Humming Bird(ハミング バード)
日本語ではハチドリと言います。蜂に似ている鳥。うーん、それはどうも違うような……と思って念のために調べてみると、飛ぶ音が蜂に似ているというのです。しかし、これもどうかと思うのですが、よく考えてみると似たような音を思い出しました。スズメバチです。これは攻撃性が強くて非常に恐れられているもので、ほかの蜂よりはかなり大きくて凶暴。ある年、実家に帰った時にスズメバチの巣があるというので、その駆除をしたのでしたが、その時に一匹が飛んできた、その羽音に驚いたのでした。考えてみると、その音に確かに似ています。普通の蜂ではとてもそんな音は出せませんね。
カリフォルニアに住み始めた頃、前任の日本人とレストランに入っていた時、窓の外を見ていた彼が
「あ、ハミング バード」
と言います。
「え?どこに」
と僕も窓外を見て探すのだけど、なかなかそれが見えません。
「ほら、あそこを飛んでる」
というのですが、僕の目には入りませんでした。鳥だと言うので、そういう動きを想定しているのか、実際はそこにいるのにそれが見えないのです。
ところが一度見えると(これが相当な驚きなのですが)意外に簡単に目につくようになります。これは初めて見ると気づきづらいでしょうね。凄いスピードで一直線に飛んできて、花のある植物の前で突然空中に静止しては、蜂のように花にまとわりついてその蜜を吸うのです。そして吸い終わったらまた一直線に飛び去ってしまいます。そんな鳥が存在することが不思議ですが、いかにも可愛らしい。早速ハミング バード専用の蜜水を入れる容器をベランダに下げました。ハミング バードは花のあるところ、どこにでも生息しているのですね、うちのベランダにも時々来ては蜜を吸ってくれるようになりました。
そうしたある日、そのハミング バード君が間違えて、うちの部屋の中に飛び込んできてしまいました。一旦部屋に入ると、とにかく逃げようと焦って天井に向かって飛びます。窓は天井より低いところにあるので窓が目に入らないのでしょうか、天井の近くをしばらく飛び回っていました。やがて疲れてきたのでしょうか、そばの本棚に留まってじっとしてしまいました。僕も(怖くはなかったけれど)びっくりしています。ゆっくりと近づいて手に取って、温めてあげました。
自分の手にとってみられるとは、なんと珍しい。しかもまるで交感できているかのようにハミング バード君、おとなしく手のひらに乗って。
しばらく写真を撮ったりして遊びましたが、やっぱり自然の鳥は自然に還してあげないとね。窓から外に向けて手を差し伸べると、ハミング バード君はビュッと一直線に飛び去っていきました。
もうずいぶん前のことです。ベランダで食事をしたりしていると、つい1メートルくらい頭上に蜜を飲みにくるハミング バードは(名前はチッチ)、ブーンという音と共にやってきて、ブンブンと音を立てて空中静止、そしてブーンと言う音を残して飛び去っていきます。もしかするとあの時のハミング バード君の血縁かな。