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ポートスタンレー『サンカルロス上陸』1982 年

【資料より西側のものを使ったため歴史的な公平性に欠けます。その点をご了承ください】

空母『ハーミーズ』がエグゾゼを食らえば、サッチャーとて『停戦』に合意するかもしれない。

 「エタンダール機を出撃させろ。敵の空母をエグゾゼで沈めるんだ」

 アナヤはリオ・ガジェコス空港に待機しているパイロットに命じた。

 これで『停戦』をイギリスに迫れるかもしれない。

 あくまでアナヤ提督は『降伏』を避けたかったのだ。

 つまり『降伏』すると彼らの政権が失墜するからだ。

 しかしこれが成功することはなかった。

 二機のエタンダール機がエグゾゼを搭載して、低空飛行でフォークランド北東部海域に侵入した。

 そして巨大な艦船を発見した。

 ロックオン。



 しかし最後の『エグゾゼ』が狙ったのは空母『ハーミーズ』ではなかった。

 巨大コンテナ船『アトランティック・コンベイヤー』だったのだ。

 このコンテナ船はサンカルロスに膨大な補給物資を送るためにこの海域を航行していた。

 これが『エグゾゼ』を食らう。

       *

この日サッチャーは「橋頭保<きょうとうほ> からスタンレーへ進撃を開始すること」を命じていた。

 しかし、アトランティック・コンベイヤーが沈んだことで補給は途絶えた状態だった。

 この一報は、チェカーズにいるサッチャーを仰天させた。

 「沈んだ?」



 幸い人的被害は少なかったものの、あのコンテナ船には膨大な物資に加えて、大型輸送ヘリ『チヌーク』五機、そして急きょ編成したシーハリアー一九機が搭載してあったのだ。

 「ノースウッドのトラント少将からの電話です」

 この時、さすがのサッチャーも息をひそめた。

 「ハリアーも沈んだの?!」

 サッチャーは問いただした。

 「幸いハリアーは一九機すべて無事でした。すでに空母の方に移動していたようです」

「……そう」

 不幸中の幸いだった。

 「ただチヌークヘリは七機失った模様です」

 トラントは言った。

 この晩に彼女は駆逐艦コベントリーが沈んだという報告を聞いた。

 彼女は一晩中執務室に籠ったまま出てこなかった。

       *

 この時、ニューヨークの国連安保理ではスペインとパナマは『停戦と英国軍撤退』の共同提案を提出している。

 しかし、この『アトランティック・コンベイヤー』の沈没以降、アルゼンチン空軍は持てる力をほぼ総て出しきってしまっている。

 この『死の谷の戦い』でイギリス側の艦船は十隻余り被害をだした。

 被害は五分五分だったという。

 ところが制空権はイギリスの手に渡ってしまった。



 リオ・ガジェコス空港に残っている航空機戦力は二十機に満たない。

 この状態で南東部からイギリスのシー・キングヘリコプターが出撃の体制を整えていたのである。

       *

 ダウニング街十番地の首相官邸でサッチャーは浮かない顔をしている。

 ジョン・ノット国防相はかなり疲れた顔をしていた。

 「国連での停戦と撤退の声明はどうしますか?」

 すでに峠は終わっていた。

 サンカルロスからコマンドは三方向でスタンレーに向けて進撃を開始していた。

 「拒否権発動……パーソンズ国連大使にはそう伝えて」

 「ええ、彼も同意見でしょう。こっちも失うものは大きかったですから。今更、停戦合意にも撤退にも応じるつもりは誰だってありません。虫がよすぎる」

 ジョン・ノットは言った。

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淳一
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