木刀山(bokutôzan)
木刀山に沈む夕日は内部爆発に忙しく、叫んでいる暇などないのだ。
狂王の血の色で満たされた真っ赤な小道を、大ガエルのQ氏がとぼとぼとぼ家路を急ぐ。あぁ、今日は何の小動物も、虫けらさえ捕まえることはできなかった。
疲れてふらふらしている足取りを、カエルが大好物、大鳥のQ氏は見逃さなかった(この二人は偶然同じ姓であった)。
「今回はまた、刺激的な始まりですな」
イズラエ伯爵が蛇のように長い首をそらし、顔をほころばせながら言う。隣で球形の伯爵夫人も同意のシグナルをチカリと出している。
サロンのあちこちからパラパラパラと称賛の拍手が起こる。
「そうでしょうか」
語り部のハッシ氏は照れながらも、
「まぁ、これからも精進してまいります」
一瞬の間を、司会魚が水槽の中から引き取って、
「では、次は恒例の歌と行きましょうか、さ、博士、お願いします」
雲のように真っ白でフワフワした鼻下ひげを動かしながら、齢10000系の黒衣博士がナメクジウォークで、サロンの中央に進み出る。
「えへん、では、こんな夜にふさわしくないかもしれませんが、明るい歌をいきましょう。私の敬愛する、ケペルニーニ博士による最新歌曲集の762ページを、お開き下さい。よろしいですかな?」
「さぁみんなで歌いましょう!」
“ポラン歌(か)”
♪♪ ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♪♪
衝撃ポラン 愛ポラン
眼力ポラン 真珠ポラン
青空ポランの 向こうから
やってくるのは 謎ポラン
♪♪ ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♪♪
大衆ポラン 磯ポラン
正直ポラン 夢ポラン
何度もポラン 雨ポラン
パーティーポランで会ったよと
嘘つきポランが言ったのさ
(セリフ)
「さぁ、君も、君と君の民族だけのオリジナルポランを考えて歌にしよう!」
♪♪ ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♪♪
夏休みポラン 饅頭ポラン
スーパーデラックス虹グレープフルーツボンバーポラン
そうしてそのまま結晶化
(みなさんご一緒に!)
そうしてそのまま結晶化~♪
♪♪ ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♪♪
おしまい。
サロン中に明るい歌声が高らかに響く。
ゴールド三人先生が拍手
三方に意見書を提出。
と、太い雷鳴のような音が鳴る。
ガラス張りのドーム天井から覗く銀河の前には巨大なニキビ面。
坊主頭に深緑の学生服姿の彼は、まさしく全能神だ。
反抗期真っ盛りの彼は、耳をつんざくばかりの大声で叫び出す。
「オメーら、カッコわりィ!カッコわりィゾォォォォォォォ!」
一同うつむいてしまう。
そうしてそのまま結晶化。
(皆さんご一緒に)
そうしてそのまま結晶化。
おしまい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?