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7bcc vol.1 『フラニーとゾーイー』
【1冊目】
『フラニーとゾーイー』(野崎孝訳)
J.D.サリンジャー
この本が本当に好きで好きで、人に貸しているのも含めると全部で3冊持っている。全部、野崎孝訳の文庫。
僕は村上春樹訳ではなく、どうしても野崎孝訳で読みたかった。でも、今はほとんどの書店で村上春樹訳しか置いていなくて、近所の古本屋さんで店主のおじいさんにも手伝ってもらって、店中探し回ったことがある。結局見つからなくて、
「今度入ったら、取っておくよ」
ということに。頻繁にそこに行くわけではないのだけど、コロナになって、尚更行けなくなってしまった。そもそもこの期間、お店をしめてらっしゃるし。
店主さんはご高齢なので、ずっと閉まりっぱなしだと、余計な心配をしてしまう。仕事からの退勤後など、なんとなく前を通って、人の気配がないかなんて気にしてしまう。
つい先日、いつものようにお店の前を通ったら、犬の散歩から帰ってくる店主さんを見かけた。
高齢の小型犬のよろよろとした歩きとは対照的に、店主さんはしゃんとして歩いていた。背も高い方なので、ただの散歩なのに優雅さを感じた。いつもはお店の奥で椅子に座り本を読んでいるけれど、こんな格好いい人だったんだと思った。
その日から、あえてお店の前を通ることはやめた。
いまはただ、
「野崎孝訳、ありました?」
と聞きに行くことを楽しみにしている。