『覇王の神殿』 「潮」10月号より連載開始! 【歴史奉行通信】第二十一号
こんばんは。
伊東潤メールマガジン
「第二十一回 歴史奉行通信」を
お届けいたします。
〓〓今週の歴史奉行通信目次〓〓〓〓〓〓〓
1. 『覇王の神殿』
「潮」10月号より連載開始!
2. エッセイ
「『覇王の神殿』執筆によせて」
3. おわりにー
新作で描きたいこととは
4.伊東潤Q&Aコーナー
5.お知らせ奉行通信
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1. 『覇王の神殿』
「潮」10月号より連載開始!
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さて、暑い季節がやってきました。
今回は、月刊「潮」10月号から連載を開始する
『覇王の神殿』について書きたいと思っています。
この作品は、蘇我氏三代を中心に、
日本という国家の成り立ちについて書いていこうという趣向の作品です。
蘇我氏は葛城氏系の豪族の一つでしたが、
稲目の代で頭角を現し、
馬子の代で推古天皇と聖徳太子と手を組み、
その権力は頂点を極めます。
しかし蝦夷の代では、
馬子の息子たちが分家したことにより、
勢力が弱まりました。
蝦夷は融和的な人物で、
馬子の強権政治を引き継がず、
集団合議制で政治を行おうとしました。
それに反発したのが入鹿です。
入鹿は蝦夷との折り合いが悪く、
馬子の時代への回帰を目指しました。
つまりこの作品は、
蘇我氏三代の愛憎劇を描いたものなのです。
臆面もなく言いますが、
目指すはシェイクスピアのような大悲劇です。
それでは、「潮」5月号に掲載された
連載にあたってのエッセイを再録いたします。
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2. エッセイ
「『覇王の神殿』執筆によせて」
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古代史ブームと言われて久しい。
奈良県の平成28年の観光客数は4,407万人で、
県内の経済効果は約1,614億円にも上るという。
日本人の古代史ブームに海外からの観光客が増えたことで、
未曾有の来県者数になったと思われる。
それだけではなく、
古代史に関するムック本や新書もほかの時代に比べて売れていることからも、多くの方々の古代史に対する関心が、
ただロマンを抱く段階から、
知識を得たいという新段階へと移行しつつあることを証明している。
ただ古代史通になるのは容易ではない。
この時代は人名から政治や風習まで、
それ以降の時代とは違って実に難しいからだ。
そこで楽しみながら学べる小説の出番となる。
元々、私は日本史の各時代を切り取り、
小説として提示していくことで、
読者個々に「日本人とは何か」を考えていただきたいと思っていた。
そうなると当然、古代から現代までを網羅することになる。
これまで書いてきたものでは、
摂関政治衰退期から保元の乱までを描いた
『悪左府の女』(https://amzn.to/2z5YGq2)が
最も古い時代を舞台にしたものだったが、
今回、蘇我氏の栄枯盛衰を描いた『覇王の神殿』は、
それをさらにさかのぼるものとなる。
なぜ蘇我氏を取り上げたかというと、
まず謎のヴェールに包まれているということに強く惹かれる。
しかも「日本書紀」によって乙巳(いっし)の変の真実は改ざんされている可能性が高く、その実際を想像で補完しつつ物語としていくことは有意義な仕事になると思った。
それだけでなくこの時代には、
蝦夷と入鹿という父子の確執、
蘇我本宗家と分家の対立、
蘇我氏系士族とそれ以外の士族との戦い、
山背大兄王の悲劇、
重祚を行ってまで皇統に固執した皇極帝の権勢欲、
そして東アジアの国際情勢、
経済、宗教にわたる諸問題
といった歴史ドラマの題材として興味深いものが山積している。
こうした材料をうまく使い、
いかに面白い物語に仕立てていくかは作家の腕次第だが、
そのあたりに抜かりがないのは知っての通りである。
私の作品は、歴史解釈力とストーリーテリング力を融合したところに強みがある。
物語の中に巧みに独自の歴史解釈を盛り込むことで、読者に歴史の面白さを伝えていきたいのだ。
さらに言えば、
知識にとどまらない歴史に対する洞察力を、
私は読者に養ってもらいたい。
つまり歴史にだけ興味があって小説は読まないという人も、
私の作品を読んでから研究書を読むことで、
より以上に歴史に対する理解が深まると信じている。
その理由は簡単だ。
歴史小説というのは、
史実や定説を作者のフィルター(解釈)を通すことで物語にしていく。
読者は小説を読むことで作者のフィルターを追体験し、
それを繰り返すことで、
自分のフィルターを作っていけるからだ。
今回、『覇王の神殿』という作品で、
いよいよ古代に挑戦することになるが、
できる限りリアリティを追求し、
読者を飛鳥(あすか)の都にお連れしようと思っている。
ご期待いただきたい。
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3.おわりにー
新作で描きたいこととは
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さて、今回はいかがでしたか。
蘇我氏というのは、
乙巳の変を正当化するために中臣鎌足らによって歴史を改ざんされた悲劇の一族です。
しかし昨今の研究成果により、
その実像も分かるようになってきました。
蘇我一族は大陸や半島と積極的につながりを持つことで、
豪族の集まりにすぎなかった日本を、
律令制という中央集権的な統治制度の導入によって、
国家と成していこうとした一族だったのです。
もしも蘇我氏が自らの勢力拡大や権力強化ばかりを考えていたら、
朝鮮半島諸国同様、
勃興してきた唐の冊封体制に組み込まれていたかもしれません。
そうした日本国の成り立ちを描いていくと同時に、
祖父、父親、息子三代の微妙な関係を描いていくというのが、
この作品のテーマになります。
連載は十回以上になると思われますので、
本になるのは二年半ほど先になりますが、
ぜひ楽しみにしていて下さい。
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4.伊東潤Q&Aコーナー
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伊東潤のアンサーが癖になるQ&Aコーナーです。
今回はM.Y様からです。
Q.
「ライト マイ ファイア」の中で伊東先生が一番感情移入をして描かれた
キャラクターは誰ですか?またその理由を教えていただけると嬉しいです。
(M.Y様)
A:
本作の中で最も思い入れのある人物は岡田金太郎です。
ネタバレになってしまうので、その理由は言えませんが、
とにかく造形には力を入れました。
(伊東潤)
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皆様のお悩みを、
歴史上のエピソードになぞらえてお答えしていきます。
今後、こちらのコーナーもより活性させていきたいと思いますので、
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5.お知らせ奉行通信
新刊情報 / 読書会 / その他
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【新刊情報】
☆『ライト マイ ファイア』
(『アンフィニッシュト』改題)
(毎日新聞出版)6月22日発売
「サンデー毎日」誌に、
一年余にわたって連載していた『アンフィニッシュト』が、『ライト マイ ファイア』と改題され、装いも新たに
単行本(ソフトカバー)として発売されます。
伊東潤の全知全能を傾けた
社会派ミステリー超大作です。
詳細は伊東潤のHP「恐々謹言」の作品ページをご覧下さい。
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【読書会情報】
第十回読書会は
8月11日(土)の15:30開始となります。
今回は、今年10月発売予定の新刊『男たちの船出』を事前にPDFでお送りし
その感想を読書会で論じ合い、
それを作品に反映させていきたいと思っています。
『ライト マイ ファイア』と同じ読者参加型のイベントです。
原稿は開催一ヶ月前の7/11(水)には参加者へ送りたいと思いますので、
是非お早めのお申し込みをお願いします。
http://ptix.at/0l5QVV
【ラジオ出演情報】
NHKラジオのレギュラー放送は、いつも通りあります。
私の担当は土曜日で隔週です。
だいたい朝の7:30から始まります。
今は第二と第四土曜になります。
「マイあさラジオ」
http://www4.nhk.or.jp/r-asa/
【講演情報】
久しぶりに参加資格なしのオープンセミナーを開催します。
7/11(水)
*お陰様で満席をいただいています。
ご応募も有難うございました。
「歴史と古典に学ぶ最新テクノロジーの生かし方」
https://www.ni-consul.co.jp/seminar/18_0711.html
8/25(土)
「新視点・幕末伝 諸藩の明暗と津和野藩」
https://goo.gl/mbWQCT
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