対策すべきは誰?〜スマホ失明/川本晃司
後になって「ああ、あのとき知ってればよかった・・」
とならぬよう、健康情報に関してはできるだけ正しい=確度の高い情報を仕入れ、できる範囲で実生活に適用するようにしています。
最近読んだのが本書。
スマホの使いすぎに起因すると思われる近視患者(本書では近視を”病気”として取り扱っているのもあり、患者という表現を用いています)が増えていることは度々ニュースでも取り上げられています。
特に若年層もスマホやタブレットが行き渡っているこのご時世、若い世代の近視患者割合が増加傾向にあるのも首肯するところです。
で、近視というと、
”メガネかコンタクトで矯正すればいい”
とばかり考えており、本書のタイトルにもある失明は煽りすぎじゃない?と思ってましたが、それが甘い考えだったことを痛感させられる読書体験になりました。
高校生に起こった悲劇
長いですが、以下、amazonの紹介より抜粋です。
要は、自分たちが思う近視、視力が落ちたというレベルを超えて可塑的な変化が起こってしまった1例です。
iPhoneが世に出たのが2007年だそうで、一人一台(一台以上)のスマホ時代が到来してから長期的なデータがないというのも怖い部分があります。
著者の川本さんのクリニックにも、特にコロナ禍以降、近業(目から30cm以内での作業)によると思しき眼精疲労の患者が増えているそうで、上に例示した高校生のような事例は、増えることはあっても減ることはなさそうです・・・。
子供に対し、スマホやタブレットは1時間まで!と制限をかけているご家庭を見たりしますが、スマホ失明のリスクの観点からも、スクリーンタイムを自制できない(大人もですが)子供の目を守るという観点からは大切なことなんだと改めて認識しました。
ユーザー側だけの対応でよいのか?
スマホ失明の具体策として、著者は現在取りうる多数の方法を紹介してくれています。
点眼薬を使ったもの、オルソケラトロジーというハードコンタクトによる矯正、多焦点のコンタクトレンズを用いた視力矯正、他。
日常できることとしては、スクリーンタイムの削減と、屋外に出て光を浴びる時間を多く作ることだそう。
紫外線を浴びることは近視の防止に効果があることが科学的に確かめられているそうで、心がけたいところですね。
一方で、美肌の観点からは紫外線が大敵と言われていたり、何事もバランス・中庸が大事だなと痛感させられます。
スマホやタブレットが現代生活に欠かすことができなくなってきている以上、受益者側、即ちユーザーが自己責任で対策をとる、対症療法をするというのは当然の流れです。
一方で、個人的にはサプライヤー側(スマホやタブレットを作成する側、それらに載せるソフトやゲームを制作する側)にも危機意識を持ってもらいたいと思うところです。
少し調べてみても、各インターネットサイトがどれだけ自分たちのサイトに留まる続けてくれるようにデザインされているか、youtubeのサムネイルがどれだけポチッとしてくれるように我々の欲求を刺激するような工夫がなされているかが良くわかります。
供給者サイドとしては、それが生命線なわけですから当たり前っちゃ当たり前なのですが・・。ただ、こうして「過度のスマホ・タブレットが確実に悪い影響を及ぼす」ということが明確化してきている以上、看過してはいけないのではないか、とも思うのです。
これは性善説を唱えたいというばかりではなく、仮に失明者が増えると将来のユーザーも減り、自分の首を絞めてしまうことにも繋がりかねない事態だと思います。
最近、企業では人権問題が大きなテーマとなっていて、ここの作業者に配慮することが求められつつあります。
例えば、安い製品を作るために発展途上国で安い労働賃金の方を酷使するという構図も許されなくなりつつあります。
医者やユーザーサイドのみならず、もっと広い視野で課題認識をせねばいけないのでは、と思った次第でした。
という本文もパソコンを使って書いているので、自省もせねばですが・・・。