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やらされてんじゃねぇ、俺がやんだよ!〜(映画)BLUE GIANT

映画BLUE GIANT。
個人的映画ベストテンどころか、限りなくベストに近い作品。

元々、ジャズを音の出ない漫画という媒体で取り扱うだけでも大きな制約なはず。
作者の石塚さんはありとあらゆる手段を使って、音の見える化と主人公大たちの演奏の影響力の大きさを表現しています。
晩年の関係者の回想シーンを入れたり、お客さんや演者の表情だったり。

そんな漫画作品をベースに、日本最高レベルのミュージシャンがバックについてるわけですから、作品の完成度は推してしるべし、ですね。

好きが高じて、Amazonで購入という暴挙にでました。今回、3回目の鑑賞。
毎回同じシーンで泣きます…恥
何回見るんだ、ツッコミを受けそうですが、何度見ても良い。

やらされてんじゃねぇ、俺がやんだよ!

ストーリーは以前のエントリーにも書いたので割愛しますが、本作品の中に、素人から始めた「玉田」という人物がいます。
天才的なピアノの才能を持つ雪祈、努力の鬼で本気で世界一を目指す大、そんなスペシャルなメンバーに対し、才能も経験もない中ドラムとして飛び込んだ玉田。
自身と他のメンバーとのレベル差に何度も諦めかけます。

3人組JASSを結成し、割と早い段階で三人はジャズバーでの演奏の機会に恵まれます。そこから順調に客足が伸び・・となれば単なるサクセスストーリーになってしまいますが、そのデビュー戦で玉田は100を超えるミスをします。
大も雪祈もそれを咎めない。
玉田はミス自体もですが、そんな大と雪祈の反応もあり、帰りの橋の上で大泣きします。

でもここからが玉田という反骨精神に溢れた男の良いところ。
「やらされてんじゃねえ、俺がやんだよ!」
と気持ちを切り替えて、猛練習により徐々に2人とのレベル差を埋めていきます。

仕事でもなんでも、「やらされ感」って感じる時、ありますよね。
多くの場合、やらされてるという面も多少はあるのかも知れません。
会社員であれば、その仕事の大半はやらされでしょう。
やらされ感を持ちながらだって、もちろん表面上、業務をこなすことはいくらでもできます。けど、何か自分に刺さるもの、琴線に引っ掛かるものについては「俺がやんだよ!」というスタンスでひとつ上のレベルを目指したいところです。

ちなみに、JASSの演奏では演奏レベルと派手さを表すかのように、大と雪祈のファンが大半。
でも、作中では数少ない玉田ファンのお爺さんもでてきます。

そのお爺さんが、玉田に向かってこう語りかけるんですね。
「君の演奏はよくなっている。私は君の成長を見にきている。」と。

ある時からプロセスエコノミーなる言葉を書籍やメディアで見る機会が増えたように思います。
自分たちが高校生(20年近く前ですが・・)の時は、基本的にテレビに露出する人たちは鍛錬を積み重ねて完成形を見せてくれる存在でした。
松田聖子さんの音楽番組での出演、自分たち世代だとモーニング娘。なり松浦亜弥さんあたりは、テレビ番組での受け答えを含めて、隙のないアイドルという感じでした。

時代は進み、動画の撮影は公開が容易になったという環境面の進展も影響してか、AKB48をはじめ、それらのアイドルやグループの成長過程も含め、公開されるようになってきました。
努力の痕跡を見せるのは恥、というのは自分(40代前後)より上の世代では多くの方が持っている価値観なような気もしますが、その恥の意識が良い意味で薄れてきて、人の成長過程自体にも商機を見出した、とも言えるかと思います。

もしかしたら、意識してなかっただけで「応援欲」見たいのは年代関わらず持ってる、持ってたのかもしれませんね。

ちなみに、自分は本作品で上述のお爺さんの発言で毎回泣きます 爆

そこまで言ってくれるか・・やっぱすげえなこの店

JASSの目標は、日本一のジャズバーSo Blueで演奏をすること。
それは、雪祈の小さい頃からの夢でもありました。

なんとかそこで演奏したい雪祈は、知人経由でSo Blue代表の平さんにJASSの演奏を見に来てもらい、出演を狙います。

なんとか演奏を見てもらうところまでは漕ぎ着けた雪祈。
残念ながら、平さんからは
・雪祈の演奏が自分を曝け出していないこと
・ファンを大事にしない、周囲の人への尊敬の念に欠ける対応、自分に対して不躾に出演を依頼する人間性
その両方を否定され、出演を断られます。

その帰り、独り言のように呟いたセリフです。

すごいですよね。
自分を全否定した人物に対し、多くの場合怒りや反発に近い気持ちが生まれるのではないでしょうか。
それなのに、雪祈は「すげえな」と言い切る。

平さんとしても、うやむやにし、理由をつけて出演を断るという対応もできたでしょう。そうすれば、波風も立たず、誰も傷つけずに事を収束させることができます。
でも、あえて厳しい言葉で雪祈を諌める。
この時の平さんはどんな感情だったのでしょう。
不躾な態度を取られたこと、その辺の若者が一流と言われる自分の店で演奏したいと生意気にも行ってきている事。JAZZを担う若者への期待。
そんな思いが入り混じっていたのでしょうか。

でも、成長を考える上で自分に適切にフィードバックをしてくれる存在に対し、敬意をもてる雪祈。
成功というよりは、成長の要素の一つのような気がします。

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