ。
それでも、あたたかい南の島暮らしをしたい!という思いが最終的には勝つ。はじめての離島暮らし計画は2ヶ月程度のものだったので、「それぐらいの期間ならたとえ辛くても死にはしないだろう」という前向きなのかそうでないのかわからない納得の仕方をして、いざ離島に渡った。
まあ、当たり前かもしれないが(笑)全然大丈夫だった。2ヶ月の初回トライアルも、その後の本格的な移住も。
そりゃあ考えてみれば、湯船がない海外の国でだって人間は健康を損ねず当たり前に暮らしているわけで、湯船につかると体により良いよ〜っていうだけの話であって、ないと死ぬっていうもんではない。
それを差し引いても、困ることはなかった。もちろん「湯船恋しい〜〜!」と思うことは、よくあった。だけどそれはあくまで欲求レベルであって、湯船につからないことで体の面で大きな変化は全く感じられなかったのである。日本国内レベルの南の離島は、冬は意外と寒くて常夏とはほど遠いのだが、その冬であっても別に問題なかった。シャワーだけだと最初は寒いが、ある程度時間をかけて浴びればちゃんと温まることができた。
それ以上に、意外なことに、湯船につからずシャワーで済ませることのメリットを発見してしまったのだ!
まず何より大きいのが、圧倒的に時間がかからない。
私はウルトラマイペース人間で、ザザッと手早く洗って「はいおしまい」っていう急ぎ方が、どうしても絶対にできないという悩みがある。要するに長風呂なのだが、シャワーだけだとやっぱり、遅いなりにも圧倒的に早い。その後の生活の時間に、大きなゆとりが生まれる喜びを感じたのである。
湯船につかるとやっぱりふにゃ〜〜っとしてしまうので、「ちょっとだけつかろう」っていうのがけっこう難しい。私が誘惑に弱いだけかもしれないが(汗)ちょっと言い訳をすると、体が強制的にそうなってしまうから仕方ない。そのままずるずる、ふにゃ〜〜っと長時間つかり続けてしまう。
なんにせよ、それを毎日やることで、どれだけの生活時間を占有しているかを実感した。マイペース人間にとって、時間管理は死活問題。湯船の効果が必要なときはもちろんつかればいいが、「無条件に毎日つかるべき!」という考えはやめようと思った。
それに、湯船につかるのって、意外と体力を使うのだ。
リラックス効果と矛盾しているかもしれないが、実際水圧がどうのこうのっていう話だったりもあるし、感覚的にわかってくれる人もいるかなという気がする。時間的な面だけでなくて、体力的にも大仕事。終わった後は達成感とともにほんのり疲れがあり、「本日はこれにて終了(ガラガラ)」である。
もちろん、それでいい時はいい。さっきの時間の話と同じことだが、毎日必ずそれをするのが良いんだ、という思い込みは私にとって不要と感じたというわけだ。私は湯船につかるためだけに日々生きているわけではない。
それに、寝る前の1日の締め作業としての長風呂(一番疲れた状態でさらに大仕事をするから、それ以外はもう無理)という固定された作業から、今日は早めにさっと風呂入ってそれから晩ご飯食べてお酒飲んでゆっくりしよう〜、なんていうふうに生活のバリエーションも広がる。
こんなことを考えていたら、以前半身浴にチャレンジした時期のことを思い出した。
最近どうなのかあんまりよく知らないけど、ものすっごい半身浴が持ち上げられた時期ありましたよね。カリスマ的な美を誇る人はみんなやってる、みたいなかんじで。素直に「そうかあ!」と思って、私もやってみた。
だけど、心地よさがわからず続かなかった。「じんわり芯から温まってたくさん汗が出ます」っていう、よく目にしていた文言のような素敵な状態になったことは、残念ながら一度もなかった。
もう、とにかく寒い!!お湯の温度を上げても、肩にタオルをかけてもダメ。寒くてぜんぜん全身が温まらないではないか。それならと、浴室暖房をつけて部屋自体をあたためようとすると、今度は空気が乾燥しまくる・・・顔や上半身がカッピカピになって辛くて、もはや長湯どころではない。
うちのアパートのお風呂が適してなかったっていうだけなのかもしれない。私が冷え性すぎたのかもしれない。けど、とにかくこの件でわかったのは、「世の中では絶賛されてもてはやされているが、少なくとも今の自分には全く合わない」という物事が存在するということだった。
「湯船につかるのは体にいい」という情報は、もちろん本当のことだと思う。その気持ち良さだって、もちろん大好きだよ?
ただお風呂だけに限らず、どんな状況でも絶対にこれがいいっていう、万人にあてはまるような絶対的な情報は本当にないのだということを、最近非常に感じている。
その人の体質にだってよる(余談だが、血の巡りをよくするのは一般的にいいことだが、持病がある人にとっては逆に動悸が激しくなり辛くなってしまった…という知人の話を聞いて納得したりもした)。環境にだってよる。その時々の優先順位で変わってきたりもする。
単純バカな私はなんでもすぐ信じてしまうから、意識して気をつけなきゃいけないなって思う。
体にいいとかいうトピックのことだけじゃない。
情報に接するときは、なんだってそうなんだろう。
むやみやたらと一般化するんじゃなくて、個々の状況や特性をしっかり吟味すること。
なんでもかんでも鵜呑みにするんじゃなくて、ひとつひとつよく考えて、自分なりのスタンス決めること。
何においてもそれが大事ですね〜っていう、最後にまとめでした。
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