📕からくりからくさ 梨木香歩さん②
「りかさん」の続編とは知らず手に取った。
この人の本は装丁もとてもいい。
染色家の卵、機織(はたおり)を学ぶ二人の学生、東洋の文化を学ぶ外国人。
この4人の女性がともに古い日本家屋に暮らし、四季折々の風物に触れ、
次第に“変容”していく。
そしてその傍らにはいつも、市松人形の「りかさん」がいた。
若い女性たちのちょっとレトロな共同生活、というポップな始まりから
物語は次第に謎めき、日本古来の因習もあいまって中盤は怪談めいてすらくる。
作中に織は経糸・緯糸が幾重に重なり合っても、決して原糸の色を失わない、
とあるように、この物語もあらゆる側面を持ち、複雑に絡み合い
ひとつの紋様を描き出しているかと思えば、それは明快に何々と断定できる
紋様ではない。
したがって、物語がどこに向かって収束するのかは一言では言えないだろう。
ただ、サナギが蝶になり、蛇が脱皮するように、
それぞれが迎えた“変容”のときを静かに見守るだけである。
しかし、原糸と同じように、人物の一人ひとり、エピソードの一つひとつは
やはり生きている。登場人物のキャラクターに限らず、
染色の仕方、機織の歴史、あるいは中東の民族史・・・・・・
どの部分が印象に残るかはその人次第、そんな風にも読めるかもしれない。
私自身は、着物の生地の描写を、映像化したらさぞ美しいだろうと思いながら読んだ。(2007.3)