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『限界分譲地 繰り返される野放図な商法と開発秘話』

家屋もまばらでほとんどが空き地のまま放置されているような超郊外の分譲地を、主に「限界分譲地」と呼称しているが、実際のところ、当事者以外にとっては直接的に関係のある話ではなく、いわゆる「社会問題」として扱いにくい題材ではある、と述べている本があります。


本日紹介するのは、1981年静岡市生まれ、千葉県横芝光町在住で、主に千葉県北東部に散在する旧分譲地の探索ブログ「URBANSPRAWLー限界ニュータウン探訪記ー」の開設をきっかけに、より探索範囲を拡大したYouTubeチャンネル「資産価値ZEROー限界ニュータウン探訪記ー」を運営するほか、寄稿、講演などの仕事も手掛ける吉川祐介さんが書いた、こちらの書籍です。


吉川祐介『限界分譲地 繰り返される野放図な商法と開発秘話』(朝日新書)


この本は、昭和の時代に投機目的で開発され、今は住宅地としての存続も危ぶまれる状態にある「限界ニュータウン」「限界分譲地」にまつわる諸問題に焦点を絞り、あわせて、いわゆる「原野商法」の話や、分譲地ではないが、維持管理の面で分譲地と共通の課題を抱えるリゾートマンションについての解説も行っている書です。


本書は以下の7部構成から成っています。

1.取り残される限界ニュータウン

2.限界ニュータウンはこうして売られた

3.原野商法の実相

4.変質するリゾートマンション

5.限界ニュータウンの住民

6.限界ニュータウンの売買

7.限界ニュータウンは二度作られる


この本の冒頭で著者は、「その土地を買いたい人よりも、売りたい人の方が圧倒的に多いような限界分譲地は、問題の根源はむしろそうした不動産地主側の事情にあることが多い」と述べています。


本書の前半では、「取り残される限界ニュータウン」および「限界ニュータウンはこうして売られた」ついて、以下のポイントを説明しています。

◆ 限界ニュータウンは、郊外エリアのさらに外縁部、農業地帯の虫食い分譲地

◆ 立地より開発経緯が問題、投機型分譲地が限界分譲地に

◆ 上下水道のインフラが貧弱

◆ バブル崩壊後に競売が急増


◆ 限界ニュータウンの大半は「投機用」として分譲された

◆ 自治体は乱開発に期待も

◆ 購入者は富裕層ではなく一般庶民

◆ 投機型別荘地は、単なる斜面の雑木林になっている惨状


この本の中盤では、「原野商法の実相」および「変質するリゾートマンション」について解説しています。主なポイントは次の通りです。

◆ 1970年代に「原野商法」の驚くべき広告の手口

◆ 無部成・素地のまま売られた土地も

◆ 原野商法の二次被害も

◆ 新手の「買い取りビジネス」


◆「負動産」の代名詞となったリゾートマンション

◆ 新潟県湯沢町でスキーブームと交通アクセス改善でリゾートマンション建設ラッシュ

◆ 苗場は投げ売り、湯沢は価格上昇で、コンパクトシティの一翼を担う可能性

◆ 高齢者や年金生活者の住処としてのニーズも


本書の後半では、「限界ニュータウンの住民」「限界ニュータウンの売買」および「限界ニュータウンは二度作られる」について考察しています。主なポイントは以下の通り。

◆ 限界ニュータウンは高齢者には厳しい環境

◆ 近隣住民の住み替えで流入も

◆ 限界分譲地を能動的に活用する人も

◆ 限界ニュータウンのスポンジ化現象


◆ 限界ニュータウンの売買は坪単価10分の1以下に

◆「草刈り業者」の存在

◆ 不動産会社も仲介を拒否する限界分譲地

◆ 首都圏の不動産価格の急騰が限界分譲地にも影響


この本の締めくくりとして著者は、「事実は事実として発信し続けたい」と述べています。


あなたも本書を読んで、「限界分譲地」を生み出した野放図な商法と開発経緯を知り、自らの住まいについて考えてみませんか。


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では、今日もハッピーな1日を!【3324冊目】

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