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『人生の経営戦略』
「経営する意志=Will to manageは、企業経営と同様に、これからやってくる非常に難しい時代にただでさえ思う通りにならない人生を送らなければならない私たちにも求められているものだ」と述べています。
本日紹介するのは、1970年生まれ、慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科美術史学専攻修士課程修了、電通、ボストン・コンサルティング・グループ、コーン・フェリー等で企業戦略策定などに携わったのち、現在は独立研究者、著作家、パブリックスピーカー、ライプニッツ代表の山口周さんが書いた、こちらの書籍です。
山口周『人生の経営戦略―自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』(ダイヤモンド社)
この本は、経営学の基本的な概念や理論を解説し、それを「人生の経営戦略」にどう適用するかを具体的な例を交えて説明している書です。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.なぜ、いま「人生の経営戦略」なのか?
2.目標設定について
3.長期計画について
4.職業選択について
5.選択と意思決定について
6.学習と成長について
この本の冒頭で著者は、「私は、私自身の人生をひとつの大きなプロジェクトとしてみなし、企業がPDCAのサイクルを回すのと同じように、自身の人生についても、市場を分析し、戦略を策定し、結果を検証し、必要に応じて修正するというサイクルを回していきました。」と述べています。
本書の前半では、「なぜ、いま人生の経営戦略なのか?」および「目標設定について」について以下のポイントを紹介しています。
◆ テクノロジーの影響や人生百年時代の到来で、生き方、働き方の選択肢が増えている
◆ 蛇のように賢く、鳩のように素直に
◆ 時間資本を適切に配分し、持続的なウェルビーイングの状態を築き上げる
◆ 時間資本を人的資本に変え、社会資本を増やし、金融資本を生み出す
◆ ウェルビーイングは、①自己効力感(人的資本)、②社会的つながり(社会資本)、③経済的安定性(金融資本)
この本の中盤では、「長期計画について」および「職業選択について」について解説しています。主なポイントは次の通りです。
◆ 人生には4つのステージがある:①春・試す(~20代)、②夏・築く(30代・40代)、③秋・拡げる(50代・60代)、冬・与える(70代~)
◆ 季節に応じて、「合理的な振る舞い」や「役割・貢献」は変わる
◆ 戦略には、「長期の合理」が大切
◆ 想定外をチャンスに変える「適応戦略」
◆ 人材の価値は、「需要と供給の関係」によって決まる、ポジショニングが重要
◆ AIによる代替3つの対策:①正解のない仕事、②感性的・感情的な知性、③問題を提起する力
◆「能力」を変えるより、「立地」を変える
◆ ローカルメジャーからネイションニッチへ、居場所は10年で変える
◆ モチベーションの源泉は「社会的価値」
◆ 内発的動機づけ:楽しむ人にはかなわない
◆「強み」ではなく、「長く続けてきたこと」に着目すると調達困難な資源が分かる
◆「仕事のポートフォリオ」を持つことは、人的資本(成長の機会とキャリアの多様性)・社会資本(人的ネットワーク)・金融資本(リスク分散)の3つの資産にポジティブ
◆ 仕事のポートフォリオ:①リスクとリターン、②長期と短期のバランス、③ライスワークとライフワーク
◆ イニシアチブ・ポートフォリオは、自分の時間資本の投資配分に関する「自身によるガバナンス」を効かすためのツール(短期・中期・長期の収益化バランス)
◆ 人生には大きな不確実性が伴うため、選択肢が減るようなアクションは基本的に悪手
◆「営利企業かNPO法人か二者択一」ではなく、どちらにも携わることで補完し合う
◆ イニシアチブ・ポートフォリオは、「不確実性をポジティブに人生に取り込む」ためのツール
本書の後半では、「選択と意思決定について」および「学習と成長について」について説明しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ ブルーオーシャン戦略とは、既存の価値のユニークな組み合わせ(交差点)
◆ 3つの組み合わせは、1,000人のチャンピョンを1億6,661万7千人(交差点)に増やす
◆ 組み合わせの分とは「過去」、大量の時間資本を投下してきたこと
◆ ジョブズの「Cnnecting the Dot」(=過去を活かしていくこと)
◆ イノベーションには「打率」より「打席の数」が重要
◆ ゲーム理論の「絶対優位の戦略」は、パフォーマンスを上げるのではなく、ゲームに勝つことを優先する戦略
◆ NPVの考え方では、すぐに役立つものへの投資は、すぐに役立たなくなるので危険
◆ 最もリターンの期間が長いのがリベラルアーツ
◆ オプションバリューを確保する「臆病」が競争優位になる
◆ バランス・スコア・カード(BSC)は評価の基準に短期と長期を混ぜる
◆ ウェルビーイングに関する自分の「モノサシ」を持つことが大切
◆ ベンチマーキングとは「謙虚さ」であり、素直なことが伸びる秘訣
◆ 経験とは「良質な失敗」のこと、NPVが大きい若い時期が有効
◆ 本当の適材適所とは、発達志向型組織のアサインメント
◆ 支配型リーダーシップからサーバントリーダーシップへのシフト
◆ 流動性知能は20代がピーク、結晶性知能は50~60代がピークで高原状態が続く
◆ 結晶性知能はサーバントリーダーシップ(支援)と相性がいい
この本で提唱している「人生の経営戦略(ライフ・マネジメント・ストラテジー)」というコンセプトは、トリプルキャリアで生涯現役・生涯貢献のライフスタイルを「幸福学」をベースに実践していくことを説いた拙著『定年後不安 人生100年時代の生き方』(角川新書、2018年)および『定年ひとり起業』シリーズ三部作(自由国民社、2021年・2022年・2023年)とほぼ共通するもので、深く共感しました。
この本の締めくくりとして著者は、「経営戦略論をはじめとした経営学の教えるさまざまなコンセプトやフレームワークは、私たち一人一人の人生を考えていく上で、非常に有用な示唆や洞察を与えてくれる」と述べています。
また巻末には、「経営学独習ブックガイド」が一覧と図解によって紹介されていて、とても参考になります。
あなたも本書を読んで、「人生の経営戦略(ライフ・マネジメント・ストラテジー)」を作成し、経営戦略論をはじめとした経営学の知見を「人生というプロジェクト」に活用してみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【3628冊目】