「経団連方針、賃上げに前向き、労働移動加速を」

 1月17日に経団連は、春闘に向けて、経営側指針を発表した。物価の急激な上昇に対応し、賃金引き上げの維持・強化に向け、積極的対応を図り、成長産業への労働力の移動を加速することを新たな柱に加えたということだ。
 これまで日本の企業は非正規労働者を増やし人件費を削り、ひたすら内部留保を蓄積してきた。だから、この高インフレの世の中で、賃上げをして罪滅ぼしをしなければ、日本人の生活が廻っていかなくなるのだ。大企業の賃上げはある程度実現する。しかし、中小は?
 一方、「労働移動の加速」という命題は実現するだろうか?
 東京都立大の宮本教授によると、雇用の流動性が高いほど、賃金の伸びは大きいということだ。
 主要国の賃金の1990年から2021年の上昇率を比較すると、平均勤続年数が約4年の米国は日本の9倍、8年の英国は8倍。日本の平均勤続年数は12年で、賃金成長率は約6%と低迷している。韓国は6年で日本の15倍くらいの伸びだ。
 ところが日本は終身雇用、年功序列が基本であり、経団連の役員連中は、新卒で企業に入り、そのまま何十年も同じ企業で勤め上げた人たちで構成されている。そして、それを成功体験として、周りに吹聴しているのだ。
 謂わば日本の現行システムからの恩恵を最大限受取ってきた人だ。その人たちが、そのシステムを変更することに大きなインセンティブを働かすことが出来るのだろうか?これはお題目だけに終わるのだろう。

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