13:再発の可能性
2023年の春先、シャント手術から約3か月後に検査をしました。2023年2月27日にMRI、3月2日にCTと外来。
夫はすでに車の運転ができるようにもなっていたので、もう私の付き添いは必要ないと考え、1人で病院に行ってもらいました。仕事もあったのと、私も夫も「ただの定期検査だろう」くらいに考えていたのです。
3月2日の外来の日、仕事中に夫からLINEが届きました。
再発の可能性…??
目の前が真っ白になると同時に、私はものすごく後悔しました。
なぜ一人で病院に行かせてしまったのだろうか。こんなに恐ろしい告知をなぜ一人で聞かせてしまったのか。夫のそばにいてついていてあげればよかった。
私は上司に相談し、すぐに家に帰らせてもらいました。
「早退したから今から帰るね」と夫に伝えると、駅まで歩いて迎えに来てくれると言ってくれました。おそらく一人でいたくなかったのでしょう。
駅に迎えに来た夫は、今にも泣きだしそうな顔をしていました。
「2回目にくも膜下出血した脳動脈瘤が半年前の検査の時と比べて大きくなっている。そのために検査入院してください」と先生から説明を受けたそうです。
仕事に復帰できると思っていた矢先の出来事。前日まで、復帰に向けやる気に満ち溢れていた夫が、悔しさと恐怖でふさぎ込んでしまいそうになっていました。
そんな夫に、私は「早めに見つけてもらえて良かったんだよ。血管が破裂する前に見つかって本当によかった」と精一杯伝えました。その時、夫を慰めたかったから言ったのではありません。本心でそう思ったんです。
この時「きっと大丈夫」という強い確信のようなものがあったんですが、今思うと、自分で自分に言い聞かせている部分もあったのかもしれません。
私の強い口調に、夫は少しずつ落ち着きを取り戻し「juneのためにがんばる」と言ってくれました。
その日から夫をサポートするため、会社に相談し、「午前中は出社、午後はテレワーク」というイレギュラーな勤務体系をとらせてもらうことになりました。夫は万が一に備え、頑張っていたリハビリをやめ、検査入院まで安静に過ごしました。
心細かったんだと思いますが、家にいる間は、私のそばから離れようとしません。親や友達とも会う気持ちにもなれなかったようで、2人きりで過ごしました。
夫の様子はというと、普段は明るく過ごしていましたが、時折思い出し泣き出すことがありました。そんな時、私は何も言えず、ただ抱きしめてあげることしかできません。慰めの言葉もかけられない自分がすごく無力だと感じました。
検査入院と手術方針
10日後の3月12日、2泊3日の検査入院し、3月23日に先生から説明を受けました。検査結果を聞くのはとても怖かったけど、早く聞いてしまいたい気持ちもあり、複雑な気持ちのまま過ごしていたので、この日がくるまでとてつもなく長く感じました。
先生の説明によると、やはりシャント手術後に検査してから3カ月で脳動脈瘤が1mmくらい大きくなっているようです。大きくなるスピードが早い為、手術が必要とのことでした。
前回コイルを入れたところが大きくなっているので、コイルを追加で入れるだけでいいんじゃないの?と密かに期待してたんですが、どうもそう簡単にはいかないようです。
夫は3回の手術をすることになりました。
1回目 カテーテル手術 大きくなっている脳動脈瘤に追加でコイルを入れる
2回目 開頭手術 血管バイパス手術
3回目 カテーテル手術 網目の細かいステントを設置
今までの手術は、カテーテル手術×2回と、脳室ドレナージ術、頭蓋骨と皮膚の間にシャントを入れる手術だったので、開頭手術は初めてです。
ただ、開頭手術になるかもしれないと覚悟はしていたので、そこまで驚くことはなく夫は説明を受け入れたようでした。
検査結果を待っている間はとても落ち込んでいたのに、手術方針が決まると、夫は覚悟を決めたようで、前向きな気持ちに切り替わったみたいです。
入院までの2週間で、両親や友達に会って笑顔でがんばってくると伝えていました。
ある日、夫から「ここに全部まとめといたから」と言われ、見てみると、銀行のパスワードや家のこと、車のこと、様々なことが一つのファイルに整理されていました。
自分が死んでしまうかもしれない、また認知症みたいになってしまうかもしれないと思いながら夫がこれを整理していたかと思うと、胸が張り裂けそうでした。