下灘駅の海景《22》外出自粛でも旅の気分
松山駅を発車した「伊予灘ものがたり」号は高野川駅の辺りからグンと海に近づき、車窓には瀬戸内海の伊予灘が大きく広がります。この列車はまさにこの伊予灘の海景を楽しむための観光列車で、海側席の多くは窓に向いています。次の伊予上灘駅をゆっくり通過したあとも海景は窓いっぱいに続き、列車は海のすぐそばを走ります。
下灘駅は松山を出て約50分。初めての停車駅です。ここで10分弱の停車。乗客のほとんど全員が観光客なので、それぞれホームに降りて記念写真を撮ったり、大きな海を眺めたりして楽しみます。下灘はまさに絶景ポイントの停車なのです。この列車は全席指定のグリーン車ですが、下灘駅での乗降はできません。指定券は松山から伊予大洲か八幡浜の区間だけです。
下灘駅に停まる普通の列車は上下10本ずつ。日中に3時間くらい列車の来ない時間もあります。というのも、内陸の山間部に内子経由のバイパス線があって、特急を含む多くの列車はそちらを駆け抜けてゆきます。そのため予讃本線のこの区間は海の絶景はあるもののローカル線状態です。多分「伊予灘ものがたり」号がなければ、観光客はよほどの趣味人でないと通らないのだろうと思います。事実この数年前に松山・道後を旅したときに、この絶景区間を通ることができませんでした。
こうして、観光に特化した列車はもはや移動手段というより乗車それ自体を観光に演出するものになっているのですね。それでも、観光列車のおかげで利用者を増やすことができる、ローカル線にとっては救世主に見えます。
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さあ、下灘を出発すると美しい城下町大洲が待っています。