『日本人が知らない世界遺産』
「理念としては美しい世界遺産も、世界遺産委員会の政治化の傾向や、開発政策との齟齬など、簡単には解決できない矛盾や課題を抱えているのは、その事務局の専門官として私自身も強く感じていることです。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、上智大学、東京大学大学院で古代地中海・ローマ史専攻、フランス政府給費留学生としてパリ高等師範学校客員研究員、パリ第四大学ソルボンヌ校で修士号取得、ロンドン大学で持続的開発も学んだ、日本人唯一のユネスコ世界遺産条約専門官の林菜央さんが書いた、こちらの書籍です。
林菜央『日本人が知らない世界遺産』(朝日新書)
この本は、紛争や戦争、気候変動、自然破壊など地球レベルの多くの問題が起きて、危機に瀕しているものも少なくない世界遺産の事態に、私たちはどう向き合うべきなのか、どう生きるべきなのか、未来に何を遺せるのか、繋いでいけるのかを探すために書かれた本です。
本書は以下の3部構成から成っています。
1.世界遺産の本当の魅力は「多様性」
2.世界遺産はどのように選ばれ登録されるのか
3.世界遺産のメリットとデメリット
この本の冒頭で著者は、「世界遺産が、これほどまでに日本人の心を惹きつけるのはなぜでしょうか?」と述べています。
本書の前半では、「世界遺産の本当の魅力は多様性」ついて以下のポイントを説明していま す。
◆ 採択からわずか3年で発効した「世界遺産条約」
◆ 圧倒的に多い「文化遺産」、意外と少ない「自然遺産」、日本にはない「複合遺産」
◆ 文化遺産の一分野「産業遺産」、自然遺産の一分野「海洋遺産」
◆ 危機にさらられている世界遺産の「危機遺産」
◆ 世界遺産とは異なるシステムの「世界の記憶」
この本の中盤では、「世界遺産はどのように選ばれ登録されるのか」について解説しています。主なポイントは次の通りです。
◆ 世界遺産に認められるための基準:①顕著な普遍的価値、②登録の具体的基準10のうち1つを満たす、③「真正性」「完全性」を証明し保存管理体制が万全
◆ 顕著な普遍的価値:国境の概念を超えるほどの例外的な文化的・自然的意義
◆ 真正性:文化遺産の形状、材料、材質がオリジナルな状態を維持
◆ 完全性:自然・文化遺産の特質が保存管理されている
本書の後半では、「世界遺産のメリットとデメリット」ついて説明しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 世界遺産登録による経済効果:知名度が上がり国内外から観光客を誘致
◆ 観光と遺産マネジメントのバランス
◆ 世界遺産センター主導のプロジェクト「世界遺産への旅」
◆ 気候変動は世界遺産にも大きな脅威
◆ 地元の人々と持続可能な開発に貢献した成功事例:マレーシア・ジョージタウン
この本の巻末には、付録として、「私のお薦め世界遺産とその見どころ」が掲載されています。
あなたも日本人唯一の条約専門官が書き下ろした本書を読んで、日本人が知らない世界遺産について学び、自分に何ができるかを考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【3529冊目】