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レコードの柔らかい音に包まれる時間

音楽室のある家

3年前に学生時代の友人と20何年ぶりに会いました。たまたま鹿児島に行く用事があったので、だったら都城に住む大学時代の友人に会いたいなと思い、都城まで足を延ばしました。友人が駅まで迎えに来てくれて、ホテルに寄って、夕飯を食べに地元の鶏料理店に繰り出しました。「2軒目はさっき通りかかったちょっと寂しげな繁華街にでも行くのかな!?」と思っていたら、「2軒目は是非、我が家に!」と言われ、ご自宅にお邪魔しました。

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家について通されたのは、なんと音楽ホールでした。そこはまるで図書館と見間違うような吹き抜けの空間。懐かしいレコードが整然と並んでいました。なんと彼は「レコード所蔵枚数で日本一」とのことで、レコード雑誌に原稿を執筆しているとのことでした。学生時代に安アパートに住んでいた頃の友人しか記憶にない私には、全く想像すらできませんでした。

特注のスピーカー

そこには特注のスピーカーもありました。職人さんに特別に作ってもらったもので、「何年もかかったんだ」と言っていました。友人はまずビートルズを聞かせてくれました。部屋の空気が一瞬にして柔らかく変わったのを覚えています。

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贅沢してもいいじゃないか

友人は畜産業者が育てた鶏を加工して市場に卸す仕事をしていて、かつて「鳥インフルエンザ」で会社がつぶれそうになったのを、何とか立ち直らせた辛い経験があるそうです。工場の立地により「出荷制限」がかかり、鳥インフルでない鶏を仕入れて、加工しても出荷することができず、かといって古くから付き合いのある業者からの仕入れをストップするわけにもいかず、大変な苦労をしたそうです。現在の仕事は順調らしく、かといってこれ以上仕事を大きくする気もないらしく、「あれだけ頑張ったんだから、1つくらい好きなことをやってもいいじゃないかな!? ちょっとくらい贅沢してもいいじゃないかな!?」と言っていました。「上の階で聞くと、また違って聞こえるよ!」と言われたので、今度は2階に行き、そこでブラームスを聞きました。レコードを聴くのは本当に久しぶりだったけれど、まるでそこで演奏をしているような錯覚に陥りました。

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時間と空間を商品にする

なんで3年前のことを思い出したかというと、下記の記事を見たからです。小田急線の地下化に伴い、「下北沢線路街が”ReRoad”という街に変わり、そこにちょっと変わったホテルが誕生する」というニュースです。

このホテルの売りは「音楽レコードの無料レンタルと全室に完備されたアナログプレーヤー」だそうです。「ホテルに取りそろえられたレコード300枚の中から自由に選び、どの部屋でも聞くことができる」というサービスがあるそうです。まさに「モノではなく、コトを売る商売だ」と感心しました。開発担当者の方は「宿泊する場だけでなく、街に暮らす場として使用できるように、客室を時間販売するサービスを導入する」とのこと。私も一度行ってみたくなりました。でも都会にいると「心に余裕がないと行けないかな!?」とも思いました。私も都城の友人のように「大らかな境涯に早く到達したい」と思いました。

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