立派な家は女の夢だった?「マイハウス」小倉銀時
私が、Kindle本を耳読した本の感想を、ご紹介しています。 本選びの参考になれば、と思っています。
読み終えるまでの平均的な時間(3時間55分)
感想…
自分の城を持ちたいと思うのが、女の夢かなと感じました。
男の人が、家の名義人になることが多いが、実際に家にいる時間が長いのは、主婦の方で、女性の中での、実質的に自分の家の占める割合の大きさは男性よりも大きいのかも知れないと感じられました。
少し寂しいけれど、登場人物、それぞれの家に対する思い、立派な家があれば、きっと家族が良くなると言う思いは、どこかわかるような気がしました。
本筋とは全く関係ないけれど、
この本は、2003年の出版だと言うことだけど(2003年が昔なのか最近なのかも、意見が分かれるところですが)
小説の端々の生活模様や、生活の中での色々な常識がこの間に変わっているように感じられました。
時代や価値観の変化という感じかも知れないです。私には、バブルを引きずっているような、そういう懐かしい雰囲気を感じました。
商品説明
一戸建ての購入を夢見る中年女と、競売物件に居座り続ける孤独な女性との壮絶な闘いを、迫力ある筆致で描いた長編小説。株式投資の失敗から、自らも自宅を競売にかけられた経歴を持つという異色作家のデビュー作である。「都市小説」をテーマに、大阪府堺市が主催する「自由都市文学賞」第13回受賞作に加筆したものだ。
ホームヘルパーとして働く大崎和代は、無職の夫と、ひきこもりの長男を抱え、日々の生活に疲れ果てていた。そんな和代は、ある日、唐突に、一戸建ての購入を決意する。目をつけたのは、素人には落札が難しいとされる「競売物件」。裁判所の物件閲覧室で、堂々とした門構えの豪邸のファイルを目にした和代は、「これしかない」と確信する。あの家が手に入れば、日常から解き放たれると信じる和代。しかしその家には、今井昭子という女がいまだに住みついていた。競売の段取りや、いかがわしい仲介業者たちなどの細部の描写は、体験者だけあってさすがに生々しいが、大阪弁を交えて展開していく物語は、どこか滑稽で、おかしみさえ感じさせる。しかし、ラストシーンが近づくにつれ、大げさに戯画化されたように見える2人の姿を、誰も笑うことはできなくなるに違いない。一見、被害者と加害者の関係に見える和代と昭子の抱える情念は、私たち日本人が共有する「家」への幻想でもある。奔走したあげく、「いつも通りのつまらない空」を見あげるしかない彼女たちの不幸は、読み手自身の背後にもぽっかりと口を開けているのだ。(中島正敏)
内容(「BOOK」データベースより)
もういやや、こんな生活―団地住まいの主婦・和代は疲れていた。六畳間には無職の夫が寝ており、息子は不登校で部屋に閉じこもったままだ。愛犬と散歩に行こうとすれば、見知らぬ女にペット禁止と非難される。しかも、下腹部にはいやな鈍痛がある。癌かもしれない。わけもなく涙が出てくる。どんなに小さくてもいい、あたしは一軒家を買ってやる―和代は新聞の競売欄に目を止めた。豪邸ともいえる立派な家が格安で売りに出ていた。占有者は今井昭子という女だった…。一軒の競売物件をめぐって展開される女同士の執念のぶつかりあいを哀しくもユーモラスに描く傑作長編小説。大型新人デビュー作!第十三回自由都市文学賞受賞作を長編化。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
小倉/銀時
1950年京都市生まれ。早稲田大学卒。不動産業、料理旅館、飲食店、コンビニエンス・ストア等の経営にたずさわった後、2001年春、株式投資の失敗ですべての事業から撤退を余儀なくされ、現在に至る。中編「マイ・ハウス」で第十三回自由都市文学賞受賞。受賞作を長編化した『マイ・ハウス』が単行本デビュー作となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)