U.S. Corporation Tax Return ②Form 1120
From 1120がTax Returnのメインでありほぼ全てと言って過言ではありません。
以下に内容と提出方法等の説明を記載します。慣れやスタートアップのフェーズにもよるかと思いますが、所要時間は確認しながらで1-2時間でした。
Form 1120 の構成と記入の流れ
Form 1120は大まかに以下のようなパートに分かれています。スタートアップでまだ売上や経費が少ない場合は、大部分が空欄または0での記入になります。
1. 表紙(Page 1)
Corporation Name, Address, EIN:
会社名(登記上の正式名称)、所在地(US Addressが必要です)、EINを記入します。
デラウェア登記の場合は「State of incorporation」は「DE」として記入します。
Date incorporated(設立日):
昨年5月に設立した日(Certificate of Incorporationに記載のある日)を記入。
Check if: Initial return / Final return / Name change / Address changeなど
初回申告の場合は「Initial return」にチェックします。
短期年度(ショートイヤー)の場合は、上部にその旨を明記するか、該当欄にチェックボックスがある場合はチェックを入れます。
Income Section (Line 1~11):
売上(Gross receipts or sales)、売上原価(Cost of Goods Sold)がある場合はここに記入します。
まだ売上がない場合はここは0、または空欄でかまいません。
Deductions (Line 12~29):
経費を計上する場合はここに記入します(広告費、オフィス費用、弁護士費用、会計士費用など)。
設立年度であればStartup費用(組織費など)をどのように処理するか検討が必要です。
何も経費がない場合は0でかまいません。
Tax, Payments, Refund or Amount Owed (Line 30~35):
大きな所得が発生していなければ、通常ここは0になるケースが多いです。
仮に事業利益や経費差引で課税所得が発生している場合は、法人税率(一般には21%)で計算します。
署名(Signature):
法人の責任者(役員)が日付と署名を行います。電子申告の場合は電子署名が必要となる場合もあります。
2. 付随するスケジュール(Page 2以降)
Schedule C(Dividends and Special Deductions):
配当収入がある場合に記入します。通常のスタートアップ企業で配当等がなければ空欄でOKです。
Schedule J(Tax Computation and Payment):
納付すべき税額の計算をまとめる場所です。表紙のLine 30~35と対応しています。
Schedule K(Other Information):
会社が行っている事業内容や会計方式(キャッシュベース or アクリアルベースなど)、株主状況に関する質問が並びます。該当するものをYes/Noで回答してください。
Schedule L(Balance Sheets per Books):
会社の期末バランスシート(貸借対照表)を記入します。資産・負債・株主資本などを整理して記入します。
設立初年度で数字が小さい場合も、正確に記入する必要があります。ただし、資産・負債がゼロに近い場合はほとんど0になる場合もあります。
Schedule M-1(Reconciliation of Income)、Schedule M-2(Analysis of Unappropriated Retained Earnings):
税法と会計上の差異を調整するためのスケジュールです。まだ会計がシンプルであれば、空欄または0が多くなる場合もあります。
3. 関連するフォーム
Form 5472:
株主の25%以上が外国人または外国法人の場合や、外国の関連者(related party)との取引がある場合に必要。
ペナルティが非常に大きいため、該当する可能性がある場合は専門家に必ず確認してください。
付随するその他のスケジュールやフォーム:
従業員(W-2発行)がいる場合は、給与に関するフォームの提出が別途必要です。
実質活動がない場合は該当しないことが多いです。
提出方法
電子申告(E-file)
税理士や会計ソフト(TurboTax, TaxAct, Drake Softwareなど法人対応版)を使って電子申告できます。
E-fileの場合、IRSからの処理・ステータス確認が比較的早いです。
紙での提出(郵送)
Form 1120 の提出先一覧 (IRS公式サイト) を参照し、所在地(州など)に応じたIRSの指定アドレスに郵送します。
郵送時には追跡可能な方法(例: Certified Mailなど)を使うことを推奨します。
提出期限
カレンダーイヤー採用企業の場合、通常は翌年4月15日が申告期限です。
延長申請(Form 7004)を行うことで6か月の延長が可能です(通常は10月15日まで)。
初年度であっても期限を過ぎると延滞ペナルティがかかる可能性があるので要注意です。
簡単な申告例(事業なし・経費ほぼなしの場合)
法人情報(Page 1 上部): 会社名、住所、EIN、設立日、デラウェア州などを記入。
Initial returnにチェック。設立~12月末までの短期年度なら「短期年度」の旨を記載。
売上 (Line 1): 0
Deductions (Line 12~29): 発生していない場合はすべて0。
例えば会社設立時に少額の登録料や専門家費用がある場合、それらを計上するかStartup費用として繰延・償却の扱いを検討してください(Form 4562が必要になるケースもある)。
Taxable Income (Line 30): 0
Tax (Line 31): 0
Schedule K: 会社の基本的な情報、株主状況、会計方法などに回答。
Schedules L, M-1, M-2: 資産負債がほぼゼロであれば、そのまま0。現金が多少あれば、それを正しく記入。
注意点・よくあるミス
初年度の経費
今回ClerkyやMicrosoft Teams、Apple Developer Membership等、発生している費用はOther deductionsでStatementを作って添付します。
Team等はライセンス費用のように見えますが、Line 17は「政府向けのTax・ライセンス費用」の支払いということで、別の部分に記載します。
Line 17に当てはまるようなのは、例えばDelawareに支払うFranchise Fee等が当てはまるということです。
マイナス所得(Net Operating Loss)の次年度への繰越
このマイナスは、**「繰越欠損金 (Net Operating Loss: NOL)」**として将来の利益に相殺できる可能性があります。
小額であれば特段の手続きをしなくても、繰越可能年数内に将来の申告で「NOL利用」として計上できる場合があります。
必要に応じてForm 1120のLine 29a/29cや添付資料に繰越欠損金を管理することが望ましいため、不明点があれば専門家に確認すると安心です。
Form 5472の見落とし
外国人株主が25%以上を保有、あるいは外国関連者との取引がある場合は提出が必要。未提出ペナルティは最低25,000ドルと高額。
日付・チェック項目の漏れ
「初年度(Initial return)」や「短期年度(Short period)」のチェックを忘れない。
財務諸表の整合性
Schedule L(バランスシート)は期首・期末で資産と負債・資本が一致しているか、他のライン項目と整合が取れているか確認。
期限遅れ
4月15日(カレンダーイヤーの場合)を逃すとペナルティが発生する可能性が高い。間に合わない場合はForm 7004で延長申請をする。
専門家相談
初年度であれば特に、将来の税務計画に影響する部分がある(Startup費用の扱いなど)。トラブルを防ぐためにも可能なら税理士や会計士のサポートを受けることを推奨。