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「さーて、久しぶりに弱音でも吐いてみるか」吉田戦車の不条理平成まんが「伝染るんです」

不条理な世界へようこそ!「伝染るんです」は、吉田戦車による平成時代を彩った一風変わった4コマ漫画です。この作品は、1989年から1994年にかけて「週刊ビッグコミックスピリッツ」で連載され、第37回文藝春秋漫画賞を受賞しました。その独特の世界観とキャラクターは、多くのファンを魅了し続けています。

この漫画の魅力は、何と言ってもその不条理さにあります。登場するキャラクターたちは、かわうそ、かっぱ、かえる、こけし、王様など、一見普通ではない組み合わせ。しかし、彼らが織りなすストーリーは、読者に新鮮な笑いを提供し、時には深い洞察を与えてくれます。

例えば、頭に包帯を巻いた学生服姿の少年が、なぜか人を不安にさせる言葉をつぶやき、カップルを嫌悪するシーンや、苦学生のカブトムシ・斉藤さんが、ショックを受けて泣きながらどこかへ飛んでいくシーンなど、理解できないようでいて、どこか納得させられる不思議な魅力があります。

そして、この漫画の影響は、漫画界にとどまらず、テレビ番組やCMにも広がりました。特に、かわうそやかっぱは、一世を風靡し、今でも多くの人々に愛されています。

「伝染るんです」のテーマ性について

吉田戦車の「伝染るんです」は、不条理ギャグ漫画の金字塔として知られています。この漫画は、起承転結が絶対条件だった従来の4コマ漫画の常識を覆し、不条理ギャグ漫画というジャンルを確立させたパイオニア的な作品です。そのテーマ性は、日常の中に潜む非日常と異質なもの同士の出会いによる違和感、動物や無生物の擬人化による異世界感を通じて、我々の認識している現実をぐにゃりと曲げるような奇妙な感覚や、脈絡のないナンセンスな展開でどう反応していいのか分からなくなるという居心地の悪さを笑いに変えることにあります。

この漫画の世界では、かわうそがハワイに異常な執着を持つ、かっぱが全裸で登場する、かえるが成体の姿でオタマジャクシ時代を濁す、といった不可解な言動が展開されます。これらのキャラクターたちは、読者にとっては馴染み深い動物たちですが、彼らが繰り広げる行動は、まるで別世界の出来事のように感じられます。そして、それがまさに「伝染るんです」のテーマ性の核心をなしています。日常と非日常の境界を曖昧にし、読者を不条理な笑いの世界へと誘います。

さらに、この漫画は、読者に対するパラダイムシフトをもたらしました。従来のギャグ漫画が持っていた一定のルールや枠組みを打ち破り、新たな表現の可能性を広げたのです。その影響は漫画界にとどまらず、お笑い界や芸能界、CM業界などにも広がり、同様のテイストを持った表現を広めることとなりました。

結局のところ、「伝染るんです」は、読者にとって予測不能な展開と、それによって生じる居心地の悪さを笑いに変えることで、新たなギャグの形を提示しました。この漫画が持つテーマ性は、今日においても多くのクリエイターに影響を与え続けていることでしょう。そして、その笑いは、まさに伝染るんです!


さて、あなたはどのキャラクターがお気に入りですか?不条理な世界の住人たちと一緒に、平成の思い出を振り返ってみてはいかがでしょうか。

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