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前職時代の恩人を豊橋に連れて行った話

こんにちは、じゅんです。
Hokkaido MotionControl Network (#DoMCN)というHoloLens・VR技術好きの技術者コミュニティの勉強会を運営していて、開発者の知見の交流を促進しています。また、元・物性研究者として、研究機関に所属する若手研究者でxRに興味を持つ人を見つけてはHoloLensを被せに行き、開発者コミュニティへの橋渡しを行う事を続けています。これらを適切に表現する職名が無いので、勝手にScientist/Developer Relations と名乗っています。

 10/18-21の期間中、工作機械の見本市メカトロテックジャパン2023という大規模な展示会が愛知県の名古屋ポートメッセで行われていました。この機会を利用して、以前から訪問してみたいと思っていたプラスチック成型加工/成型機製作の樹研工業さんにもお邪魔してきました。私一人ではたいして意味がないので、研究者時代に大変お世話になった、切削加工が得意な技官さんと一緒に施設の見学をしてきました。今回はこれだけが目的だったので、あとはすべておまけです(でもいろいろやってきた)。そんな備忘録です。
 記事公開前の写真チェックに迅速に対応頂き、樹研工業スタッフさんに感謝いたします('ω')


メカトロテックジャパン2023 (#MECT2023)

 前日の17日に名古屋に来て、あおなみ線を利用して展示場へ到着しました。展示ホールが第一、第二、第三に分かれておりそれぞれ大型工作機械、工具、固定器その他、みたいな分類になっていたみたいです(門外漢であまりよくわかっていない)。
 昼に到着した18日は第一展示場を見て回り、翌日の19日は第二・第三展示場を回って次の目的地の豊橋に移動しました。
 ベッコフ社のフォロワーさんが展示に来られていたので挨拶したかったですがニアミスを繰り返したのと、XR系のソリューションを探していたらRealwear製品のソリューションを展開しているジャパンメディアシステムさんと知り合ったのがハイライトです。

樹研工業/日本ハミングバード・サイエンティフィック@豊橋

 20日の朝から技官さんとタクシーに乗り、事業所のある神野新田町へ。
会議室で両者の挨拶タイムのあと、会社の事業紹介をしてもらい、一緒に昼食。午後は敷地内の7つの工場内を見学させてもらい、夕方には技官さんの技術紹介タイムと盛りだくさんの内容でした。社長の松浦さんにも一瞬立ち寄ってもらえました(来月の国際プラスチックフェア(IPF Japan 2023)の準備が重なったようです)。ありがとうございました。

 プラスチックの射出成型を主な強みとする会社で、部品などのプラスチック成型品、プラスチック成型をするための金型、金型を運用するための射出成型機、これら全てを事業内容としている点が特徴でした。
 薄利多売を行わず、高付加価値の製品を少量生産できる体制にいち早くシフトして、医療用の機器の部品もクリーンルームで生産したり、超精密加工の加工設備と検査設備を整備して光学部品なども作れるようにしたりと、時代に合わせて変わる市場に対応している点で参考になりました。


粉ではなくギア。拡大すると↓みたいな感じ
5枚の歯の付いたパウダーギア
スマホカメラ用拡大レンズ+クリップ
金型
金型
ぴったり合わさる
超精密加工用の機械

 樹研工業の金型加工用の超精密技術が電子顕微鏡の試料ホルダー作製と相性が良かった事がアメリカのHummingbird Scientific社との事業提携につながり、日本ハミングバード・サイエンティフィックとしての事業が始まっています。そんな経緯で、2022年の11月に倉敷での顕微鏡学会シンポジウムではハミングバード社として企業ブース出展をしていました。

最初の接点と今後の関わり

 倉敷で2022年秋に行われた顕微鏡学会シンポジウムに行ってみたときに初めて知り合いました。私がもともとTEMその場観察の実験屋だったので試料ホルダー業者を重点的に見るようにしていました。お話していたらプラスチックの会社でもあると聞いたのでたまたま持っていたMeta Quest 2のレンズを見せたら製造方法の議論が始まって盛り上がりました。
 札幌に帰ってきた後、もらったノベルティをわたしに北大に行き、国内のホルダー屋さんが増えたことを同じく学内のホルダー職人をやっている技官さんに報告して、いずれ遊びに行こうという話をしていました。

 島根で今年6月に開催された顕微鏡年次大会でも再びお会いできて、新作のプラスチック製品を見せてもらったりしている時に、技官さんの秋の出張許可が取れた話を共有し、て今回の会社訪問のお話を具体的に進め始めました。

 今回の訪問で情報交換をした結果、樹研工業側ではTEMホルダーの運用に関する経験は少ないが切削の技術はとてもあり、技官さん側では工作環境が樹研工業ほど充実していないがTEMホルダーの試作実績が豊富でノウハウがあるという事をみんなで確認できました。欠けを補いあう形が見えていると思いますので、今後も仲良くしていただけるとうれしいなと思います。

もったいない駆動での紹介活動

 技術があるのに生かす場が無いことをもったいなく思う気持ちはXR系に限らず色んな所で感じています。私の経験談ですが大学にいると途上段階のスキルをアピールする場が限られるため(周りの人の文化にめちゃ左右されることは前置きするけど)、これらのスキルが本来フックになっていたであろう出会いも逃していたことが多かっただろうと未だに思っています。
 現行のアカデミアコミュニティのシステムだと今回のような技術者同士のマッチングはあまりないと思いますが、アカデミアの外に出た私を媒介にして例外的なマッチングがもっとできたりするとよいかもしれませんね。

愛知県近辺のコミュニティ運営関係者との挨拶まわり

#コラボベースNAGOYA 訪問見学 ふじいさん(10/19)

 名古屋でのコミュニティ運営者イベントがよく行われているコワーキングスペースなコラボベースNAGOYAに訪問アポを取って、コミュニティマネジャーのふじいさんにお会いしてスペースの利用方法などを聞いてきました。
 開所時にリリースされた場所の説明のとおり、誰でもが使えるという場所ではないことが分かりましたが、非営利でやっている我々のコミュニティイベントにはお借りできる可能性があるようでした(有償)。今度名古屋に来るときにXRミーティングの日程が被っていたら、こちらをお借りしてみようと思います。ふじいさんは #CMC_Meetup や #CLS高知 などでも活躍されているようで以前から一方的に知ってはいたので、お話しやすくてよかったです。


#BabylonJS勉強会 かーでぃさん(10/20)

 豊橋に行く用事を公開していたらご飯のお誘いをいただいたので、豊橋在住のかーでぃさんとカレーうどんを食べる会をやってみました。
 かーでぃさんも名古屋イベントにはだいたい見かける方ですが、イワケンさんとBabylon.jsの勉強会を開いていることを知っていました。この技術領域では、11/3に福岡のよしながさんのハンズオン勉強会が開かれ、さっぽろも小会場でのオフライン会場を立てる予定です。いい機会なので、豊橋でも拠点を開くことが可能であることを伝えてみました。名古屋ではなく豊橋での希望があるみたいなので、近郊の方で運営協力できる方はぜひ手を挙げてみてほしいなと思います。


#CMC_Meetup 名古屋 加賀さん(10/23)

 豊橋でのカレーの間、名古屋のかがさんがSNSのリプライのやり取りに巻き込まれていき、豊橋から名古屋に戻った後のお昼にランチをご一緒することになりました。
 かがさんはコラボベースNAGOYAでのイベントでよくツイッター実況をしてくれる方なので、実況仲間としては非常に親近感があります。名古屋イベントの運営メンバーが結構たくさんいらっしゃるので、運営自体がそれほど苦ではないという事を教えてもらったりしました(うらやましい)。
 私が出張先で繰り返しているホテル部屋の3Dスキャンに関心があったようなので、#scaniverse の使い方などを手持ちのiPadで見せて、早さにビックリしてもらいました。
 今回の名古屋滞在の間、現地の運営者コミュニティで特に目立っているこの三人ともお会いできたので良かったです。


愛知以外のコミュニティ活動

・XRミーティング (10/18 #XRMTG )  運営

 毎月第三水曜日はXRミーティングを開催しています。大阪・東京・神戸・信州(長野)・福岡・北海道の6拠点合同運営です。北海道会場運営者の私の出張に伴い、22時までの利用のできるコワーキングスペースなどが見つかれば名古屋オフライン会場を建てようと思っていましたが結果的には時間切れで自室からの参加になりました。
 会場は建てられなかったので、飛び入りのLTで前回の熊本出張の報告と今回の名古屋滞在について周知して、11月イベントの告知などを行いました。

・#DevRelJP radio (10/17) お便り投稿


・赤い糸カフェ(10/19)参加

 北大の博士学生や博士OB、人材育成本部スタッフの交流会です。メカトロテック離脱後、名古屋→豊橋に移動してホテルに着いた直後に開始時刻が来たのであわてて準備して参加しました。いつもに比べて学生さんが少なかったので、スタッフの人たちと最近の就活事情について議論していました。


・東京HoloLens Meetup Vol.34 (10/23 #ホロマジ #HoloMagicians)参加

 半年ぶりくらいの東京HoloLens Meetupが品川会場とオンライン配信のハイブリッド形式で開催されました。名古屋のホテルから配信を見て、スクリーンショット実況で参加していました。泊まっていたホテルの地形が悪かったようで、私のWifiルータの電波が非常に弱く、画質の悪い状態でないとリアルタイム視聴できなかったので少し心残りな出来になってしまいました。
 品川会場は楽しそうでした。行けばよかったですね。

・ITソリューションマーケットin札幌 by #TDSYNNEX 参加 (10/25)

 札幌に帰った翌日に、HoloLens2、ThinkRealityシリーズ、MagicLeapシリーズなどXRデバイスの販売代理店をやっているSYNNEXさんのITセミナーが駅前で行われる事を知り、参加してみました。ビジネス色の強いイベントだったのでフリーランスが入れるかどうか微妙でしたが受付で聞いてOKでした。事前の案内ページではHoloLens2体験があるくらいの告知内容でしたが、急遽設置されたらしいMagic Leap 2のブースがありました。札幌の一般向けビジネスイベントでのML2初発見イベントという感じです。
 4月にDoMCNでML2体験会を開催したことなどを伝えてお互いが協力できることは何か無いか模索中です。全国の開発者に接点をたくさん持っている勉強会運営者であれば、デバイスの認知度向上に大きく寄与できる方法があるはずなので、お互いのwin-winを探っていきます。


今後の予告

#AR_Fukuoka Babylon.jsハンズオン (11/3)

 福岡の吉永さんによるオンラインハンズオン開催に合わせて、各地方の小拠点でオフライン会場を設置する試みを今回もやってみます。ハンズオン中にうまく動かないなどのトラブルを会場内でのケアで解消したり、合間の時間を使ってガジェットの体験会を同時にやったりといろいろできそうです。

・ライトニングトークのコツの本 (11/25 #技書博 )

 9月の #LTのコツ イベントの登壇者を中心に、このテーマでの本を11月の技書博で合同出版する流れがあります。ちょっとRTしたりしていたら巻き込まれたので、3年前にLTした内容を文字に整理して寄稿しました。勉強会で気軽に発信する初心者を増やす目的があるので、この動きには私も応援しています。

#道総研XR Unreal Engineセミナー&XR体験会 (11/17)

 11/17に北海道立総合研究機構 工業試験場の主催によるXRイベントが開催されます。Unreal Engineの活用の講座と、現地会場での体験会が行われます。コンテンツデモはDoMCNのイベント参加者のみやもりさんきっポジさんが確定していて、HoloLens2も調整中です。 また先述のSYNNEXさんの協力が得られそうなので、Magic Leap 2の体験もできるようにする予定で調整中です。お楽しみに。

まとめ

 研究者時代にお世話になった人と機械工作の分野のつよつよ会社に見学しに行くまでの流れ(と追加イベント)をまとめてみました。今回は単純に恩返しの側面が強く、ここに至るまでは割と丁寧にやったなと思い返しています。私が顕微鏡分野の学者を続けていればもうちょっと簡単だったかもしれないんですが、外の人になってしまっているのでこれでも上出来と思うことにします。
 出張にかこつけて愛知のxR開発コミュニティも励起することが今回もできればなおよかったと思うのですが、今回は至りませんでした。昔は #xrTechNagoya コミュニティが賑やかでしたので、完全に居なくなってしまったわけではないと思うのですが、現在誰にアクセスすればムーブメントになりうるのかちょっと分からない状態ではあるので、今後も名古屋方面の活性化に興味ある人を探していこうと思います。
 樹研工業では先代の社長さんが経営本を出版されていて、社内の文化の基礎を作った話などがその中に書かれていました。コンフォートゾーンに引きこもらずどんどん外に出て市場を見るみたいな文化がいち早く実現して現在の社風になっている様子などを読み取ることができ、事前の予習としてはとても意味がありました。私の #越境 スタイルもちょっと近いので、現地では親近感を持って話を聴くことができました(もちろん20年前と違う部分もあるけど)。技術者の育成には、邪魔をしない事が大事というのも共感ポイント。

(2023/10/30 初稿 6535字 300 min
 2023/10/31 公開前チェック OK )


おまけ

・旅程など
今回の旅では、飛行機代がタイムセールでだいぶ安く抑えられたことに加え、宿もそれほど高くない部屋を直前まで選べたのでいつになく楽でした。名古屋二泊の後、豊橋二泊、その後の行先を思いつかなかったので浜松の博物館目当てに一泊、名古屋に戻って二泊の計画になりました。

飛行機 17020円
宿 7泊8日 40450円
愛知・浜松エリアの移動と札幌-新千歳間の電車・バス賃 7450円
新幹線 0円
+食費・おみやげ代 1万円くらい

合計75000円くらい。ホルダの修理代200万くらい浮いた事を考えたら誤差。


・今回のコロナ拡大予防対策
 北海道の第九波がピークアウトしていたので、空港までは普段通りマスクで過ごしてました。高速バスで空港に行き、名古屋到着後もなるべく人混み・換気の悪い所・飲み屋さんにはいかない生活を送りました。新幹線もピーク時を避け、普通電車でたどり着けることが判ってからはそちらをメインの移動手段にする事にして移動中の密状態を避けるなど工夫しました。荷物を引いての徒歩の移動量がまいにち結構あり、ひざがおかしくなったので日ごろの運動不足を痛感しました。
 誤算はメカトロテックの会場までの電車で、駐車場が混む関係上徒歩の参加者が押し寄せ、夕方の埠頭→名古屋の路線はぎゅうぎゅう詰めでした。あおなみ線を生活用に使っている住民の人も名古屋の手前から乗り込んでくるためさらに過密になり、ここでウイルスをある程度もらうことは避けられないと感じました。タクシー移動も難しそうで、この場面の正解はまったく分からないままです。参加から10日たち、体調の急変なども今のところないため、メカトロテックの影響は一応なくなっているころだと思います(思いたい)。