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原子力発電所再稼動のニュースを見て自分の頭で考えることの大切さを改めて痛感した話
本日10月29日,東北電力の女川原子力発電所2号機が再稼動するというニュースが各種メディアから報道されています。
原子力発電所が運転を開始し,安定的に電気を供給できるようになるにはいくつかのステップがありますが,本日の「再稼動」は原子炉内で制御棒を段階的に引き抜き,核分裂が臨界状態になる状態を指す、とのことです。
ある程度の専門知識がないと,制御棒??臨界状態??という感じでしょうから,簡単に解説してみます。
※ちなみに,自分は社会人博士として学位を取得しましたが,原子力分野の専門家ではないため,もしかしたら表現が適当ではない場合があります。その辺,ご容赦いただければ。
まず,原子炉内には原子力発電に必要な燃料,具体的にはウランを固形化したものが装填されています。
高校時代の物理等で習った記憶がありますが,このウランは放射性物質でして,中性子というものを当てると分裂し,さらに2~3個の中性子が発生します。
分裂する時には大量の熱が発生します。発生するエネルギーはアインシュタインが見つけた世界一美しいと言われるE=mc^2という式で表されますが,この辺の詳しいことはおいといて,まずは,ウランが分裂すると大量の熱が発生するとだけ覚えておいてください。
で,分裂に合わせて2~3個の中性子が発生する,と書きました。となると,周りにウランがあれば,分裂の反応がネズミ算的に増えていくのが想像できるかと思います。
この分裂に伴い発生する中性子の数をコントロールするのが制御棒の役割です。端折って言うと,2~3個発生する中性子のうち余計なものを制御棒で吸収,1個の中性子のみを別のウラン燃料にぶつけます。
すると,分裂→1つの中性子→分裂→1つの中性子→・・・というサイクルが延々と繰り返され,安定的に熱を発生させることができます。
で,この発生した熱で蒸気を発生させてタービンを回す,というのが原子力発電の仕組みです。
原子力発電というと何か複雑で高度な専門知識がないと理解できないようなイメージを持たれがちですが,実は熱の発生源を化石燃料にすれば火力(汽力)発電と同じですし,熱じゃなくて水の力(エネルギー)でタービンを回せば水力発電,というわけです。
で,話をもとに戻しまして・・・。
再稼動を受け,東北電力の本店前では,市民グループの方々が再稼動に反対する抗議活動を行った様子がテレビで流れていました。
原子力を再稼動させるべきか,させるべきではないか。
この点に関しては,いろいろな意見があると思います。どちらが良い,悪いではないと思います。
でも,ちょっと報道を見て驚きました。
抗議活動に参加していた女性のインタビューに対するコメントです。
「東日本大震災を経験したけれど、その時ようやく電気がついてテレビを見たら福島(第一)原発がすごい状況になっていて、絶対こんなことは起こしてはいけないと思った」
特に後半の部分。
発言者の方のことを詳しく存じ上げているわけではないので断定はできないのですが,もし,テレビで見かけた福島第一の事故の映像だけで反対という判断をしているのであれば,短絡的すぎやしないか,と思います。
一部の発言だけを取り上げて揚げ足取りのようになってしまうかもしれませんが,じゃあ車の事故映像を見たら車に乗らない,飛行機事故の映像を見たら飛行機に乗らないということなのでしょうか?
牛乳による食中毒の報道を見たら,永久に牛乳を摂取しないのでしょうか?
もちろん,この報道しきれない考えなりがあるかもしれませんが,もし目に入った映像で脊髄反射のように反対活動に出ているのであれば,危険だなと思ったのです。
多くの方がご存じのとおり,世界は今,2050年のカーボンニュートラルを目指して数々の取り組みがなされているとこです。
そして,我々社会人は,日本に限らず未来を担う子供たちによりよい(悪くない)状態でこの世を引き継ぐ義務があります。
ESG投資,SDGsといった単語が良く聞かれるようになった昨今。
我々は地球温暖化の問題を無視して生きることはできません。
今だからこそ,エネルギーに対する一定のリテラシーをもって,その時点でベターと思われる判断を積み重ねる。
無理に原発を推進すべきとは思っていませんが,あまりに短絡的過ぎる主張がはびこり,日本がおかしな方向にいってしまわないか。
そんなことを少し心配してしまった報道でした。