物事のつながりを意識してインプットすると記憶も強固になるし何より楽しいなと思った話
日本人は社会に出ると勉強しなくなる。
そこいらのビジネス書なりテレビなどを見ていると、そんな文言をよく耳にします。
月に読む本の冊数がいくらだとか、仕事外に机に向かう時間がない、とか。
ものによっては、年収と読書量を比較し、「本を読むと年収が上がるよ」と直接的に(ちょっと下品な気もしますが)歌っているケースもちらほら。
確かに、今の社会はホワイトカラーてきな仕事がメイン、知識量が豊富な方が成功する確率が上がるという部分はある気がします。
にしても、年収とか生産性とかだけで読書なりインプットの必要性を訴えることはなんか勿体無い気がします。
それらの書籍なりで批判の対象となる「勉強しない群」に比べると、自分は趣味のように本を読んだりしているので「勝ち組」に分類されるかも知れませんが、そもそも年収を上げたくて読書をしているわけではなく、単に面白いから、知識と経験、知識と知識が結びついた瞬間の快のためにやっているという感覚のほうがちかい。
ちょっとしたことを知っているだけで、生活は結構彩られ、面白くなります。
そういった趣旨で書かれた本ではないことは承知ですが、古舘恒介さんの本を読みそんなことを思ったのでシェア。
Amazonでめちゃくちゃ高評価のこの本。
自分も採点してと言われたら間違いなく⭐️5 をつけるくらいの名著だと思います。
エネルギーというと、電力だったり原子力の話だったりをイメージするかも知れませんが、本書は火や農耕からスタートし、人類史の中でのエネルギーという大局観を与えてくれる面でも他に類を見ない作品になっています。
火と人間の出会い
日本史の教科書を見ていると
・今からx年ほど前に稲作の文化が日本に伝わりました
とか、
・人類はx年前から火を使うようになりました
という淡白に記載されています(自分の昔の記憶なので、今はどうか分かりませんが)。
で、繋がりという観点が抜け落ち、ただテストで点を取るためであればxという数字を覚えるだけで事足りますね。
でも、本書に準えて火の使用を例にとると、そこから色々な疑問が派生します。
その答えを考え、見つけて行く過程で1本の線のように個別の事象が繋がっていく。
そうすると、記憶は強固になりますし、そのつながる瞬間が何より面白い。
ちなみに、世界最古の火の使用の痕跡とされているのは南アフリカのスワルトクランス洞窟で見つかったものだそうで、おおよそ100万年前から150万年前のものだとか。
火によって人間が得たもの
人間と火とは、現代でも
・料理の煮炊き
・電気以外の灯り
・宗教的な使用
・発電
・ゴミの焼却
など、切っても切れない関係です。
でも、本書を読む前の私を含む多くの方は、火の使用が人間の体にもたらした変化までは想像していないのではないでしょうか?
現代の、料理とも関係しますが食材を火で加工することには多くのメリットがあります。
一つ目は咀嚼の軽減。そりゃ、火を通せば柔らかくなるでしょうと思ってしまいますが、野生のチンパンジーは1日のうちに6時間以上食べ物を噛むことに費やしていることを考えると、加工による効果は決して少なくないことがわかるかと思います。
さ。柔らかくなるでしょうと思ってしまいますが、野生のチンパンジーは1日のうちに6時間以上食べ物を噛むことに費やしていることを考えると、加工による効果は決して少なくないことがわかるかと思います。
さらに、加熱にはもっと大きな変化をもたらす力があります。
熱はデンプンやタンパク質を変質させ、食べ物の持つ栄養価を飛躍的に高めることにつながるのです。例えば、デンプンの代表例であるじゃがいもでは加熱調理することで、消化吸収できるカロリーが培近くにまで増えます。
また、食べ物を加熱することには、食べ物に付着した雑菌を殺し、免疫の負担の軽減の効果もあります。
すなわち、「料理」とは単に食材を美味しく食べるという手段だけではなく、消化器官への負担を軽減し、吸収できるエネルギーを最大化する偉大な発明の1つなのです。
本書にはこういった雑学も多分に盛り込まれており、ページを捲る手が止まりません。
テスト勉強のためにN個の個別事象を集めて記憶していくという作業にしてしまうと苦痛でしかないし、なんのためにやってんだろう・・・となりますが、どんな知識も自分と関連付けて考えると、日常にちょっとした彩りが生まれそうですね。