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「XRミートアップ三重in札幌」の開催をきっかけにエンジニアコミュニティ向けのコワーキング利用優遇の新設に繋げてみた話

こんにちは、じゅんです。
Hokkaido MotionControl Network (#DoMCN)というHoloLens・VR技術好きの技術者コミュニティの勉強会を運営していて、開発者の知見の交流を促進しています。また、元・物性研究者として、研究機関に所属する若手研究者でxRに興味を持つ人を見つけてはHoloLensを被せに行き、開発者コミュニティへの橋渡しを行う事を続けています。これらを適切に表現する職名が無いので、勝手にScientist/Developer Relations と名乗っています。最近はCommunity Relationsとも勝手に言っています。

 8/29にワイクウーデザイン桑山さんを迎えてXRミートアップ三重 in 札幌(三重なのに札幌)という体験会イベントを行いました。桑山さんは台風の影響で残念ながら魂だけの参加(VRから参加:後述)となりましたが、リアルタイムでの通信の下で札幌会場のワイワイ感を伝える事ができました。会場協力いただいたMicrosoft Base Sapporo、協賛いただいたSpace360、臨時スタッフとして受付をやってもらった @s_haya_0820 さん、参加していただいたみなさんありがとうございました。
 今回はその備忘録と、その裏で進めていたコワーキング利用料無料化の道筋を書いておこうと思います。地元の外からイベントを呼び込みたいコミュニティ運営者の方や、エンジニアの勉強会文化を加速させたい他の地方の人には参考になるかもしれません。エンジニアさん個人のエンジニア力の向上の話は書いてありません。


XRミートアップ三重 in 札幌 (#XRMie)

 8/28開催になった道総研さんの空間コンピューティングセミナー(#道総研XR)の翌日に体験会主体の交流会を開催しました。道総研XRがセミナー中心で体験時間若干少なめだったことを踏まえて、こちらのイベントではカジュアルにブースを思い思い設置できるようにして長時間見て回れるようにしました。

 当日、XRミートアップには桑山さんのXRegion(遠隔コミュニケーションシステム)、レフィクシア株式会社さんのLRTK Phone、いっちーさん (@P_ichikura)の3D Gaussian Splatting作品体験デモ、A-kunさん(@A919515)の旅行先AR写真記録プラットフォーム、きっポジさん(@kitposition)のtoioガンダムなどの展示がスタート時にあったほか、遅れてhiroさん(@hirohan6)の自作MRラジコンセット、ネクステラス松本さん(@NexTerrace) のApple Vision Proが持ち込まれデモ体験者たちの交流はワイワイと続いたのでした。
 その様子は↑↑のtogetterリンクにまとまっています。

XRミートアップ三重 in 札幌 のコンセプト・準備について

発端とイベント公開まで

 今年の3/29に桑山さんが空に向かってつぶやいたひとことをその8分後に拾い、当時のイベント開催場所の情勢などを共有しました。3/30には出張の概要なども共有され、建設関係者(特にBIMソフトユーザー)を主なターゲット+コミュニティにすることが決まりました。
 それに伴い、3Dスキャンつながりの iwamaさん(@iwamah1)を交えたキックオフミーティングを4/1に開催し、場所の目星などを付けていきました。当初、ArchiCAD USERFEST 2024 参加者が近くに宿泊していそうな地域を優先して札幌駅近くのDeep Tech CORE SAPPOROさん  (@DeepTechCORE)を第一希望に交渉を進めていましたが、予算面での折り合いがつかずに6月に入ってから別会場を探すことになりました。Microsoft Base Sapporoさんで会場利用が可能と改めて確認が取れたので6/20に利用申請を出して、7/19に利用許可確定の確認をもらったあたりでイベントページを公開し、参加者集めに回りました。
 場所の検討には過去に測定した3Dスキャンモデルなども大いに役立ち、Webビューアで共有して、現地にも何度か行き、桑山さんの知りたい設備情報などをWeb会議でつなぎながら確認していきました。


立ち上げるまでは↑の気持ち。期待値低く始めて、機会の種を詰め込んでいくスタイル。

イベント名に出張元地方への敬意 あと期待値を盛り込まない工夫

 「XRミートアップ三重 in 札幌」は3/30の時点で決まっていました。まず第一に「既存コミュニティの別場所イベントを札幌で行いますよ」という構造にしてあります。既存コミュニティの開催実績が、別名になることで欠けるのを避けたい意図があり、三重のワードをあえて入れています。参加者にとっては情報収集しやすいようになっていて、実際どんなイベントだ?と思った段階で「XRミートアップ三重」でググればメインプレイヤーと他の開催情報がみつかるので雰囲気が分かるはずです。三重サイドの過去の資産が活かせるというわけです。

 運営の我々にとっても結構楽で、もともとはデモ体験のおすそ分け程度の期待値で企画が始まっているので、三重の名前で建てておけば札幌のコンテンツが最悪1件も集まらなくても三重のコンテンツがあれば成立します(ひどい)。勢いよく参加者が集まらない事を予め分かっている私の逃げでもあります。「XRミートアップ札幌」にしてしまうと会作りのプレッシャーで夜も眠れない日々だったでしょう。

 (自分たちがそういう感じなので、XRミートアップ奈良(#XRNara)は独自文化を築いていたし100人超集まって楽しんでいたので本当にすごいと思っています。)

 あとは「XRミートアップ三重 in ○○」にしておけば、○○に他の地方名を入れるだけでジェネリックにイベント開催できるかなって。これは桑山さんの移動の用事次第ですが。運営のキーパーソンを桑山さんにしたまま現地でサポートだけすれば開催できそうじゃないですかね。どうだろう。。

参加者集めのやり方は段階を意識して狭く深く→狭く浅く

 今回のコンセプトは体験交流会ですので、参加者同士がちゃんと会話をする事が重要です。そのため、セミナーを開催する時のブロードキャストな感じの広報とは真逆な感じで段階を意識して進めていきました。

・公開前後 展示候補者に直接DM
connpassページが公開される段階で、その時点で予め分かっている展示デモの技術領域を私が大まかに把握して、関連する要素技術で何かを作っていた人たちにイベント情報を共有していきました。
招待枠でデモ展示してくれる反応であれば最高で、普通の参加でも建設的な議論に繋げてくれることを期待してのお誘いでした。

・毎月のXRミーティングの中でときどき告知LTを発表
毎月第三水曜日にDoMCNら6拠点で開催しているXRミーティングがあります。ここの発表の枠を使わせてもらってイベントの告知を行っています。他拠点の参加者がここでの発信をSNS拡散してくれることで、各拠点の発信者のフォロワーがこの地方イベントを知ることになります。こうすることで単に三重-札幌だけのローカルイベントに終わることなく、なんとなく全国イベントのいち地方開催みたいな感じに印象付けていきます。

・開催数週間前に隣接の技術活用団体へ情報共有の依頼をかける
今回は北海道モバイルコンテンツ・ビジネス協議会(HMCC)の事務局担当の方と、産学官CIM・GIS研究会 の事務局それぞれにイベント情報のお知らせを出して、可能そうであれば会員やお知り合いへの転送をお願いしました。前者はxR Exhibition in Sapporoなどの開催運営をしており、XRそのものへの興味があるはずだと仮定して共有しました。後者は会員に土木・建築関係の会社が集まっており、展示デモの内容自体が好相性だろうと思って送りました。
 数週間前になると展示予定が出そろってきて私の中での解像度も上がって来てお知らせの文面が書きやすくなります。彼らからのイベントお知らせのスタイルを真似て書いて転送しやすくする工夫もしました。

・1週間以内にアドリブでいろいろ試してみる
 
科学技術コミュニケータの修了者メーリングリストにイベント情報を送りました。以前よりここにメールを送ると1件くらいなにかしら返信が来ることもあったりして、XR技術の活用に関して関心がある人が潜在的に居ることが分かっています。
 また8/28-30の間に映像情報メディア学会という学会の年次大会があることも直前に知りました。私が聴講参加できるかどうかなどの問い合わせのやり取りのついでに29日のイベントの紹介などもして、交流の可能性を探りました(不発)。
 あと、28日の道総研セミナーの現地実況をひたすらつぶやいていた中に翌日のイベント告知もシレっと混ぜてみたりしました。

・開催2日前にdomingo掲載

 北海道民のイベント情報プラットフォームdomingoに掲載しました。去年までは色々載せてみていたのですが、イベント好きの市民が見ている感じです。VR・ARのイベント情報が他に載ることはまれなので、あまり優先度を高くしませんでしたが、フットワーク軽い性格の人が新着でこのイベントを見つける事を期待しました。

このような感じのお知らせを使い分けて、交流会が成立しうるような参加者がこのイベントに来るようにしていきました。
見つける確率が高い順に、
 ①私のSNSアカウントをフォローしている人  >> ②別イベントで私にコンテンツ体験させてくれた人or発表してる人 > ③勉強会コミュニティに直近で関わっている人 > ④XRや建設系技術のキーワードで何かしらの団体に関わっている人 >>>>>>> マスメディア情報をみる人
となるように意識しています。

 道総研XRの参加者ツイートまとめを非公式に作って運営のメンバーに共有(公開NG投稿の有無チェック)したところ、当日朝に参加者向けのメールに我々のイベント開催の情報も混ぜて共有してくれました。道総研イベントではスーツを着た人がわりと多く参加されるのでこちらのイベントの情報がなかなか届かない課題が続いているのですが、運営から送信してくれることでこれらが届くことになりとても助かります。

台風による桑山さん来訪キャンセルとその後の突貫対応(アプリデモ&運営)

 まず桑山さんの出張が台風10号の影響でキャンセルになりました(悲しい)。27日の午後に最終判断でキャンセル決まってから代替策の準備に走ることになりました。突如アテンド役が私に決まりiOSアプリのインストールから始まりましたが、うちにMac開発環境がないのでiOS開発者モードにするところからつまづいて、28日の道総研イベントの直前にさってーさんにXcodeの入ったPCに繋がせてもらいました。1時間弱で操作を憶えて翌日のアテンドにぶっつけ本番になりました。

 29日の現場では、本来私が受付 兼 写真発信係で桑山さんはアプリデモの予定を当初考えていましたが体制が変わり、私がアプリデモ&全体見渡し&札幌会場側司会になりました。それに伴い、さってーさん(@s_haya_0820)に受付&写真撮影、きっポジさんに一部買い出しをお願いしました。
 つぶやき実況に関してはもはや手一杯で不可能になってしまっていたので、まつこさん(@akoroitaku)が全展示の体験感想をあげてくれるのを期待しつつ(負担になるのでお願いはできなかった)、自分の撮った写真をもとに閉会後にふりかえり実況に差し替える事にしました(苦しまぎれ感がすごい)。
 ミラーリングの都合上どうしても立ち回りにくそうに見られてしまいましたが、AR側の動き方の様子をなまっぽく参加者に伝える事はできていそうでした。なにしろイベント前に30分も試せてない状態でしたので機能を確認しながらでした。

デモの様子 会場スクリーンにHDMIケーブルでつないで映像出力、Bluetooth 接続でマイクスピーカー(Jabra Speak 510)でこちらと桑山さんの音声通話をしていた。wifiインターネット通信には自分のWiMAXモバイルルータで足りた

できなかったこと(台風・コロナ・その他トラブルなど原因)

 今回は想定外の事がたくさん重なり、運営側でできてない事があります。次回に活きるかどうかは置いといて列挙することにします。

・フライヤーを活用した学生さん集め
 HoloLens Meetup時代は告知期間中、よそのイベントに出かけていき関心の近そうな事にとりくんでいる学生さん向けにイベント案内を出していました。「顔見知りの人のイベントだったら初見でもきやすい」状態に持っていく試みです。自作チラシを作っていたのですが、今回は作る材料が少なかったので動きだせませんでした。

・受付でいろいろプチインタビュー
 どうやってこの会にたどり着いたのかを訊いてみると色々発見があって面白いのですが、今回はさってーさんに最低限だけお任せしてしまったので、私が全員とお話する事はできませんでした。

・懇親会、打ち上げ
 8月末のこの時期は新型コロナ感染者数が札幌で伸びている時期なので、感染拡大予防の観点から懇親会は無くしました。また、終了後のスタッフ打ち上げもやらずにサクッと解散しました。

・イベント直前のお誘いメール
 開催1週間前に不慮の事故で私の普段遣いiphoneが壊れました。寝る前に充電しようとライトニングケーブルをつないだ数秒後に基板ごと壊れたのですがその影響で認証アプリが使えなくなりました。また運の悪いことにtwitterをログアウトしてしまった後に2段階認証がその認証アプリのみになってたせいで再ログインも出来なくなり、それらの復旧に2日使いました。

・体験&実況
 体験の様子などを普段いい感じにSNSに投稿していましたが、スマホのキーボードUIが変わってテキスト入力もままならず、早々に諦めました。
 また、今回展示してくれたみなさんのコンテンツは一つも現場で体験できておらず、みなさんの報告だよりになってしまいました。

・XREAL Air2 Ultra体験会
 自分で購入したXREAL Air2 Ultraを会場にも持ち込んでいたのですが、会場対応で忙しすぎたために機材を出すことはありませんでした。ここまでの突貫対応のせいで、私が当日に得たものがあんまりなかったような印象を本記事の読者には与えてしまったかもしれませんね。

イベント誘致駆動の活動でイベント前に自分の成果をつくってしまう

 今回のXRミートアップ三重 in 札幌の開催にあたり、4月頭から8月末までの4か月間を準備に使いました。そこで何をやっていたのかというと、関係各所との調整の中から、イベント後にも活かせる仕組みを周辺に導入するための模索を行ってきました。

 会場利用の打ち合わせをしていく中で、イベント会場Microsoft Base Sapporo の運営母体となるSpace360さんの代表の方とお話させてもらえました。技術コミュニティの盛衰などを中心に見てきたことをお話していき、地元で活動支援するにはどうしたら助かるのか?という質問をもらいましたので、今回のXRミートアップ三重の協賛に入っていただいて会場利用料の補助を頂きました。

コワーキングスペースの無料利用枠の新設

 次の世間話の機会では、エンジニアコミュニティに貢献している人向けのコワーキングスペース無料枠の提案をしてみたところ快諾をいただき、9月以降の新制度ができる事になりました。言い出しっぺの私の周りからジワジワ拡げていく事にします。

 まだ運用面でのカッチリしたルールはありません。私が少人数での開発もくもく会を開いたり、XRコミュニティ繋がりなどでの知り合いの人がデバッグ作業に空間を必要としていたりの時などに私がSpace360に取り次ぐ事で利用料が免除されるらしいです。道外から出張で札幌滞在のXRエンジニアにも適用できます(私の知り合い道外の方が多いので)。
 日差しが明るくて作業しやすいことと、模様が多いので空間ロストしにくいので、ARのテストするのにとてもよいです。もともとARの空間共有マルチプレイアプリなどの実験をするときに場所に困っていたので、私自身は今回のオプションは非常にうれしいです。平日の日中に大通で作業して終わったらどこかで焼き鳥を食べるみたいなのどうですかね。

 そんなわけで今回のXRミートアップ三重in札幌では、XRなおじさんが居てもいい場所が一つ増えたという成果が得られたので、イベント当日に私の得られるものが少なくても全然問題ないのでした。運営は準備が9割、成果も準備中に9割、です。

↑こういう主催1人の参加者数になりかねないイベントを気軽に開ける可能性がある

草の根活動のポイントは持続可能性 負荷を増やさず機会を増やす

 私自身は福岡のエンジニアカフェにハブ育成の面での良さをずっと感じているのですが、札幌でそのままやってそれがうまく持続するとは全く思っていません。コミュニティ活動への理解やとりくむ人口、産業など前提が違いすぎることを福岡に視察行くたびに感じ、打ちのめされて帰ってきています。(福岡はコストをちゃんとかけています。)
 ですので札幌のエンジニア(もっと言うとXRエンジニア)に合った形での運用をみんなで探していかないといけないと思っていますので、これらの取り組みに関心のある人が増えることを願っています。


余談:さっぽろエンジニアカフェ(仮)の爆誕については知らなかった

 私がエンジニアカフェほしいほしいとうるさくしていた裏で企画が進んでいたらしく、寝耳に水なタイミングでSapporo Engineer Baseさん側からエンジニアカフェが爆誕していました。会場は13LABOさんで、金土日の夜に開放するところからスタートするようです。

 市がやってるなら私があれこれ動かなくても良かったんじゃないか…?と軽くショックを受けましたが(1日寝込んだ)、私の対応が平日の日中中心、SEBの受付が週末休日の夜ということなので、利用者層も違って住み分けになるのかなと思っています。企画の中の人たちは知り合いなので言って欲しかった感は正直あります。
 9/15まで運用アンケートを募集しているそうなので、「こういう場が欲しい!」という要望をきちんと言語化して送るとよいと思います(送った)。

まとめ

 今回、桑山さんの札幌訪問を機会にXRミートアップ三重 in 札幌を開催し、台風の副産物として、主催と地方会場をXR技術で結んでの変則開催の実績を作りました。
 XR技術は距離を越えて実質的な体験を共有する技術だと感じて私自身が取り組み始めていますので、これをしくじると今までやって来ていた意味がまったくなくなるので実は緊張していましたが、なんとかサポート出来てホッとしています。突然現地運営のスタッフに駆り出された皆さんありがとうございました。

 この会のワイワイ感は会場オーナーさんも非常に好意的に見てくれていましたので、次もなにか楽しい事ができると思っています。札幌でXRのネタを広めたい道内外の方いらっしゃいましたら是非ご相談ください。

以上です。

(24/09/03 360min 7748字 初稿)

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